一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

会計用語を使わずに内部留保を説明してみる

2010-02-19 | あきなひ

鳩山総理の内部留保課税発言が、特にTwitter界隈で、「総理大臣が会計の基礎も知らないのは・・・」というようなトーンで話題になっています。

ただ

Zoomchaka 何かで内部留保(隠し利益)って書いてあるの見たな。磯崎さんのブログも拝読したのだが、素の一般人からすると、会計用語の問題に矮小化された印象しか伝わらず、説明すればするほど話の頓珍漢さが希薄化するというジレンマ。どうしたもんだ  

ny47th 当たり前のロジックを分からない頭の悪い奴が多すぎるといって糾弾したいという衝動は甘美だが、それでも現状を変えたいのなら戦略的な忍耐が必要ということなんだろうな、と、今日のTLを見ながら自分を戒める。  

という発言から、批判をするのであれば、ことの問題点を分かりやすく説明できなきゃいかんよな、と考え、会計素人の自分なりにトライして見ることにしました。
(上の引用は真意を私なりに解釈した結果ですし、Twitterでの発言を引用するルールやマナーを良く知らないので、失礼があったらすみません。)  

今回の議論の背景にあるのは企業が「内部留保」を抱え込んで、従業員や株主に(ここは鳩山さんと志位さんのスタンスの違いはあるのかもしれません)配分しないのはけしからんから国が税金で召し上げて公平に配分してやろう、という発想なんだと思うのですが、ここで問題なのは  

「内部留保のすべてが余分なお金や隠し資産である」というのが、理解として正確ではない

ということなんだと思います。
上のツイートで引用されていた磯崎さんのブログでも

「内部留保」という種類のお金が企業の金庫に溜まっていると誤解している人は多そうです とあるので、多分ここは間違ってはいないと思います。 

とあるので、素人の見立てでもそんなに不正確ではないかと。

磯崎さんは、あわせて、内部留保のありかたとして企業が無駄に現金を溜め込んでいる場合もあるので、預金に課税すべきという主張をされています。
そこで貸借対照表の右と左の話が入ってきて素人には若干分かりにくくなってる感じがします。 

一方で世の中の多くの人は会計のことは詳しくない(し詳しい必要もない)と思いますので「内部留保」と聞くと、語呂から

「企業が『内部』に『留保』しているって怪しそうじゃね?」

と思う人も多いかもしれませんし、そういう人に「会計の基礎を知ってから首相の発言を評価すべき」と言うのも無理がある、というのが、上のZoomchakaさんの隔靴掻痒感につながってるんじゃないかと思います。

一方で 「企業の内部留保に課税」 首相発言に産業界猛反発で“火消し”(Sankei Biz)の

内部留保は、税や配当などを差し引いた利益を積み立ててきたもので、企業にとっては新規投資などに充てる“虎の子”だ。  

というようなくだり(下線筆者)を見ると、

「内部留保のすべてが余分なお金や隠し資産ではない」
「内部留保は企業に必要な資産になっていたり、そもそも現金や預金のように課税されたらすぐに払えるような形にもなっていないことが多い」

というところを誤解している人が多い(上の記事も、内部留保がすべて「虎の子」=へそくりのようにいざとなったらすぐに使える形であるような書き方がおかしい)ように思うので、これについて会計を知らない人にもわかるような説明の仕方を考えてみました。
(これ自体が「トンデモ」になってしまっているかもしれませんので、ご批判をお願いします。または、阿呆なこと言ってるとスルーするなり・・・)  


ここでは思いっきり、会社をひとりの人間(狩猟生活をしているイメージ)にたとえます。  

生まれたばかりの赤ん坊は、自分では食事を取れないので、お乳をもらったり、食事を与えられたりして育ちます。
自分で食料を確保できるまでは、親から与えられた食料を消化吸収して骨や筋肉にしながら成長していきます。 
会社でいえば、創業者たちによる設立時の資本金がお乳で、消化吸収が企業活動、企業規模が大きくなるのが成長にあたります。 

ただ、順調に成長しても、まだまだ駆け出しの会社は、企業規模の拡大に現金収入がついてこれないので、原材料の仕入れや設備投資などのお金が必要になるため、増資(株式を発行して資本金を増やす)などの、「親に食わせてもらう」ことが当分は必要になります(複雑になるので、借入金はない前提とします。また、従業員への配分や税金の話も省略します。)。  

さて、子供もだんだん大きくなり、一人で獲物を追いかけたりして食料を調達できるようになります。 
こうすると、親に食わせてもらう必要はなくなり、ようやく独り立ちができるわけです。 
企業で言えば、一定の規模になって、やっと資金繰りも安定してくる状態です。  

そのうち狩りもだんだん上手になると、今度は自分が日常生活を送るのに必要とする以上の食料を手に入れることも出てきます。 
そうすると、親孝行な青年は、今まで育ててもらったお礼として、余った食料を親に渡すかもしれません。これが企業で言えば配当です。
「いやいやまだ育ち盛りなんだから、親のことなんか気にしないで、自分で食べてもっと大きくなりなさい」と優しいことを言う親は、急成長しつつも配当をしないベンチャー企業を暖かく見守る株主にあたるでしょう。そのかわり、将来もっといっぱい稼いで親孝行をしておくれ、ということですね。  

一方で子供の方も、まだまだ身長が伸びるのであればよりたくさん食べなければいけませんし、いっぱい獲物を取るために身体を鍛えて筋肉を増やす必要もあるかもしれません(投資)。
また、親からの援助がない以上、悪天候(不景気)や怪我(事故)で狩りができないときに備えるために食料を蓄えたり(現金や銀行預金を持つ)もする必要があります。  

「内部留保」というのは、この日常生活を送るのに必要とする以上に獲得できた食料(利益)のうち親に渡した分(配当)の残りのことをいいます。

ただ、これは常に備蓄食料という形であるわけではなく、成長するために自分で食べてしまって血や骨や肉になっている部分もあるります。
先ほどのベンチャーのように育ち盛りであれば、余分に取れた分の食料も(内部留保)は全部食べて血や骨や肉(工場や機械設備や原材料仕入れ)に変わっているわけです。
つまり、過去の内部留保の総量=親の食料援助がなくなって以降身体の大きくなった分+手持ちの備蓄食料、ということになります。

なので、株主(親)が去年の内部留保(余った食料)をよこせ、といっても、すぐに渡せる状態(現預金=備蓄食料食料)にはないことも多いでしょうし、過去に遡って全部よこせ、と言われたら、これは到底無理ですね。
(「誰のおかげでここまで育ったと思ってるんだ」という過去の清算を一気に迫るような親の言動がNGなのと同根ですね。)  


鳩山発言に戻ると、内部留保に対する課税というのもこの「内部留保を吐き出せ」というのと同じなので、税金で取ることが企業の成長(=将来の税収増)を考えたときに本当に適切なのか、とかそもそもすぐに税金を払えるような現金になっていないじゃないか(借金してまで税金を払わせるのか)、というところで批判が多いわけです。  
(血や肉になっている部分の一部の血だけ抜き取れ、と言われても無理だろ、というのは『ヴェニスの商人』のポーシャでなくても言いたくなると思います。)


もっとも人間でも、過剰に心配性だったり単なるケチでで不必要に食料を溜め込む人もいるでしょうし、成長につながらない暴飲暴食をして筋肉の代わりに脂肪がたまってメタボになってしまう人もいます。
前者はいわゆる無借金会社会社ですが、これも度を越すと資金効率が悪くなってしまい、決して褒められるものではありません。
後者はもっと悪くて、過剰に豪華な社長の社宅とか保養所名目の別荘とかフェラーリとか自家用ジェット機などの(多くの場合は)企業収益に貢献しない資産に化けているケースです。 

こういう会社は確かに健全ではないですが、それでもそれは課税で解決することではなく、株主(育ての親)が言うことのように思います。   



かなり長くなってしまいましたが、ここまで読んだけど例えが悪くてかえって分かりにくかったらごめんなさい。



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2 コメント

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Unknown (ミリオン)
2010-02-19 01:27:53
素人代表として、それなりに理解できました。ありがとうございます。やっぱり、素人としては、内部留保は幹部の蓄財イメージだったりします。なんで、株主や従業員に還元しないのかと疑念を抱いていましたから(特に自分へ)。固定内部留保とか浮動内部留保といった分かり易い名称が有るといいですね。あと、リツイートは発言部分の右下に現れる
「」リツイート
をクリックして「ハイ」を押した方が伝わると思いますがいかがでしょう。加筆が出来ませんけど。
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リツイート (go2c)
2010-02-19 07:46:38
ミリオンさん、ありがとうございます。

お役に立てたら光栄です。

いざtwitterを始めてみると、勤め先のPCからアクセスできないこともあるのですが、いかに自分より長時間PCと向き合っている人が多いかに感心します。
返信する

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