破産手続開始申立ての決議に関するお知らせ
(平成21年3月30日 株式会社アゼル)
3/30(月)朝7:50の開示。
最近は月の半ばに早々に月末の資金繰りをあきらめるというパターンが多いのですが、これは3月末は超えられるであろうという算段がくずれてしまったということのようです。
平成19年後半より顕在化したサブプライムローン問題に端を発する・・・また、転売を目的とした収益物件の売却が予定どおり進捗せず、他のマンションディベロッパーからの請負工事代金の回収が滞るなど資金繰りの面でも急速な悪化を招く事態となりました。このような経営環境下において当社は、平成20 年6 月にプロスペクト・グループより代表取締役以下3名の役員を招聘し、ファンド主導による人材・資金・営業面での支援を得た経営再建へ転換を図りましたが、平成20 年9 月のリーマンショック以降の世界的な信用収縮により金融機関からの資金調達はますます厳しさを増し、ファンドからの資金支援も限界に達しておりました。
さらに建設事業の発注元の相次ぐ倒産により請負代金の多額の回収が不能となりました。資金繰り改善を図るため、固定資産の売却を順次計画的に進めてまいりましたが、当月決済を予定していた最大の売却案件において譲渡先からの入金がなされないことが判明し、資金繰りの目途が立たなくなりました。現時点においても運転資金の確保ができておらず、支払不能に陥ったため、今後の当社事業の継続を断念し、破産手続きにより清算することを決断いたしました。
下線(私が引きました)はマンションデベロッパーが苦境に陥っているすべての要素が凝縮されています。
最後の1週間の経過はこんな感じ。
第三者割当による新株式の発行の中止に関するお知らせ (平成21年3月26日)
当社は、平成21年3月13日に開示いたしました「第三者割当により発行される株式の募集に関するお知らせ」に記載のとおり・・・Prospect Asset Management, Inc. が運用するファンドであるシェアホルダーズ コンセンサス ファンド エル・ピーを割当先とする第三者割当による新株式発行を決議し・・・準備をすすめてまいりました。しかしながら、3月24日夕刻、Prospect Asset Management, Inc.より払込期日である3月30日に払込が不可能となった旨の通知を受け取りました。当該通知を受け当社は3月25日から本日にかけ払込中止の理由につき同社に確認をいたしましたところ、理由については特段の説明はなく、3月30日の払込は不可能であることから、本日新株式発行は中止とすることとなりました。したがいまして、払込中止につきましては先方の事情によるものであります。
経営再建を委ねたはずのプロスペクトに何の通告もなく見放されたことになります。
そしてこれがとどめの一撃。
破産申立ての適時開示の後に同時刻で開示されています。
固定資産の譲渡に基づく譲渡代金債権の取立遅延に関するお知らせ
当社は、平成21年2月20日に固定資産の譲渡にかかる不動産売買契約の締結を行い、物件引渡しに向け、準備をすすめてまいりましたが、物件引渡し予定日であります平成21年3月27日に、譲渡先が、資金調達先である株式会社東京スター銀行から残代金の資金調達を行うことができなかったとして当該固定資産の譲渡に基づく譲渡代金の支払いを履行しないことから、当該取引先に対する譲渡代金債権について取立遅延が生じましたので、下記のとおりお知らせいたします。 譲渡先は上記資金調達ができなかった事実があるにもかかわらず、解約手付金を放棄して上記不動産売買契約の解除を行う旨の主張をしておりますが、当社は、既に履行の着手をしているものであって、かかる解約手付金の放棄による契約解除は有効に行うことはできない旨を通告しております。
3.当該取立遅延の事実が当社の損益に与える影響
当社の資金繰りに支障を来しております。
4.今後の見通し
本日開示の「破産手続開始申立ての決議に関するお知らせ」をご覧下さい。
「こんなことになったのはあんたのせいだからね!」という恨み節が伝わってきそうです。
中島みゆき「うらみ・ます」
(職場でスピーカーでの再生は避けたほうがいいと思います。)
ところで、アゼルの経営陣は、平成20年の株主総会時に代表取締役社長と専務取締役は株式会社プロスペクトの取締役が、副社長はプロスペクト・レジデンシャル・アドバイザーズ株式会社の取締役がそれぞれ就任しています。
アゼルはおそらく3月13日の時点で第三者割当増資の引き受けに関してシェアホルダーズ某(または運用会社のProspect Asset Management, Inc.と?)契約を締結したと思うのですが、そこに違約金条項のようなものはなかったのでしょうか。
これがコケた場合会社の存亡にかかわるということはわかっていたわけで、それくらいの慎重さは必要ではないかと思います。
しかもアゼルの経営トップは(増資の割当先とは法人格は違うものの)実質的にはプロスペクトグループの一員として利益相反的な立場にいるわけで、もし契約に手心を加えて出身母体であるプロスペクトに対して逃げ道を与えたとしたらアゼルの取締役としての前漢注意義務違反にならないのでしょうか。またはそもそも「キャンセル可」という内容の契約であれば、開示の際にその旨も言及しておく必要があると思うので、だまって市場の期待をあおったとすると株価操縦という話にもなりかねません。
アゼルの取締役が第三者割当増資でプロスペクトを「泣かせない」ようにするための仕掛けに加担しているとしたら問題ですね。
(プロスペクト側も既にアゼル株の28%を所有しているのでアゼルが倒産すると無傷では済まないですが、第三者割当増資による二次災害は防げたわけですから。)