一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「独断専行」と「迅速な業務執行」の狭間

2011-10-18 | あきなひ

話題になっているオリンパスの社長解任騒動。

おさらいをすると、 17日の日経新聞では取締役会側の解任理由は以下のとおり

ウッドフォード氏がデジタルカメラなど各事業のトップを通り越して現場に直接指示を出し、独断専行的な経営判断で組織間の連携を損なった。

一方 18日の読売新聞によると、ウッドフォード氏の言い分はつぎのとおり

英紙フィナンシャル・タイムズによると、ウッドフォード氏は、一部雑誌で社長就任前の過去の買収を巡っての疑惑が報じられたことから調査を行った。  

その結果、2008年に英医療機器メーカー「ジャイラス」を9億3500万ポンド(当時約2150億円)で買収した際に不透明な支出があったことが分かったという。具体的には、買収のフィナンシャル・アドバイザー(FA)を務めた、カリブ海の英領ケイマン諸島の企業に総額6億8700万ドル(同約730億円)を支払ったとしている。  

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ウッドフォード氏はFAへの巨額報酬について、過去3週間にわたって菊川剛会長(当時、現会長兼社長)らに書面でただした。解職2日前には、「深刻なガバナンス(企業統治)の懸念」を理由に菊川氏に辞任を促したという。ウッドフォード氏は、こうした行為が自らの解職につながった可能性があると主張している。

これに対して、内部情報を外部のメディアに流したと見られることに、会社側が「法的措置を含めて対応する」という報道もなされています。

会社としては会計処理が適切だと言っているので、(内部告発の正当性の議論を置いたとしても)「守秘義務違反」でなく「風説の流布」なんじゃないの?とか、正しい会計処理の根拠となる情報を漏えいしたとしても解任以上の更なる「法的措置」って何なんだろう?などという素朴な疑問がわいてくるのですが、そのへんは専門家の方が整理されるのを待ちたいと思います。  


それはさておき今回興味があるのは、ウッドフォード氏が外部からのお雇い外国人社長でなく「生え抜き」であること。

2011年2月23日の日経ビジネス「時事深層」 “生え抜き外国人”社長の勝算によると、

(ウッドフォード氏は)経営のプロとして出資先や提携先から招かれたのでなく、オリンパス一筋の生え抜きだ。20歳で英子会社の医療機器の営業マンとして入社して以降、勤続年数は30年に及ぶ。  
30歳でこの英子会社の社長に就き、その後も医療部門を中心に現地の要職を歴任。地域別営業利益で221億円(2010年3月期)と、米州の3倍以上を稼ぐ欧州事業の拡大に貢献した。「欧米でオリンパスのあらゆる事業に関わってきた」(ウッドフォード氏)。活躍の場が地球の反対側で日本人社員の目には留まらなかったが、日本的な出世レースを制して白羽の矢が立ったとも言える。

ということです。 

雇われ社長が保身のために騒いでいるというのとは性格が違うようです。  

さらに同じ記事での就任時の菊川社長(当時、現会長兼社長=解任した張本人)のコメントがこれ。

菊川社長によると、「リーダーシップと決断力、迅速な業務執行」が持ち味だ。  

これが半年たつと「独断専行」になってしまうのですから、人物評価は難しいということでしょうか。

さらに(日経ビジネスの記者の見立てですが)  

外国人の抜擢という点に注目が集まっているが、もう1つ見逃せないのは、医療畑から社長を出したこと。同社は歴代、映像部門が社長を輩出してきた。ウッドフォード氏の社長就任で、「オリンパスは医療機器の会社」というイメージが社内外で一段と強まる。  

映像畑の菊川社長は会長兼CEO(最高経営責任者)にとどまるが、米国のゼネラル・エレクトリックや独シーメンスといった医療機器の巨人と伍していくにはウッドフォード氏の手腕に頼らざるを得ないと言える。  

また、しがらみの多い日本人とは違い、外国人なら気兼ねなく同社の本流である映像部門に大ナタを振るえる。まして落下傘型の“助っ人”でなく、社内実績が十分なウッドフォード氏であれば、周囲の納得も得られやすいだろう。同氏に求められるのは、そんな“生え抜き外国人”であることを生かした改革だ。  

と菊川会長自身も大ナタを振るうことを期待してたんじゃなかったの? という疑問を持つ人もいると思います。  


今回で日本企業のの経営者が「結局外国人は生え抜きだとしても先輩に対する配慮に欠けるからあぶない」という意識を持ちそうですね。

「英語を公用語にしたけど役員会は日本語」とかいう会社が続出しなければいいのですが。


逆にこれを機に、どこかのマスコミが上場企業の(創業者以外の)社長に対して「自分を指名してくれた前任の社長時代の会計不正の疑問がでたらどうする?」というアンケートをとってもらいたいものです。  

日本企業における模範解答は「第三者委員会で不正の有無を追及する」(でも解任レベルの責任追及は経理担当役員(社長交代時に既に引退していればなおよし)にとどめる)というあたりでしょうか。


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