風に吹かれてぶらり旅

まっすぐに生きる人が好き

暗闇エンターテイメント

2006-08-31 00:48:08 | 徒然
 2004年、介助の仕事を辞めた年、辞めたのにもかかわらず前の職場の忘年会にお呼ばれした私はその席でMさんというお友達ができた。Mさんは視力に障害をもっており、忘年会の席では「私目が見えないから、こういう初めての人ばかりの場所に来るのはためらったのよ~」確かこういうことを言っていた。だいぶ前のことなので正確ではないけど…。

 私は介助者をやっていた頃、視覚障害を持つ方の在宅介助に入ったことがあり、上手くコミュニケーションがとれず、利用者の方に寄り添った介助をすることができなかったことがあった。視覚障害を持つ人に自分の存在を知らせるにはわかりやすく簡潔に、的確に、スピーディーに状況を説明し、自己表現ができねばならない。そして利用者さんを理解し、介助者を理解してもらう、そういう信頼関係ができなければ介助はできない。何も喋らないで黙々と仕事をしていても、利用者さんは介助者が今どこで何をしているのか、どんな状況なのか分からないからだ。
 自分を言葉で表現する…私が一番苦手とすることだった。
結局、私の勤めていた事務所では視覚障害を持つ方の介助者派遣は事業自体が縮小してしまったのだけれど(私が勤めていた当時は)、心の中にはどこか未消化な部分があった。

 忘年会の席で私はたまたまMさんの隣に座ったのだけど、Mさんと初対面にもかかわらず色々なことを話した。Mさんは自分の思っていることを素直に口にする人だった。私は「この人好きだなぁ」と思った。裏表がないというか…多分、私の言うことに反対の意見だったら「そうかしら?私は違うと思うわぁ」と言ってくるそいういう人だと思った。だから私もちゃんと自分の思ったことを言えるなと思った。というか、Mさんはお子さんがいて、私の何年も人生の先輩なのだ。Mさんに、私が介助者時代に視覚障害を持つ方の介助で抱いたの未消化な私自身の気持ちをぶつけたら、きっとMさんのまっすぐな意見が返ってくるんだろうと思っている。私はそれを聞いてみたい。

 といいつつ、2004年の年末に会って以来、会えずにいた。
でも合間に「最近どう?私はこんなことやってます」と、メールをくれるのだった。
そのMさんから8月の半ばにメールが来た。
今、東京の青山で行われている「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」、暗闇エンターテイメントというキャッチフレーズのイベントのスタッフをしているのだという。そのイベントは完全に光のない世界で8人のグループを組み、白杖を渡され、ガイドの人に導かれてあるコースを回るというもの。頼れるのは視覚以外の感覚と、周りの人の声、ガイドさんの案内のみという世界らしい。
そのMさんは毎回深い感動を味わうのだそうだ。
興味があったら是非きてねというメールだった。
そのチケットはネットでの予約制で既に完売しており、夜中にHPをみていてタイミングよくキャンセルが出たので1枚入手でき、明日行ってくる予定なのである。
Mさんは明日はいないらしいから、2年ぶりの再会はまだ先になりそうだけれど。

 今回このイベントに行きたいと思ったのは、純粋に真っ暗な闇の中で自分がどういう感覚になるのか興味がある、それだけだ。こういう企画は障害を一つの個性とみるオープンな視点があるからこそ成立するものだと思う。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿