道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

風景画の誕生(渋谷Bunkamura)

2015年10月09日 | 美術道楽

渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の「風景画の誕生」展に行きました。

ウィーン美術史美術館のコレクションの中から、風景画に焦点を当てた作品が展示されている企画展です。

特に宗教家の背景に描かれた風景の描写から、風景それじたいが主役になっていく過程がわかるような形で作品コレクションが選ばれています。

 

第1章 風景画の誕生の中の第1節 聖書および神話を主題とした作品中にあらわれる風景では、ヤン・ブリューゲル(子)の《エジプト逃避途上の休息》、ティツィアーノの《タンバリンを演奏する子ども》など、宗教的な題材を取り上げた作品が展示されています。そこではあくまでも付属品として、風景画が含まれております。後者の作品は、一見すると子供を描いただけの作品ですが、タンバリン等描かれたものが、Vanitas、つまり人生のむなしさの寓意を表しているとのことです。

ところが、デューラーをして、最初の風景画家といわしめたヨアヒム・パティニールの《聖カタリナの車輪の奇跡》になりますと、もうカタリナの絵はとても小さく、車輪が炎上する場面(こんな話だったのか疑問がありますが。)はわかるものの、カタリナ自身は見落としてしまいそうです。ここでは、なるほど風景の方が主役といえるかと思います。

ヤン・ブリューゲル(父)の《キリストの誘惑が描かれた風景》でも、キリストの姿は小さくなり、こちらも風景の方が主役のようです。

ヴェネチア派のドッソ・ドッジの《聖ヒエロニムス》の絵は、ドッソ・ドッジが唯一署名を残した絵ということです。その署名というのが面白いです。アルファベットのDが描かれ、そこに突き刺すように骨(昔の漫画で犬がくわえていそうな骨)の絵が描かれているのです。骨はイタリア語でOsso、つまり、私の大好きなオッソ・ブーコのオッソで、D*OssoでDossoになるのです。とても面白い署名と思いました。これなら赤Rossoだったら、R+骨でいいかもしれません。

第1章のほかの絵では、ホーホストラーテンの画家の《聖母子と聖カタリナと聖バルバラ》において、背景に塔が描かれていることによって、描かれているのが塔に閉じ込められた聖バルバラであることを表されていること、南ネーデルラントの画家の《東方三博士の礼拝》において、背後の風景を覗き込んでいる後ろ向きに描かれた2人が描かれていることなどが印象に残りました。

 

第1章 第2節では、一年12ヶ月や季節の営みを描いた月暦画等が展示され、第3節では、牧歌を主題とする風景画が展示されています。

 

第2章は風景画の展開となり、我々が慣れ親しんでいるスタイルの風景画が展示されています。



私にとっては、やはり宗教的なテーマの背景として風景画が描かれているタイプの初期の風景画が一番面白いと再認識した次第であります。