「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

多佳子の回復 …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (32)

2010年10月02日 20時42分32秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」

(前の記事からの続き)
 
○街景(昼)

  電車が走る。
  

○東央大病院・ 外景
  

○同・ 多佳子の病室

  手術後の多佳子の様子を 美和子が診てい

  る。

  淳一と世良が入ってくる。

淳一 「多佳子ちゃん、 元気になった?」

多佳子 「ええ …… (笑む)」

  淳一、 後ろ手に隠していた 小さな花束を

  差し出し、 多佳子に渡す。

淳一 「お見舞いでございます」

多佳子 「やだ、 嬉しーい!」

世良 「経過はどう?」

美和子 「順調。 多佳子ちゃん、 もうすぐ

 お小水も出るわ。 自分で おしっこができるの

 よ」

多佳子 「いや、 先生 (含羞)」

淳一 「オレ、 手伝おうか?」

多佳子 「もーオ! (淳一を叩く)」

淳一 「おっと (多佳子の手を取る) ……

 あれ?  多佳子ちゃん、 この手 …… ?」

多佳子 「なぁに …… ?」

淳一 「あの、 手術の前には 何だかカサカサし

 てたのが ……」

多佳子 「(微笑) あたし、 汗、 かいたの …

 …」

世良 「汗 ?」

美和子 「腎不全の人は、 発汗作用がないの

 よ」

多佳子 「いつも 体中がかゆくて しょうがなか

 ったの。 それが こんなにしっとりとして…

 …」

淳一 「(多佳子の腕をなでる) ほんとだ…

 …」

  微笑む多佳子。

淳一 「なんて!  またドサクサにまぎれて

 (笑)」

多佳子 「エッチ …… (笑む)」

淳一 「よかったね、 多佳子ちゃん……」

多佳子 「うん …… (涙)」

淳一 「よかった ……」

美和子・世良 「…… (二人を見守る)」
 

○夕日
 
(次の記事に続く)
  
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