厚生労働省は 先月、 精神疾患を、
がん, 脳卒中, 心臓病, 糖尿病と並ぶ 「5大疾病」 に位置づけ、
重点対策を行なうことを決めました。
2008年の調査では、 精神疾患の患者は 323万人にのぼり、
237万人の糖尿病, 152万人のがんなど、
他の4大疾病を 大幅に上回っています。
日本の精神病床数は 35万床弱 (09年) で、 全病床の約2割を占めています。
平均在院日数は300日を超え、 世界でも突出しています。
一方で、 精神病床の医師数は 一般診療科の3分の1でよいと 規定されており、
手薄な入院治療が 長い間行なわれてきました。
在宅で 充分な支援を受けられないために、
長期入院を強いられる 「社会的入院」 が、 約6万2000人にのぼっています。
こうした不必要な入院を減らし、 患者の社会復帰を促すなど、
施設収容型の精神医療を 変えると期待されるのが、
訪問診療や訪問看護など 在宅医療です。
また、 初期に患者を見つけて、 悪化を防ぐ 早期支援体制も予想されます。
統合失調症は 発症してすぐに 治療を始めると、
脳のダメージが少なく、 悪化や再発が しにくくなるといいます。
ところが 国内の患者は、
発症から医療機関にかかるまで 平均17ヶ月となっています。
在宅医療が充実すると、 患者の生活環境を 改善しやすくなり、
早期に対応すれば、 薬物療法だけでなく 認知行動療法も活用できるでしょう。
ただし 課題もあります。
統合失調症は誤診も多く、
統合失調症の薬で 逆に精神状態が著しく悪化する ケースも少なくありません。
今のままで 早期発見を推進すると、 被害者が増えかねません。
うつ病では、 製薬会社の抗うつ薬のキャンペーンに 影響され、
診断が 過剰になったことがあります。
うつ病でない人に 抗うつ薬が処方されると、
回復がかえって遅くなったり、 自殺衝動が表れる人もいるのです。
5大疾病の 治療の一翼を担う 精神科医の責任は、 ますます重くなります。
〔 読売新聞より 〕
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