「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

死は成就 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (33)

2010年10月03日 21時06分28秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)
 
○佐伯家・ キッチン

  炊事をしている美和子

淳一の声 「姉キ、 できたよ。 来て」

  美和子、 手を止めて 庭のほうへ行く。

  
○同・ 庭 (夕暮れ)

  家の中から 美和子が出てくる。

淳一 「(美和子に振り向き) ポチの墓地 ……

 なんちゃって …… (淋しい笑い)」

  板で作った ポチの墓。

  美和子、 淳一の隣に 一緒にしゃがむ。

  墓碑銘 「死は 訪れるものではなく、 成就

  するもの」

  墓に手を合わせる二人。

美和子 「ポチの命が、 多佳子ちゃんに 移って

 いったのかもしれないね ……」

淳一 「ポチ、 よく最後まで生きたな ……」

美和子 「 『死は 訪れるものではなく、 成就す

 るもの』 ……」

淳一 「オレも もうじき行くからな ……。 姉キ、

 その時は、 よく生きたって 誉めてくれよ

 な」

美和子 「…… あたしは、 多佳子ちゃんを誉め

 てあげたい。 よく頑張ったわ」

淳一 「……」

美和子 「見たでしょう?  多佳子ちゃんの涙。

 ジュンにもきっと またチャンスが来るよ」

淳一 「……」

美和子 「ジュン …… (淳一の肩に手を回す)

 」

  墓碑銘。

淳一 「…… じゃ、 いきますか」

美和子 「ん ?」

淳一 「ポチの一生が 完成したことを祝って.

 お手を拝借!  イヨーーーオッ !」

  三三七拍子をする淳一。

  複雑な思いで 淳一を見る美和子。
 
(次の記事に続く)