「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

内部事情 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (35)

2010年10月05日 21時32分43秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)
 
○佐伯家・ 淳一の部屋の前

  美和子がやって来て、 中に声をかけよう

  とする、 が、 やめる。

  そっと腰を降ろして、 両膝を抱える美和

  子。

淳一の声 「姉キ ……?」

美和子 「…… よく分かったね」

淳一の声 「…… 話、 いい?」

美和子 「うん」

淳一の声 「ICUの川添先生に、 変なこと

 聞いたんだけど……」

美和子 「何?」

淳一の声 「今度の移植の成功で 緒方先生も喜

 んでるだろうって」

 〔 以下、 部屋の外と中、 カットバックで 〕

淳一 「東央大みたいに私立病院だと、 医者

 の稼ぎ高が そのまま地位に響くから、 教授

 の座を狙ってる 緒方先生としては、 手術の

 成功は ……」

美和子 「ちょっと待って !  あんた、 そんな

 こと 信用してるの?」

淳一 「いや ……」

美和子 「ジュン、 移植の費用はね、 医療費と

 して 請求できないの。 緒方先生は私財を

 それに当ててらっしゃるのよ。 先生は 患者さん

 を救いたいっていう 純粋な熱意で……

 !」

淳一 「分かってるよ!  オレだって川添先生

 に 言い返してやったさ!」

美和子 「…… (気持ちを落ち着けて) 川添先

 生もひどい人ね。 ジュンにそんなこと 吹き

 込むなんて ……」
 
(次の記事に続く)
  
コメント
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