( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/49849364.html からの続き)
心子も 「解離」 を 起こしたことがあります。
拙著 「境界に生きた心子」 から、その一節を 引用させていただきます。
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心子はまたしても、包丁を狙ったときの 危うい人相になった。
起き上がろうとした心子を 押さえると、彼女はにわかに 無表情になった。
「しんこ?」
声をかけても 心子は一向に返事をしない。
まるで 魂が抜けたようになった。
「どうしたの!? 聞こえるか!?」
いくら呼んでも 肩を揺すっても、一切 無反応だった。
死人のような形相で 下を向いている。
見る影もなく 血の気が失われ、半開きの目で 無意識状態に陥ったままだ。
人間のこんな顔は 初めて見た。
僕は訳が分からず、不気味な感触に包み込まれた。
「しんこ!! しんこ!!」
「解離」 を起こしたのだろうか と思った。
意識が自分から離れてしまう という現象だ。
机上の知識としては 知っていたが、実際にこの目で 見たことはなかった。
僕は不可解な思いに 捕われたまま、何度も何度も声をかけ、
心子の肩を揺すり、頬を叩いた。
そうしているうちに、果たして 何分くらいたっただろうか、
ようよう心子は 生気が戻った目になり、顔を上げて 僕のほうを見た。
しかし相変わらず 呼んでも応答はない。
僕は叩いたり 揺すったりし続けた。
間もなくして、心子はどうにか 息を吹き返した。
何も覚えていなかった。
一体 どうしてしまったというのだろうか……?
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/49882042.html