風に吹かれてぶらり旅

まっすぐに生きる人が好き

ミーコさん

2006-03-20 02:04:14 | ペット
 我が家では飼い猫のことをさん付けで呼ぶ。
それというのも、私の高校時代からの友人がうちの猫や犬の名前に敬称をつけて呼ぶため、その響きがなんとなくよくて私もそう呼ぶようになってしまったのだ。

 さて、今日でミーコは退院して一週間が経った。
ミーコが退院してきた先週の日曜日、私は疲れがたまっていて眠りこけていた。
朝9:30に病院に迎えにいくことになっていたのだが、身体がだるくて両親に行ってもらったのだ。

 10時をすぎて、玄関の戸が開いて閉まる音と階段を登る音がして、カチャっと私の部屋のドアが開き、ベッドに横になっている私の目の前に病み上がりのばあさん猫が現れた。
ミーコは水色のトートバッグから顔だけだしていた。
「ミーコさん!!!」
私がそう呼ぶとミーコがトートバッグから飛び出してきて、ベッドによたよたと乗り移った。
ミーコは私のベッドでよく寝ていたので、このベッドを見てきっとうちに帰ってきた実感をもったのだろう。そのリアクションがとっても嬉しかった。

 ミーコはだいぶ痩せてしまい、退院してきたばかりのころは自分でご飯を食べる元気はなかった。ただじっとして、よく眠って、体力の回復をはかっているようだった。
というわけでご飯は食べさせている。
動物病院から出された缶詰に水を加えてレンジで温め、すりばちで練って完成だ。
これに薬を少量つけて指かスプーンで、ミーコの口の左サイドからねじ込む。
ねじ込むというのはちょっと乱暴なようだけど、正面から食べさせようとしても口をあけないのである。
くんくん、と匂いをかいでお腹がすいて食べたそうにはしてるんですが。
獣医さんから教えてもらったというこの食べさせ方をすると、
ミーコの口の周りはべっとりとえさがついて汚れるのだが、強引な食事の時間が終わると
うんざりした顔をしながら自分でペロペロと舐めてきれいにする。
猫はきれい好きなのですね。

 そんな調子でミーコは回復しつつあるようだ。
尿も一日に一回は必ず、ウンチも今週4、5回しており腸は正常に働いているらしい。
入院して手術の前日には便の匂いのする嘔吐をしたというから、その時に比べたら本当によくなった。
先週の16日に抜糸をし、17日には血液検査と検便、少し脱水症状を起こしているということで水分補給の注射とビタミン注射をしてもらった。
母の話によれば、思いのほか経過がよいので獣医さんも驚き、嬉しそうにしていたらしい。
ただ17日の時点でまだ白血球の数値だけ60000と高いままなのでまだ完全によくなったとはいえないらしいが。与える食事がとても重要らしく、腸が充分に機能しないのに牛乳を与えたりすると下痢を起こして容態が急変することもあるとのことだった。

 ミーコは居間のホットカーペットの上で寝ている。
うちのミーコはずっとゲージの中に入れて、たまに出して遊ばせたりするような生活をさせてきた。
それは本来の猫のあり方とはかけ離れており、ミーコにとってはよくないことだと思っていたので獣医さんに聞いてみた。しかし、猫は上下運動が必要なので上下に動けないとあまりよくないが、ゲージで過ごす生活に慣れているのであればミーコにとってはそれが普通になっているとのことだった。
そしてもともと屋外で過ごしていた猫が家の中でしか動けないとなるとストレスになるが、
ミーコの場合は生まれた時から家の中なら、外の世界を知らないから家の中がミーコにとってのすべてだからそれほどストレスに感じないのではという話だった。

家の中がミーコにとってすべてだなんて思ったらなんだかせつない気持ちにもなってしまったのだけど、うちに貰われてきたこと、これもミーコの運命なのだ。
私の理想の猫のあり方や幸せをミーコに押し付けてはいけない。
いいのか悪いのかわからないが、ゲージでの生活に慣れていたミーコは入院中も大変落ち着いていたそうだ。動物病院のゲージの中でオシッコはキチンと隅のシートの上で済ませ、寝るときはバスタオルを自分で丸めて寝場所を作っていたらしい。
獣医さんは「よっぽどしつけがいいのかしらと思いました」と言っていたが、そうではない。ゲージの中で飼われるミーコが身につけた生活のスタイルである。

 今ミーコのゲージの扉はいつも半分開かれて、閉じられることはない。
前はニャーニャー鳴いて、柱をガリガリと引っかいたりしていたが、もうすっかり丸くなってしまった。年老いた猫を家族はまるで赤ちゃんを見るように、可愛がっている。

 ちょっと話はズレるが、ミーコが入院中に面会しにいった時、隣のゲージにいた白地に黄色の茶の斑点のついた猫をみて母は「タマちゃん、大きな猫ね」と言っていたがゲージのどこにも「タマ」という名前は書いていなかった。どうやら母が勝手に名づけたらしい。
数日後母にミーコの面会を頼んだ時には「タマちゃんいなかったから退院したみたい」とミーコの隣の「タマ」と呼ばれた猫について報告をしてくれた。
ミーコも「タマ」ちゃんもどちらも同じ猫だ。
「タマ」ちゃんが元気で暮らしていることを陰ながら願っている。
ただ、ミーコには私たちしかいなくて、「タマ」ちゃんにはその飼い主しかいなくて、それぞれの飼い主が迎えにくるのをずっと待っていたのだ。
ミーコには私たちしかいないんだなと思うと、また切なくなって、でもだからこそ守ってやらなきゃなと思った。

生死をさまよって、見事回復してきたミーコには本当に敬称をつけるべきなのかもしれない。

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