てつがくカフェ@ふくしま

語り合いたい時がある 語り合える場所がある
対話と珈琲から始まる思考の場

毎日新聞福島版でシネマdeてつがくカフェの様子が紹介されました

2014年11月18日 18時55分51秒 | メディア掲載
11月20日付の毎日新聞福島版のコラムに、フォーラム福島支配人・阿部泰宏さんのお書きになられた「たかが映画 されど映画」で、先日行われました第5回シネマdeてつがくカフェの様子が紹介されました。
いつもながら阿部さんの筆致は読むものを引き込みます。
その思いの熱さの中にも冷静な分析がなされており、今回お書きになられたコラムもまた、あの時の哲カフェの様子を別の角度から教えられたものです。
阿部さんといい、ゆうたまんといい、またANARCHYを囲んでの饗宴の際に知り合えた福島市に生きる文化人の方々の力には、つくづく感心させられます。
新年早々には、またフォーラム福島との共催で新たなシネマdeてつがくカフェの企画が検討されています。
ぜひ、お楽しみに。

第5回シネマdeてつがくカフェ報告―DANCHI NO YUME―

2014年11月14日 20時58分31秒 | シネマdeてつがくカフェ記録
「DANCHI NO YUME」を鑑賞しての第5回シネマdeてつがくカフェが、昨夜フォーラム福島で開催されました。
同映画は、本邦初の本格派ヒップホッパーANARCHYのサクセスストーリーを映画化したドキュメンタリー作品です。
そして、なんとなんと、既にお知らせしたとおり、映画の主人公であるANARCHYご本人を迎えての哲カフェです!
写真は左から今回の上映企画者ゆうたまん=平井、DJ AKIO、ANARCHY、渡部、小野原。

観客も90名を超える大盛況ぶりです。
立見席まで出るほど予想以上の入場者に、フォーラム支配人阿部さんも大わらわ。
ANARCHYが登場すると同時に、一気に観客の興奮も高まります。



このありえない哲学とヒップホップの異種格闘技戦は、ゆうたまん平井さんの無茶ぶりと渡部の安請け合いから始まったものですが、実は企画が決まってからというものの、けっこうブルーな気分になっていきました。
というのも、先に視聴させていただいたDVDで、自分が生きてきた世界とは完全に異なる世界での生き方に引いていってしまったし、
さらに、ANARCHYの自伝『痛みの作文』(ポプラ社)を読んで、その半端ないヤンチャぶりにドン引きしてしまったのです…
うーん。
下手にANARCHYにツッコミ入れたらファンにディスられるんじゃないか…
等など不安の種がつきません。
しかも、当日は上映前に打ち合わせをする予定が、タイミングが合わず、けっきょく哲カフェの場での初対面となりました。
いったい、哲カフェなんて成り立つんだろうか…
こんな感じで、ついにヒップホップ×哲学の異種格闘技戦が始まったのです。

・・・・・・・・


渡部:「はじめまして。当初打ち合わせをするはずが、タイミングが合わず、とうとう哲学カフェ本番での初対面となりました。哲学カフェって何をする場だと思っていました?」

アナーキー:「なんですかテツガクッて?考え方?」

渡部:「会場の皆さんもANARCHYのトークショーだと思って来られた方の方が多いのではないでしょうか。ただ、普通のトークショーとは異なって、むしろ皆で「ヒップホップっていったい何?」というテーマで、むしろアナーキーさんに向けて映画をご覧になった会場の皆さんが「ヒップホップってこうだよ」と語って、それに応じていただける形式で進めたいなと思います。もちろん、真逆の考えがあっていいし、むしろ色々な見方が出てきた方が面白くなります。それが哲学カフェだと思っていただければいいと思います。そもそも僕も小野原さんもヒップホップがよくわかっていませんので、僕らに教える感じでお願いできればありがたいですね。」

観客A:「映画を見て、仲間と本当に楽しくやっているし、現代のいい音楽というより言語という感じがしました。これから何を伝えたいですか?」

アナーキー:「常にどんなことを歌いたいのかを考えているのですが、仰るように言葉がやっぱりヒップホップでは重要だと思っているので、他の音楽にはない良さがヒップホップにだけにはあると思っています。育ってきた環境から滲み出てくるものだと思っているので、これから生きていって俺がどんなこと考えたり、どんな人とつきあったりするのかによって僕の歌いたいことが出てくると思う」

渡部:「言葉が重要だとおっしゃっていましたが、民謡とかとは違うんですか?」

アナーキー:「僕はあんまり民謡を聞いたことがないからわからないけれど、一緒やと思います。落語とか漫才もそうだと思うし、何もないところから自分の言葉を表現して、自分のいる環境から抜け出そうとしたり、何もないことを武器にすることがヒップホップだと思っていて、その辺は一緒やと思います。」

小野原:「言葉という点から行くと、イメージとしてヒップホップは戦闘的なのかなと思っていました。対立的というか、言葉を武器にして闘う、銃弾として使うというイメージだったのですが、アナーキーさんのリリックを聞いていると「仲間」とか「出自」とか、むしろ対立を乗り越えていく言葉に聞こえるのですが、それがヒップホップなのか、それともアナーキーさんのヒップホップが特別なのでしょうか?」

アナーキー:「そうです(笑)。もともと10代の頃なんかは対立的なものだと思っていたのかもしれないけれど、フリースタイルバトルなんてのもあるし、でもどんどん音楽としての良さも出てくるし、今ではそういう意識はあまりないですね。人との対立というのは表現法の一つだと思っています。」

観客B:「ロックが最初好きだったんですけれど、ハイスタみたいなパンクから入って、ライブから入りました。『痛みの作文』とか読ませていただいて、僕が育ってきた環境とか全然違うんですけれど、「仲間」とか「夢」とかかっこいいなと思って聞いていました。明日ライブ行くのででよろしくお願いします。」

観客C:「自分はアナーキーさんのすげぇファンなんでよく聞かせてもらっているんですけれど、映画ではあまり出ていなかった曲の部分での今後の目標を教えて下さい。」

アナーキー:「やりたいことはいっぱいあるんだけれど、ヒップホップって色々ある音楽の中で一番好きやから選んでまして、すごくいい音楽だと思っていて、もっとこの文化を広めたいし、ふつうに子どもから大人まで聴ける音楽にしたいと思っているし、いまおじいちゃんおばあちゃんラップきかないけれど、俺がじいちゃんになったらラップ聴く時代がくると思うし、今までアメリカのヒップホップ見ていたからそう思うのかもしれないけれど、その空気が好きでみんなが育ってきた環境とか、みんなの気持ちをステージの上で歌うのがラッパーやと思うんですよ。それをこうやって、ちょっとずついろんな町に行って、いろんな人に声を届けて一人一人の生活の一部になって、一歩踏み出せる勇気になればなと思って、それを俺は日本中マジ選挙活動しているのと一緒で、いろんな人たちに届けていけば一人ひとり、一票一票増えていって、ヒップホップ文化がすごくでかくなっていくんじゃないかなと思っています。それが今の目標かもしれないです。一票お願いします。」

観客:「アナーキーさんが世間に認められた時どんな思いがしましたか?」

アナーキー:「認められたとかいう感覚はなくて、あの(ファースト)アルバムをきっかけにこれでご飯食べていこうと思った時でもあったので、自分でいうラッパーに初めてなれたかなと思ったくらいでした。」

渡部:「さきほどから「環境」とか「仲間」という言葉が出てきますが、それは重要なタームなのでしょうか?」

アナーキー:「映画を見てもらってわかるように、僕らああいう感じのところに暮らしているんですけれど、それぞれの皆もあるじゃないですか。お金持ちとか貧乏とか治安がいいとか悪いとかじゃなくて、自分の前にみんな壁があって、みんながその環境と戦っているわけじゃないですか。僕はそれをヒップホップで闘っているわけで、みんなそれに置き換えてほしいなと思っています。」

観客:「ヒップホップは韻を踏みますよね。その韻をふむときに、アナーキーさんはインスピレーションなのでしょうか。それとも最初に言葉があってそれに合わせて韻を考えるのかどちらなのでしょうか?」

アナーキー:「両方あるんですけれど、言葉がぱっと浮かぶときもあるし、流れで出てくることもあります。自分の中からどうやって言葉が出てくるのか、どうやってリリックがひらめくのか、まだ自分でもよくわかっていないんですよ。感覚で覚えて来たものなので、教えられるほどのものではないです。」

渡部:「映画の中ではアナーキーさんのリリックに惹かれるという場面がありましたが、ほかのラッパーとどう違うのでしょうか?ファンの皆さんはどうですか?」

アナーキー(ここは手ぇ上げとこうや(笑))

観客:「アナーキーさんは他のラッパーと違ってリアルなリリックを書いていると思っているんですけど、今回「ニューヤンキー」で「もう夢は叶っている」というリリックがありましたが、どういう夢だったのですか?」

アナーキー:「さっき言ったみたいな夢です。「願うことで叶っている」と俺は思っていて、これを願い続ければ叶うと思っているんですよ。願っていればかなっていると、そういう意味のリリックなんですよ。僕は東京ドームや武道館でライブできたわけじゃないけれど、俺、武道館でライブやると思っているから、その夢はかなっている、そういう意味です。」

(やや沈黙)

アナーキー:「いつも哲カフェってこんな感じなのですか?」

渡部:「こんな感じです。この沈黙の時間が一番大事なんです。」

小野原:「みんな考えている時間だからね。」

アナーキー:「よかったー。そうっすね。僕も恥ずかしいし。この映画も上映するって言われた時に、7年も8年も前のものやし、恥ずかしいものもあったし、ゼッタイ嫌やって言い張ったんですけれど、やっぱそういうルーツ、今までの自分を見せることもヒップホップやって、自分のお兄ちゃんみたいなリューゾーっていう人に言われて、映画見せることも本を見せることも、今までのことを恥ずかしがっているようじゃいけてるラッパーじゃないよね、って言われたから、やろうと思ったんですけれど、ほんとは心の中、マジ恥ずかしいです」

渡部:「いまルーツと仰いましたけれど、「ルーツ」とか「地元」とか生い立ちとか、そういう部分を見つめていることが印象に残っています」

平井:「ヒップホップの大きな特徴は地元を「レペゼン」するということがありますよね。つまりリプレゼント、代表する、誇りに思う、自慢するという意味ですね。そのときに、何もない広大な団地しかない向島という地域を自慢する、誇りに思うというのは、どこにそういうものを見出したのでしょうか?」

アナーキー:「見てもらった通り、地元に何もなかったから、こういう仲間がいたわけじゃないですか。それがヒップホップだと思っていいて、何もないところで、みんな集まってラジカセ囲んでラップくらいのことしかないというところから始まったんですけれど、そうやって自分らの街のことや仲間のことを歌って、レペゼンしている自分たちが格好いいと思っていて、そういう自分たちを自慢しようよとっていう感じしかなかった。だから仲間仲間って歌っているのだと思う。でも、仲間ってすごい大事やと思いますよ。これはたぶん歌い続けると思いますけれど、福島もいろいろ原発放射能大変なことがあると思うけれど、けっきょく一番最後に助けてくれるのは隣にいる仲間やってことだけはみんなに思っておいてほしいなと思います。」

渡部:「レペゼンって、ヒップホップ用語ですか?」

アナーキー:「レペゼン!」

渡部:「福島でヒップホップされている方が何人かいらっしゃいましたが、地元を意識されてされているんですか?」

観客:「地元を盛り上げるというのは前提です。」

観客:「向島は歴史が浅い地域のように見えたけれど、伝統のないそんな地域にラップの文化がどうやって根付いたのでしょうか?どっから来たのでしょうか?」

DJ AKIO:「僕ら何もなかったので、なんでもよかったというか、友達と一緒にいるスケボーとかをやり始めていて、アメリカの文化を取り入れて入ってきたというところですかね。地元にただ単になんもなかっただけなんすけれど、みんなで集まれる理由がヒップホップだったということです。」

観客:「映画のテーマで仲間とか、ヒップホップって横のつながりを大事にしていると思うんですけれど、逆に孤独っていうものを大切にしたりしないのですか?」

アナーキー:「でも、制作しているときは孤独です。自分でもの作っているときは誰ともしゃべらないし、家から出ないし、ご飯も食べないし。でも、孤独は絶対重要やと思っていて、独りで考えるときやもの作るとき、孤独で生まれるものはたくさんあると思います。俺は子供の頃、母親がどっか行ったり父親がどっか泊まったり、小学3年4年から独り暮らししていたんですけれど、家帰って自分で食事を作ったり夜中まで遊んだり、その時孤独でいろいろ考えて俺っていう人間が生まれたし、この孤独がなかったらラッパーに多分なっていないと思うんです。孤独ってそんなに恐れるもんではないと思うんですよ。孤独はあった方がいいですよ。孤独になったとき、大きくなったり強くなったりできると思うんです。」

渡部:「孤立しすぎる人もいましたか?」

アナーキー:「いましたね。かわいそうだと思いました。でも、俺はそういう子もみんなラッパーになればいいと思っていて、みんなでやれば面白いと思ったので、お前もラップやってみろって。みんなでやれば面白いんじゃないか、鬼ごっこと同じですね。それに入れない人もいましたけれど、でも、その人はその人で俺に押し付けられないいい人生を歩んだと思うし。」

渡部:「逆にアナーキーさんから皆さんに問いかけたいことはありませんか?」

アナーキー:「皆さん福島が地元ですか。そうですよね。よくわからないんですけれど、災害の後、街でいろいろ大変なことがあるじゃないですか。たとえばこの街で放射能を浴びたりして、子どもたちが大変なことになるとか、この街をでなあかんとか、いろんなことと戦っていると思うんですけれど、実際、街に住んでいてどう感じたりして、どうしてほしいとか、どう動きたいと思っているとか、俺福島に住んでいるわけじゃないので、わかないんでこうやって話せる機会があったら、どんなことを考えて生活しているのか、僕何が正解かもわからなくて、さらにニュースでも難しいことばかり言っていて、何がいいか悪いかもわからなくて、でもみんなも一緒だと思うのですが、みんな実際心の中でどう思っているのか聞いてみたいなとは思っていました。」

渡部:「いかがでしょうか?福島に住んでいて皆さんどう思っているのか?」

観客:「頭にきまくって、悲しみまくって、どうしようもないです。でも、わからないようにごまかされている人が多いので大人しくしているだけです。元々大人しい県民ですから黙っているのだと思っているのだと思います。私も騙された口だったのですが、最近になって色々なことがわかってきました。」

アナーキー:「なぜ騙されたってわかるんですか?」

観客:「勉強したからです。」

アナーキー:「誰が真実を知っているのですか?」

観客:「自分がこの人だったら正しいなという人の本を読んだり、講演を聴きまくりました。」

観客:「いろいろあると思うんですけれど、福島のコメと果物はサイコーに美味しいので、ぜひ食べてみて下さい。よろしくお願いします。」

観客:「僕は洋服屋で働いているものです。その当時、僕は洋服で元気をもらったので、今は仕事を通してお客さんを元気にしたいと思っていて、離れたくても離れられないです。福島に店があることによって、またみんなで新しく向かっていこうという思いでやっています。」

観客:「逆に、いま東京や京都では福島のことは話題になるのですか?」

アナーキー:「関西になれば薄くなると思うのですが、東京では全然皆話しているし、実際のところはどうなんだろうとはしょっちゅう話しています。実際福島どうのこうのって言っても東京も同じかもしれないじゃないですか。話題にはなっているんですけれど、でも答えが出ない問題というか、僕らなんかでは最終的に答えは出せないとおもっちゃいます。だから、真実をだれが知っているのか教えてほしいです。真実を知りたいのかどうかわからないのですけれど。でも、みんな真実を知ってこの町に住んじゃダメって言われたら、ここを出ていくんですか?」

小野原:「多分、この問題に関しては真実があるのかどうかわからない。そもそもこんなことが起こってはならなかったわけで、検証しようもないし、どうなるかがわからない、答えがないというところで「どうしようか」というのが、我々に突き付けられた選択なんだと思うんですよね。だからもちろん出て行った人もいたし、残った人もいるし、残らざるを得なかった人もいます。その方が多いと思う。生活の場だったわけですから。つまりここで生きるしかないから生きているけれど、本当に大丈夫なの?と言われればみんな知らずに生きているんだと思うんです。でも、いまは真実よりも、対立という問題で、福島に残った人たちと出て行った人たちの間でも対立が起こっていて、中に残っている人たちの間でも不安に思っている人や、もう大丈夫だよと言っている人たちとのあいだで対立があり、福島の外の人たちが「フクシマなんて関係ないじゃん。大丈夫だよ。だからはじめちゃおう」と言っていて、どんどん風化され忘却されていく中で、すごく溝を感じるし、日本の中でどんどん対立が大きくなっていて、福島が捨てられいうとしている感じがします。だから、アナーキーさんに歌ってほしいとは言えないけれど、さきほどヒップホップが対立を乗り越えていく音楽になっていってくれたらと思うんです。」

アナーキー:「福島のラッパーの人たちは、今いっぱいあると思うんですよ。さっきのレペゼンじゃないけれど、誰かが代表して言わないとわからないことがいっぱいあるじゃないですか。福島のラッパには頑張ってほしいと思います。がんばってください。」

渡部:「福島のラッパーの人はお一人だけですか?」

観客:「マイナスのことを言っても仕方がないので、それをパワーに変えていきたいと思います。」

アナーキー:「そのメッセージをみんなに伝えて、みんなを元気にしてくれたら俺は嬉しいです。」

観客:「僕の地元は富岡町というところで、震災以降中通りに避難して暮らしているんですけれど、福島の僕たちが何か行動を起こしてやっていかないと、状況は変わっていかないという思いがあるので、映画にも合った通りヒップホップは僕の中ではネガティブな部分が武器になるような音楽だと思うので、僕は今3年半が経って、ようやく震災などの状況を武器にできるようにいい環境や仲間もできて、落ちた時もあったけれど、今は震災後でもいい環境ができました。」

渡部:「映画の中でラッキーさん(父親)が、アナーキーさんのすごいところはいろんな修羅場を乗り越えてきたけれど、そのときのマイナスをあいつは武器に変えていけるところだとおっしゃる場面がありましたが、そこと重なったということでしょう。」

アナーキー:「そうですね。マイナスを武器にできるのもヒップホップやと思っているので、福島の環境も状況も同じやとおもので、もっと人の心に刺さるような歌も歌えると思うし、何かが生まれようとしているのも間違いないと思うんですよ、この街で。今まで考えられなかったことも考えられるようになったし、若い人たちが政治に意識を向けられるようにしてくれたのもフクシマなんだと思うし、これからどんどん俺らみたいな若い人たちがどんどん意見言ったら動いていくと思うんですよ。今まで俺らは静かにして、俺らがなんか言っても変わらないと思って生きてきたから、いきなり目の前に理不尽なことを突きつけられただけで、初めからそれを意識できていれば原発爆発する前から「原発作るな」ってデモ運動していたわけじゃないですか。爆発してから文句言っているだけじゃないですか。だから俺はその意識、せっかくマイナスになっちゃっているんだから、それをプラスにするためにはみんなの意識を高めて、この街からこの国全体を変えていけるくらいのパワーにつながっていくと思うので、ラッパーだけじゃなくてみんなの意識を高めてほしいなと思っています。」

観客:「共感できる部分としては、やっぱりカッコイイっす。今この場での一言一言が、私の思ったことを代弁して下さっていますし、恰好いいです。今になって反骨精神がすごく出てきて、センセイとか親の世代に対して「なんだよ、お前らもうちょっとちゃんとやっとけよ」という気持ちが出てきまして、先ほどは溝を超えるという話もありましたが、ぜひヒップホップで勝ってほしいんですよ。で、その勝つ形というのを聞きたいのですが、自分としては、たとえば(小野原)先生に明日のライブで最前列で両手を振ってくれれば、自分は勝ったなと思うのですが。ヒップホップってどうしても上の世代は聞いてくれないのですよ。そうじゃなくて聞く努力をしてほしいと思います。」

アナーキー:「興味持った人がきけばいいんだと思う。」

観客:「でも、成功するためには、勝つためにはそういう人たちにも聞いてもらわなきゃいけないし、そうなってほしい。聞きたい人だけが聞けばいいじゃなくて、お前ら聴けよという部分が必要ではないでしょうか。」

平井:「小野原さんの最初のはなしにあったように闘うとか、勝ち負けというのは、どっちが上どっちが下という話になってしまうのではないでしょうか。デビューアルバムにも仲間と一緒にここまできたというリリックがあったし、あまり勝ち負けという気持ちがアナーキーにはないのかなという印象がありました。もっとみんなを一つにしたいという感覚かな。」

アナーキー:「たしかに勝ち負けだけがすべてではないし、成功が何かもわかっていないし…。一人でも多くの人に届いたらいいと思うし、誰かに勝ちたいと思ってやっているわけではないし、強いて言うなら自分にだけは勝ちたいなと思ってやっているし、それができなくなったら俺はラッパーをやめます。」

渡部:「さて時間が来てしまいました。今日はアナーキーさんが「誰が真実を知っているのですか?」と問いかけていましたが、それこそがまさに哲学なんだと思います。これで何が残るかと言われても、たぶん何もまとまりません。まとまりませんが、しかしこの会が終わった後で皆さんが、アナーキーさんの言葉や色々な方々の発言を思い出して、各々持ち帰って考えていただくことが哲学カフェの目的になります。最後にアナーキーさんから一言いただきたいと思います。」

アナーキー:「そうですね。どんなところでどんな人たちの前で話すのか知らずに来てしましましたが、こんなにいっぱい地元の人たちと言葉のキャッチボールができたと僕は思っています。映画を見に来ていただいてありがとうございました。僕が全力だしたり表現できるのはライブだと思うので時間のある方はライブを見に来てください。本日はどうもありがとうございました。」



終わってみれば、ものすごく哲学的な対話が成立したのではないでしょうか。
ANARCHY自身がとても哲学的な考え方の持ち主だからですね。
「レペゼン」なんて、まさに「代理/表象」といった哲学用語ですし、彼の「真実は誰が知っているのか?」という問いかけは、まるでソクラテスの問答のそれのような気がしました。
考えてみれば、それは当たり前と言えば当たり前のことでした。
というのも、自分の言葉を常に孤独のうちで自ら生み出そうとする姿勢は、まさに哲学者のそれに近いものだからです。
そして彼自身も感じたように、彼が福島の現状を教えてほしいといった瞬間、会場の空気が変わったというのは、この場が哲学的緊張感に満ちた瞬間であったことを示す出来事でした。

準備までにはゆうたまんこと、平井さん始め、フォーラム福島の阿部さん、エイベックスの平川さんにはたいへん世話になりました。
何より、当日遠路、哲学カフェ@ふくしままで駆けつけて下さったANARCHYとDJ AKIOには感謝の言葉もありません。
今後のご活躍を心からお祈り申し上げるとともに、またいつの日かお会いしてテツガクすることを夢見ています。
夢見る限りそれは実現したことになるのですから。
この会にご参集いただきました皆様にも御礼申し上げます。
今後ともてつがくカフェ@ふくしまをよろしくお願い申し上げます。

第5回シネマdeてつがくカフェのご案内―「DANCHI NO YUME」―

2014年11月09日 09時55分06秒 | 開催予定
いよいよ今週11月13日(木)は、第5回シネマdeてつがくカフェです。
本格派ヒップホップのアーティストANARCHYのドキュメンタリー映画「DANCHI NO YUME」です。
平日、しかも20:30上映・22:00哲学カフェ開始ということで、定例とは異なる時間帯での番外編的な回となりますが、ヒップホップをまったく知らない方々にもどしどしご参加いただければ幸いです。
しかも、な、なんと哲カフェにはANARCHY本人が参加します!!乞うご期待!!

シネマde哲学カフェとは、映画作品を参加者たちが鑑賞し、そこから浮かび上がる哲学的なテーマについて哲学的に語り合う場です。
上映作品  「DANCHI NO YUME」
開催日時 11月13日(木)
     上映時間 20:30~22:00
     哲学カフェ 22:00~23:00
会  場 フォーラム福島参加料金 映画当日券 1,500円
前売り券1,100円

※ 事前に映画鑑賞済みで、当日の哲学カフェのみ参加される方は半券をお持ちください。
※ 前売り券購入をご希望される方はfukushimacafe@mail.goo.ne.jpまでお問い合わせ下さい。
なお、「ふくしネま」とフォーラム福島受付で伝えれば、当日でも前売り価格1,100円で入場ができます。







てつがくカフェ@多文化関係学会 重要なお知らせ

2014年11月05日 19時01分05秒 | 開催予定
11月のてつがくカフェ@ふくしまは多文化関係学会のなかで、
「オープンフォーラム」 という形で開催いたします。
学会といっても別にかしこまってやるつもりはまったくありません。
いつも通りのてつカフェです。
県外からの参加者は多いかと思いますが、県外の方々とともに、
福島で生活するとはどういうことなのか、語り合ってみたいと思います。

多文化関係学会第13回年次大会
オープンフォーラム 「福島で生活するとは」
日 時 11月8日(土) 15:30~17:00
会 場 コラッセふくしま401


ところで重要なお知らせがあります。
この学会、福島在住の一般参加者に関しては1,000円の大会参加費が必要となります。
(福島大学生は無料)。
しかしながら、てつがくカフェの常連の皆さまに関しては、
いつものようにお気軽に参加していただきたいということから、
無料招待状を配付することになりました。
下記のメールアドレスに参加希望を表明していただければ、
2日間この学会に無料で参加いただける招待状メールをお届けします。

(masaoonohara@mail.goo.ne.jp)
そのメールをプリントアウトして御持参いただければ、
受付で無料扱いとさせていただきます。

お手数をおかけして申しわけありませんが、なにとぞよろしくお願い申し上げます。


11月9日 (日) の13:00~14:00には牧野英二さんによる基調講演もあります。
「異文化間哲学における他者理解の課題」。
こちらもぜひ奮ってご参加ください。

産経新聞文化欄にもANARCY & シネマdeてつがくカフェが載りました

2014年11月04日 19時09分47秒 | メディア掲載
産経新聞文化欄にもANARCY & シネマdeてつがくカフェが載りました。
これで全国紙・福島県の地方紙もほぼ制覇というところです(あとは東スポだ!)。
もっとも、記事内容はどれもANARCYの紹介記事ばかりなので、ついでにてつカフェの予定が載っているだけなのですが、ま、それはそれでよしとしましょう。
とはいえ、友人の「おやじラッパー」からメールをいただくなど、反響もたしかにあるようです。
いよいよ来週の開催です!

なお、「ふくしネま」とフォーラム福島受付で伝えれば、当日でも前売り価格1,100円で入場ができます。


拡大できます ⇒ 

てつがくカフェ@多文化関係学会―「福島で生活するとは」―のご案内

2014年11月03日 08時01分45秒 | 開催予定
今週11月8日(土)、コラッセふくしまにて開催される多文化関係学会オープンフォーラムで、小野原が下記の哲学カフェを行います。
今月は定例のてつがくカフェ@ふくしまは開催されませんので、こちらにどしどしご参加下さい。
その他にも興味深い内容の講演などがたくさんあります。
9日(日)には、毎度「3.11特別編」でお世話になっている法政大学の牧野英二さんの講演もございます。
そちらへも多くの方々にご参加いただければ幸甚です。

テーマ  「福島で生活するとは」
開催日時 11月8日(土) 15:30~17:00
会  場 コラッセふくしま