(前の記事からの続き)
当事者も立場によって 受け止め方が異なります。
欧州から 小学生の子供を連れて 日本に帰国した母親は、
「夫のDVに苦しんだ末、 帰国の道を選んだ」 と 言います。
欧州で 離婚訴訟と 夫の暴力に対する刑事訴訟を 起こしましたが、
思うように進まず、 「命の危険を感じた」 からだそうです。
この母親は、 ハーグ条約に加盟すると、
夫から 子供の返還を申し立てられるのではないかと 怯えています。
条約では、 配偶者間のDVは 子供の返還を拒否する 条件になっていないからです。
政府は 「条約加盟以前のケースに 遡って適用することはない」 と
説明しますが、 不安は消えません。
一方、 欧州に 息子を連れて行かれた 母親は、
子供を取り戻す裁判のため、 日本と欧州で 弁護士を雇いました。
子供に会えず 時間だけが過ぎ、 弁護士費用も重くのしかかります。
ハーグ条約に加盟すれば、 返還申し立てによって 短期間で子供を連れ戻せ、
負担も軽減されるといいます。
日本が条約未加盟のため、 海外の離婚裁判で、
日本人が 不利な立場になることもあります。
アメリカで離婚し、 娘二人と分かれて 日本で暮らす母親は、
離婚訴訟で 娘と会うことを希望しましたが、
日本は条約に加盟していないから 認められないと、 裁判官に言われました。
条約加盟により、 こうした 「偏見」 が 払拭されることも期待されます。
〔 読売新聞より 〕