2日目、尖閣湾を見た後、北沢浮遊選鉱場に行く。
佐渡の金銀産出量は国内最大で、東洋一と詠われた選鉱場跡地。
ラピュタの世界みたい・・、工場の上に広がる星空もきれい・・・、と今人気が高まっている観光スポットで、
是非見たいと思っていた場所の一つだった。
10月終わりの1日、この日は観光客も少なく、私たち家族だけがポツンと芝生の上に立ち、
今は廃墟となっているこの昭和の遺産を見つめながら、
両親は大勢の人たちがこの工場で働いて、活気に溢れていた当時のこの地を思い描いているのか、
生き抜いた昭和という時代を振り返っているかのようだった。
近くの売店でトイレで立てなくなった母を介助して頂いたり、疲れて歩けなくなって途中で休憩しているとお茶を持って来て下さったり、
今回の旅はいろんな人に助けられた。
それだけ両親が年を経たと実感すると同時に、佐渡の人たちの温かさに助けられて旅が続けられたと思う。
そこから、大佐渡スカイラインのドライブ。
今はもう雪が降ったかもしれないこのスカイラインも、この時は紅葉真っただ中だった。
この大佐渡スカイラインを越えて、もう一つの目的地、朱鷺の森公園に向かう。
大切に大切に保護され、育てられた朱鷺。
自然の中に放鳥された朱鷺が見たかったけれど、それはきっと奇跡に近い。
この朱鷺の森公園でも人の優しさを感じる出来事に出会う。
オーストラリアから来たというご夫婦が車いすの息子に近付いてきて、
「オーストラリアからきました。この子の車いすに付けてあげてください」
と言って、足の形のキーホルダーを差し出した。
今回の旅はこんなふうに、いろんな人に声を掛けられ、その度に人の優しさに触れた。
高齢の年寄りや障碍者を連れて歩く事は大変な事ばかりではない。
こうやって、健康な人には見えない「人の世界」を感じる事ができ、それが自分自身の力になっている事も知っている。