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「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

本人の可能性を信じ、 それを伝える (2)

2010年03月13日 20時53分27秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 重要なのは、 本人の力を信じて、 希望を捨てないことです。

 本人が簡単にできることより、

 少し努力を要することに トライするよう励ますことが ポイントです。

 本人は一生懸命やっているということを 理解するのが大切です。

 「無理しなくていいよ」 という一言が、

 分かってもらえているという 安心感になります。


「きみが思っているよりも、 進歩している」

 といった 肯定的な言葉賭が基本です。

 不充分な点は これからクリアしていけばいいのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 ボーダーの人が しばしばそうであるように、 心子も 大変な頑張り屋でした。

 幼いころ、 父親に認めてもらいたい気持ちから きたものかもしれません。

 大変な計画を 最後までやり遂げてしまうこともあれば、

 現実離れした目標を打ち立てて 潰れてしまうこともありました。

 心身打ちひしがれて 息も絶え絶えのようなときでも、 心子は仕事に行こうとしたり、

 友人のカウンセラーに なろうとしてしまいます。

 心子は  「休む」 ことができなかったのです。

 僕はむしろ、 心子に休むように促しました。

 「休むことも 『仕事』 なんだよ」

 心子は 僕が諭したその言葉を 何度もつぶやきながら、

 ようやく休むことを 覚えていったのです。
 
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本人の可能性を信じ、 それを伝える (1)

2010年03月12日 21時09分07秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は、 失敗して傷つくことを 恐れています。

 チャレンジから逃げたり、 他の問題を起こして煙に巻こうとしたりします。

 でも本当は 頑張り屋の人が多く、 認めてもらいたい気持ちも 人一倍強いのです。

 その気持ちを うまく励ませば、 やってみようという モチベーションに繋がります。

 「きみならできると 信じている」

 「きみは 困難を克服する 力を持っている」

 というメッセージを 伝え続けることです。

 働きかける人自身が、 それを信じていなければなりません。

 「どうして そんなことが言えるのか」 と 問い返してくるかもしれません。

 そのときは、  「私には分かるし、 そう信じている」 と 答えるだけでよく、

 理由をいちいち 説明する必要はないと、

 リネハン (弁証法的行動療法の創始者) は述べています。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子と 付き合い始める時、 心子は 会社で苛めを受けており、

 心因性腰痛で入院しました。

 心子はそれを 労災として認めさせたいと、

 労働組合に入って、 会社と団交し、 徹夜で資料作りもしました。

 ただし当時、 精神的苦痛を労災認定するのは 非常に困難で、

 心子は心身ボロボロになって 打ちのめされたりしました。

 悲壮な気構えを 見せるかと思うと、

 もう 何をやっても無駄だと、 全てを投げ出そうとしました。

 今までこれだけ 頑張ってきたのに、

 いじめた連中と会社を 見逃していいのかと、 僕は切々と説きました。

 心子がまだ ボーダーだと分かる前で、

 上記記事のようなことを 考えたわけではありません。

 ただ、 ここまで手を尽くしてきたことを 無駄にしたくない、

 心子が傷ついたまま 終わってほしくないという思いで、

 もちろん 心子にはできると信じていました。

 そして、 ようやく心子は思い直して、 再びやる気になったのです。

(次の記事に続く)
 
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優れている部分に 焦点を当てる

2010年03月11日 21時38分32秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は どんなに優れた点を 持っていても、

 自分が劣っていると 思い込んでいます。

 本人の嘆きを 受け止めたうえで、

 「でも、 あなたの~~なところを、 ○○さんがすごく褒めていたよ」

 などのメッセージを伝えます。

 それを 何度も繰り返すことで、 傷口は少しずつ 塞がっていきます。

 「君の欠点だったところが、 魅力に変わり始めている 気がするな」

 といった言い方も、 賞賛以上に 変化や成長を意識させ、

 自信回復のきっかけになります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は 様々な優れた能力を 持っていました。

 普段はそれを 自慢するというのではなく、 話題にすることは よくありました。

 カウンセラーとしての能力、 記憶力、 様々な方面の知識、

 コミュニケーション能力、 頑張る力、 子供の扱い、 等々……。

 一方、 僕を責めるとき、

 自分の正義、 誠実さ、 純粋さなどを 武器にすることもありました。

 心子はそれらに 自信を持っていましたが、 一旦落ち込むと 全て無になってしまい、

 どんな言葉も 力づけにならなくなってしまうのですね。
 
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逆転の発想を 刷り込む

2010年03月10日 20時42分27秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 悪いときには、 失敗した過去のことばかりに 捕らわれてしまいます。

 でも 過去のことは変えられないけれど、 未来は変えて行けることを 伝え、

 これからの人生を いいものにしていこうと 呼びかけます。

 「今まで苦しんだ分、 これから取り戻そうよ」

 同じ 一人の悩める人間として 語りかけます。

 さらに、 最悪の状況にも いい点がある、 と逆転の発想を 刷り込んでいきます。

 「これ以上 悪くなることはない」

 「苦しい分だけ 強くなれる」

 口先で言うのではなく、 心の底から伝えます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 上記のような言葉を 心子に言ったら、 どうだったろうかと考えます。

 ちょっと心子には 伝わらなかったのではないか、 と思われてしまいます。

 失意に捕らわれている時は、 どんな言葉も 励ましにはならず、

 逆に 苦しみを分かってもらえないと 反発を食ったのではないかと思います。

 「マーには分からないわ、 希望を持てない 人間の気持ちは」

 と言われたこともあります。

 逆境から学ぶというのは 普通の人でさえ難しいことですが、

 ボーダーの人は 完全に苦しみに圧倒されてしまって、

 苦しいときに 視点を変えてみるのが 極めて困難な 症状だろうと思います。

 悪い状態のときに 変えようとするより、落ち着いたときに

 認知の癖を 変えるようにしたほうが いいのではないかと考えるのですが、

 いかがなものでしょうか? 
 
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どんな事態にも動じず、 安心させる

2010年03月09日 21時23分19秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人が 希望を見失い、 弱っている状態では、

 まず 安心を取り戻させ、 落ち着かせることです。

 苦しいときは 助けを求めたらいい、

 決して一人ではない、 いつも見守っていることを 伝えます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子が 身も世もなく落ち込んだとき、 僕は心子を抱きしめ、

 「大丈夫だよ、 安心して……」

 と何度も 慰め続けました。

 自己否定に陥って、 泣いて電話をしてきたときには、

 「話したいことは 何でも言って。 俺は そのためにいるんだから」

 と労ったこともあります。

 優しく、 大きく 受け止めることが必要でした。
 
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境界性パーソナリティ障害を 改善する

2010年03月07日 23時04分05秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 しばらくお休みしていた、

 岡田尊司氏の 「境界性パーソナリティ障害」 の紹介です。

 境界性パーソナリティ障害を 改善していく上で、 大切なことを記していきます。

--------------------------------------

 まず、 十分に支えられ、 安心感を持つことです。

 しかし そこに留まり続けていても、 なかなか 次の変化が生まれません。

 支えると同時に、 改善に向けて 変化させていく 働きかけが必要です。

 境界性パーソナリティ障害の人は、 様々な問題で 心身ボロボロになり、

 失敗を繰り返して 自信と希望を失っています。

 それを 立て直していくには、 冷静さや技術だけではなく、

 ハートに働きかけ、 奮い立たせることが必要です。

 弁証法的行動療法を開発した リネハンは、

 それを 「チアリーディング戦略」 と 呼んでいます。

 大声で叫んだり、 命令したり、 おだてたり、 甘いことを言ったり、

 懇願したり、 脅したり、 気をそらせたり、

 すべてを 適切な文脈で、 適切な調子で 行なう手法です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 僕は心子には、 受容することを 旨としていたので、

 充分に支えることは していたつもりです。

 心子は 具合のいいときは、 安心感を持っていたと思います。

 しかし、 その先に進むことは 当時はできませんでした。

 その方法も 分からなかったし、 受け入れることだけで 精一杯でした。

 落ち込んでいるときは、 抱擁したり、 手助けしたりすることはできても、

 怒っているときには、 どんなチアリーディング戦略を 行なっても、

 通じなかったでしょう。
 
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うまくいかないときこそ 真価が問われる (2)

2010年01月31日 19時27分13秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 こうした視点で見ると、 境界性パーソナリティ障害は、

 与えられた 既成の枠に対する 拒絶反応であり、

 その枠を脱ぎ捨てるための 七転八倒だと言えます。

 親に支配された タイプの人に、 これはよく当てはまります。

 本当の気持ちを 話せるということ、

 ありのままの姿を 見せるということが 重要なのです。

 悪いところも受け止めてもらえる という安心感が、

 この障害の回復の 鍵を握ります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子を 最も支配していたのは、 父親との死の約束の 呪縛だと思います。

(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/59812983.html の後段。)

 心子は 解離を起こしたり、 子供の人格との交替を 見せ始めた時期、

 父との死の約束の話を 僕にしました。

 心子の没後、 主治医の先生は、

 心子が 心の中の どろどろした部分まで、

 安心して (もちろん無意識に)  僕に見せられるようになったため、

 抑圧していた子供の人格が 出てきたのだと言いました。

 そして、 意識下に隠していた 真実を出すようになって 初めて、

 解離した自分を  「統合」 する作業が 始まるのだといいます。

 しかし その統合の過程が、 本人にとっては 最も苦しい道のりになります。

 抑うつ状態に陥ったり、 解離が生じることがあり、

 最悪の場合は 自殺に向かってしまいます。

 けだし心子は、 そのプロセスを 歩み出したところだったのでしょうか? 
 
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うまくいかないときこそ 真価が問われる (1)

2010年01月30日 22時29分17秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 努力の末、 やっとうまくいくように なってきたのに、

 また不安定になり、 悪かったときに 逆戻りしてしまうことがあります。

 そんなときは 周囲も落胆し、 「やっぱりダメか」 と 無力感や苛立ちを覚えます。

 けれども、 本人こそが傷ついているのだと 自分に言い聞かせ、

 こちらの期待を押しつけず、 冷静に対処することが 大事です。

 そうすれば、 「失敗しても分かってもらえる」 と 考えられるようになり、

 安心感と信頼感が築かれていきます。

 小さいときから 批判や揶揄に さらされて育てば、

 失敗 = 悪いことという 二分法に縛られたまま、 心の成長が止まってしまいます。

 失敗することによってこそ、

 人間は成長するのだという 認識を育てていくことが大切です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の父親は、 心子に完璧を要求しました。

 学校のテストも 満点でなければ許さず、

 99点だと 答案用紙を目の前で 破り捨てたといいます。

( のちに僕は母親からも、 そういうことはあったと 確認しました。)

 100か0かという 心子の二分法は、

 父親からも 植えつけられたのかもしれません。

 それにもかかわらず 心子は、

 失敗を恐れず どんな困難にも立ち向かっていく 気質に育っていました。

 心子は ボーダーのひとつの特徴である、

 ピュアで 究極の理想を求めるという 性向を持っていたのです。

 しかし 些細なことで、 やっぱり何をやってもダメ という無力感に陥り、

 希望と絶望の 両極端を行き来していました。

(以下の記事の、 それぞれ後段に 具体例の記述があります。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60083961.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60087845.html )

(次の記事に続く)
 
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自傷行為を 強化してはいけない

2010年01月29日 19時23分00秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 自傷行為をしたとき、 心配しておろおろしたり、 止めさせようと叱りつけたり、

 大騒ぎすることは、 自傷行為によって 得られる満足を増大させ、

 強化させてしまいます。

 思いやりはあるが、 穏やかで冷静な態度を 保つことが重要です。

 議論をしても 逆効果です。

 境界性パーソナリティ障害の人は 頭がよくて 理屈っぽい人も多く、

 自殺などの問題行動を 正当化する論理を組み立てます。

 こちらの言葉の 揚げ足を取ったり、 矛盾を巧みに突いてきます。

 生きるか死ぬかの 二分法で議論すると、 思考の罠に陥り、

 相手を説き伏せることは 困難です。

 議論はせず、 本人の言い分を 黙って聞いた上で、 入院などの枠組みを確認し、

 端的に結論を告げるのが、 本人を冷静にさせ、 強化を防ぎます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の自傷行為に対して、 穏やかではいられませんでしたが、

 毅然とした態度は 取っていました。

 死んでいいか悪いかの 議論をしたことはありません。

 目の前で 自殺行動に出たときは、 有無を言わず止めるだけです。

 ただ僕は、 死にたいほどの苦しみを 否定することはできません。

 かつて僕自身、 一線を越す手前まで 行ったこともあります。

 死んでもいいとは 決して言いませんが、 死にたいという 気持ちに寄り添うと、

 相手は 胸中を分かってもらえたと感じ、

 かえって一命を 取り留めることもあります。

 「生きていれば いいことがある」 「周りの人が悲しむ」

 などという常套句に 意味はなく、

 死ぬなと強調するほど、 死にたい気持ちが 起こったりしてしまうでしょう。
 
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自殺企図には どう対処するのか

2010年01月27日 21時38分06秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害で 最も苦慮するのは、

 自殺企図や薬物乱用などの 逸脱行動で、

 取り返しの付かないことや、 重大な後遺症を 残してしまうこともあります。

 自殺企図を 繰り返している場合は、

 慣れっこになるうち、 不幸な結果に 至ってしまうこともあります。

 こうした行動化に対しては、 二面作戦で臨むのが効果的です。

 ひとつは、 限度を超えた行動に 出たときには、

 大目に見ず 医療機関に入院することを、 予め決めておくことです。

 行動制限があるほうが、 本人も自分を コントロールしやすいのです。

 もうひとつは、 自殺行動だけに目を奪われず、 背後にある思いを 汲むことです。

 行動化は、 自分を分かってほしい、 向き合ってほしいという 必死のアピールです。

 苦しくても 向き合うことが重要です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 自殺企図の 背後にある気持ちには、 僕は向き合っていたつもりでした。

 心子と父親との 死の約束、 死にたいほどの絶望などには 耳を傾けましたし、

 実際に 行動を起こしてしまったときには、 断固として守りました。

 でも 入院させることについては、 僕は当時、 今よりも抵抗がありました。

 心子は普段から、 入院は絶対に嫌だと 言っていました。

 主治医の先生も、 入院すると余計 自傷行為に走るだろうと 言いました。

 ただ 心子の自殺企図が 一番頻繁になったときは、

 最悪の場合は 入院させるようにと、 主治医から言われたことがあります。

 心子は次第に アップダウンが激しなり、

 パニックを起こして 自殺企図を見せた1時間後には、

 ケロッとして 元気に笑ったりしていたので、

 入院にまで 踏み切ることはできませんでした。

 けれども 今考えると、 ちょっと休養するという 軽い意味で、

 入院してみるという 方法もあったのかもしれません。

 時間の規則などが きちんとしている生活は、

 ボーダーの人を 落ち着かせるともいいます。
 
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言葉に囚われずに 本音を汲む (2)

2010年01月26日 22時01分57秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 「気持ちを汲む」 という妙薬も、 心子には 通じないことがありました。

 心子が電話で 苦痛を訴えてきたときの会話です。

僕 「そんなふうに思うほど、 つらいんだね……」

心子 「マーには分からないわ、 希望を持てない 人間の気持ちは」

僕 「色んな事が重なって、 今 疲れてるんだね……」

心子 「今じゃないの!  36年間 ずっと苦しんできたの!

これからも 一生苦しむのよ!」
 

 心子は言葉が立ったので、 自分の気持ちや考えを 言葉で伝えることは得手でした。

 僕はそれを 傾聴することに勤めました。

 パニックを起こしたときは 別ですが、

 心子は感情的になって 攻撃してくるときでも、

 自分でわけが分からず 混乱しているのでもありませんでした。

 それは心子が 自分の気持ちを自覚し、

 感情をコントロールすることに 役立っていたのでしょうか? 
 

 僕はもしかすると、 言葉を額面通りに受け取る 傾向があるかもしれません。

 心子が引きこもっていたとき、 僕の部屋に来ないかと マンションへ迎えに行ったら、

 案外抵抗なく 応じた心子でしたが、 僕の所へ 向かう道すがら、

 「もう帰る」 「顔見たから もういいでしょ」

 などと しきりに文句を言いました。

 従来の僕なら、 来たくないのだろうかと 思ったかもしれません。

 でも、 主治医の先生の助言を 思い出していました。

 「言葉より行動を見るように」

 言葉とは裏腹に 足は前に進んでいる 心子を見て、

 僕は彼女の気持ちを 汲むことができた次第です。
  
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言葉に囚われずに 本音を汲む (1)

2010年01月25日 20時24分51秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害を よい方向に変化させる 最大のものは、

 気持ちを汲むということです。

 どんな頑なに 凝り固まった心も、 傷つき過敏になった心も、

 気持ちを汲まれると その殻をやわらげます。

 境界性パーソナリティ障害の親子関係では、

 しばしば 気持ちを汲むのが とても不器用です。

 気持ちを汲むのが 苦手な人は、

 言葉を額面通りにしか 受け取らない傾向があります。

 境界性パーソナリティ障害の人の 親に共通して見られやすいのは、

 自分の気持ちのほうに 視線が向いていることです。

 親を苦しめるわが子に、 落胆と批判の 気持ちを抱き、 困り者扱いしています。

 子供は、 本心では親を求めていて、 認めてもらいたいと願っています。

 親も本当は、 子供の助けになりたい、

 わが子に幸せになってほしいと 思っているのです。

 でも 親自身余裕がなく、 素直に子供に向き合えません。

 子供のほうも、 どうせ 親に分かってもらえないと諦め、

 これ以上 傷つけられることを避けています。

 こうした関係を よい方向へ変える妙薬が、 気持ちを汲む ということなのです。

 本人が口で どういう言葉を言おうと、 その奥底にある気持ちに 目を向けるのです。

 第三者が接する場合も、 本人の気持ちに 身を置いて、

 「傾聴」 することが基本です。

 すぐに 分かったような気にならず、 一度に全て 分かろうと焦らず、

 相手の気持ちを 丁寧になぞっていきます。

 実は本人にも 何が起きているのか、 分かっていないのです。

 溢れ出るものを 冷静に受け止め、

 思いをひとつひとつ 言葉にしていく作業を 繰り返すなかで、

 自分の気持ちが自覚され、 コントロールされやすくなるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕

(次の記事に続く)
 
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試すような行動を 取られたらどうするか

2010年01月24日 21時39分36秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は しばしば、

 こちらの辛抱を 試すような行動を取ります。

 それは相手を挑発し、 苛立たせることを、 意識的・ 無意識的に意図しています。

 こうした行為には、 いくつかの意味があります。

 まず、 自分の中の苛立ちを そういう形で表現すること。

 次に、 相手が挑発に乗って 爆発すれば、 一気に苛立ちを 放出できるということ。

 つまり、 苛立ちを極限まで暴走させて 解消する、 悪い行動パターンです。

 そして、 こちらの反応を試すこと。

 相手が感情的に反応すれば、

 本人の否定的な確信と 行動パターンを強化するだけです。

 しかし こうした行為に対して、 さり気ない言葉や ユーモアを用いて切り替えたり、

 辛抱強く見守ったり、 優しく声をかけたりすれば、

 本人は  「今までと違うぞ」 と感じるでしょう。

 それを 何十回も繰り返せば、 関係は変わり、 本人の態度も変わってきます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の 様々なネガティブな言動は、 自分の感情の表現であり、

 僕が どれだけ受け止めるかという 試しでもあったのでしょう。

 僕は挑発に乗って 感情的に反応はせず、 受け止めていましたが、

 さり気ない言葉で切り返すという 余裕はありませんでした。

 どんな言葉をかけたらいいか、

 日頃 考えるゆとりを 持てたらよかったと思いますが、

 当時は情報もなく 難しかったかもしれません。

 渦中にいるときは、 冷静に 自分にも距離を置いて、

 大局的に見直してみることは、 それだけ大変なことなのでしょう。
 
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激しい感情を どう受け止めるか

2010年01月23日 21時40分11秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人が ぶつけてくる 激しい感情に対して、

 本人の状況を考えれば、 至極もっともなことだと 受け止めることです。

 「そう感じるのは 当然だと思う」 「よく そこまで耐えたね」

 などと伝えます。

 その上で、

 「辛いことだけど、 それを乗り越えることも 大切なんだよ」

 「どうすればいいか、 考えていこうよ」

 と方向転換を図るのです。

 「それは、 ~ということなんじゃないかな?」

 と 客観的に整理していくことで、

 境界性パーソナリティ障害の人は 冷静に対処する 術を学んでいきます。

 最悪なのは、 感情に感情で返すこと、

 ついで望ましくないのは、 感情を否定して はぐらかすことです。

 もっといけないのは、 

 「だから病気なんだ」 と 烙印を押したり、 説教をすることです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の気持ちを 受け止めた上で、 方向転換を図ったり、

 客観的に整理することが、 僕にはできませんでした。

 心子が荒れるときというのは ほとんど、 僕を非難・ 攻撃しているときですから、

 それを方向転換したりするのは、 自分の言い訳をすることになり、

 心子の怒りを 否定することになってしまうからです。

 僕はただ 黙って受け止めるしか 術がありませんでした。

 それは 心子の怒りの反応を 強化することに なってしまったでしょうか。

 何か 一言でも言おうものなら、 火に油を注ぐのと 同じで、

 血を見るのは 明らかでした。

 でも境界設定は、

 最初は 以前より事態は悪くなるのを 覚悟しなければならないといいます。

 そんな試行錯誤も してみたかったと思います。
 
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中立的な態度で接する

2010年01月22日 21時17分47秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 治療者, 援助者として 関わる場合の基本は、

 誠実だが あくまでも中立のスタンスを 維持することです。

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 相手が 少しでも自分に 不信感を持っていると感じると、

 自分も相手に 不信感を持ち、 受け入れなくなります。

 逆に、 過度に好意的に接近すると、 急に期待を膨らませたり、

 幻想を抱いて 期待外れに終わると、 裏切られたと思ってしまいます。

 本人に先入観を持たず、 真っ白な心で 接することです。

 ただし、 放っておけない親切心や あふれる熱意は禁物で、

 「仕事として」 「専門家として」  割り切った姿勢が必要です。

 中立的な態度を 守り続けることが重要です。

 境界性パーソナリティ障害の人の 依存に応じだすと、 不適応を強化してしまいます。

 あくまで 主体と責任は 本人にあるのです。

 本人に 自分の足で立ってもらうことが 目標なのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 僕は 治療者ではありませんから、 中立的な立場では ありませんでした。

 恋人という、 物理的にも時間的にも 密接な関係ですから、

 心子は僕に 白馬の王子の 幻想を抱いたり、 一変して 絶望したりしたわけです。

 でも 主治医の先生から、

 「要求されても、 できないことはできないと 言うしかない」 と

 助言を受けていました。

 今で言う境界設定ですが、依存に何でも全てに応えることはしませんでした。

 最低限の距離は 取っていたと思います。

 それが心子からは、

 「あなたほど 自分の殻を守る 人間はいない」 と 言われたりしたのですが。
 
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