一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

不当債務

2011-11-14 | よしなしごと

といっても貸金業法の問題ではありません。
言わば「街金」でなく「国金」の話。

NHKBSの世界のドキュメンタリーで ギリシャ 財政破綻への処方箋 ~監査に立ち上がる市民たち~という番組をやってました(本日再放送があったようですね)

NHKのサイトによると、この番組の生い立ちはつぎのとおり。

この作品は市民から寄付を募り、約85万円という低予算で制作され、最初はウェブ上で発表されましたが、金融関連報道で「豚」呼ばわりされたギリシャ、スペイン、ポルトガルなどの民衆の共感を集め、難しい経済の話ながら各地で上映されました。

ここで取り上げられていたのが「不当債務」という概念 。

元は1927年にアレクサンダー・サックという学者によって提唱された概念で、

① 政府が国民の認識と承認なしに融資を受けた場合
② その融資が国民の利益にならない活動に使われた場合
③ 貸し手がこの状況を知っていたにもかかわらず見て見ぬふりをした場合

の3条件を満たす場合国家は「不当債務」として返済を拒否できるとするものです。  

サックの提唱前の19世紀末、アメリカはスペインとの戦争によってキューバを保護国にした際に、同様の理屈によって400年間にわたるスペインの植民地支配時代のキューバに対する累積した膨大な金額の債務の返済を拒否しています(Wikipediaの "Odious debt"の項目によると、この史実が不当債務の概念の下敷きになっているようです)  


番組では、2002年12月のイラク侵攻計画の中でアメリカ国務省はこの概念を使ってイラクの債務(フランスやロシアからの数十億ドルの武器購入にあてたものなど)を免除しようという計画を立てたものの、この概念を途上国が主張しだすとパンドラの箱を開けることになってしまう(たとえばキブツ政権下のコンゴ、マルコス政権下のフィリピン、アパルトヘイト時の南ア・・・)ので、債権国はイラクに対する債務を自主的に80%削減するという大人の解決をしたと指摘しています。  

そして、この概念を使って最近債務の削減に成功した例としてエクアドルを取り上げます。  
エクアドルは石油資源があるにもかかわらず、インフラ投資などにかかる先進国からの融資がふくれあがり、2005年度では国家予算の半分の30~40億ドルを返済にまわす状態でした。  
しかし、これらの債務は、過去の政権が先進国の企業と癒着して行なったものであり、投資は先進国の企業に発注されて回収され、後には無用の長物と借金だけが残っている。そしてエクアドルの石油輸出代金は債務返済という形で先進国に吸い上げられ、国民には何も残らない。(この途上国を借金漬けにする手法は「エコノミック・ヒットマン」と言われています。 エコノミック・ヒットマンの仕事については下の動画をご参照ください(ちょっと長いですけど))

本来エクアドルの石油はエクアドルの国民のために使われるべきだと新たに選出されたコレア大統領は主張します。  

そしてコレア大統領は就任早々に世界銀行・IMFの指導を拒否し、過去の債務を調査する委員会を立ち上げます。  

そして大統領は調査の結果を国民に公開し、過去の政権の負った債務の70%の支払いを停止すると宣言します。  


エクアドルが巧妙なのはその後で、この宣言の結果投資家があわてて売りに出して暴落したエクアドルの債券を、エクアドル政府は陰でこっそり買い集め、その結果30億ドル分の債務を8億ドルで清算できたといいます(相場操縦風ですけど)。  


番組は、ギリシャの債務においても不当債務が多いと主張します。 

2001年には有利な為替レートを適用することで債務隠しをする(為替スワップか何かでしょうか)ことにゴールドマン・サックスが加担し、その後も元ゴールドマン社員がギリシャの債務削減の担当者に就任していたこと、独仏は金融支援の見返りとして戦闘機や潜水艦の購入を申し入れてきたことなどをあげます。  

そして、ギリシャもエクアドル同様、国の債務を監査し、不当債務があれば弁済拒否をすべきだ、とまとめます。  


今回「不当債務」という概念は初めて知りました。
独裁政権と結託して借金漬けにする経済支配の手法に対しては有効な主張のように思います。  

ただ、番組の主張についてはギリシャって民主主義国家だったんじゃないの?という疑問はありますし、イタリアやスペインあたりがこれを言い出したら収拾つかなくなりそうです。  

これはギリシャの人の主張ということで。
また、一部特権階級だけが恩恵をこうむって、借金は国民全体が負担していることに 不満が渦巻いているのは事実のようです。



エコノミック・ヒットマンが語るアメリカ帝国の秘史 前編

エコノミック・ヒットマンが語るアメリカ帝国の秘史 後編 

上の動画でインタビューに応じている「元エコノミ・ヒットマン」が書いた本
(動画で取り上げられている本の前著。日本語訳がでているのはこれだけみたいです。)
読んでみようと思います。

 


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1 コメント

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散歩者goo (Unknown)
2011-11-16 15:23:15
不当債務始めて知りました。面白い考え方ですね。
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