Zooey's Diary

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「キャプテン・フィリップス」

2013年12月05日 | 映画


いや、疲れました。
134分間、息をつく暇もない。
2009年にソマリア沖で実際に起きた事件を基に、人質に取られたコンテナ船船長(トム・ハンクス)
とソマリア人の海賊たちとの攻防戦を描いた作品です。
原作は、船長リチャード・フィリップスが著したノンフィクション。
『ユナイテッド93』などのポール・グリーングラス監督。

冒頭の、ソマリア人の海賊が出撃するシーンでまず、呆気に取られます。
砂浜に集まった貧しい身なりの男たちが、突然出撃することになる。
綿密な計画性や、堅固な人間関係などまるでなく、
行き当たりばったりとしか言いようがないやり方で。
お互いに名前も知らないメンバーだったりするのです。



小さなボロ船で、アメリカの大きなコンテナ船を追いかける。
あんな小さな船でどうやって?と思っていると
銃の国アメリカのコンテナ船は、何故か丸腰。
ハイ・スピードで逃げるとかホースで放水するなどの防御策しかなく、
銃を幾つも持った海賊たちにはひとたまりもない。
あっという間に、海賊たちが乗り込んでくる…

この海賊たちが、実に怖い。
みんな痩せこけていて、目だけが光っている。
そして実によくキレる。
唾を飛ばして怒鳴り、殴り蹴り、発砲する。
食べ物の代わりなのか、しょっちゅうドラッグのような草を噛んでいる。
狂気に満ちた悪人に銃を持たせるほど、怖いことはありません。

しかし、彼らには彼らの事情があることも分かってくる。
元々は漁師であったが、大国の乱獲のせいで魚が取れなくなったというのです。
だからといって、海賊以外にやることはないのか?というフィリップスの問いかけに対し、
アメリカなら(あるだろうが)と答える貧しいソマリア人。
富める国と貧しい国。
その格差が、嫌というほど伝わってくるのです。

フィリップスが小さな救命艇に人質に取られてからは、緊張度は益々高まってくる。
何かと言っては、殴られ蹴られ、首を絞められ…
息も詰まりそうな狭い艇内で、弩号と汗と血が飛びかう。
アメリカ海軍に追いかけられるようになってからは
海賊は愈々キレまくり、いつ殺されてもおかしくない状態。
その地獄を生き延びたフィリップスが、最後の最後に半狂乱になるのも
無理はないでしょう。



先日の朝日新聞に、実在のリチャード・フィリップス氏と久米宏氏との対談が
載っていました。
この事件のことで誰かを恨んではいないのか?と問う久米氏に対して
海賊たちに嫌悪や憎しみは感じていない、その行為に及んだ理由は分かっているし、
夢すら見ることのできない現実を生きる彼らに、とても胸が痛むと。
そして、この映画の最も優れた点は、ポール・グリーングラス監督が
海賊をただのヒール役ではなく、我々と同じ人間として描いたところにある、
とまで言っているのです。

あれだけの目に遭って、そんな風に思えるなんて…
そして実際彼は、事件の14カ月後に船の仕事に復帰しているのです。
緊張を強いられ続けて実に疲れる作品ですが
確かに勇気は貰えます。

「キャプテン・フィリップス」 http://www.captainphillips.jp/



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8 コメント

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いろんな事を教えられました。 (テクテク)
2013-12-09 13:05:01
こんにちは

映画の最後に
事件後、船長は職務に復帰されたと出ていましたが…

それだけでも凄いと思っちゃったのに
海賊に対して彼らの過酷な生活状況に理解を示せるなんて
リチャード・フィリップス氏は人間として素晴らしい人ですね

ソマリア沖での海賊については
ニュースで度々報道されてはいますが
世の中には様々な人が存在していて
私の想像を絶するような世界が存在するのだと
この映画を通して教えられました
返信する
テクテクさま (zooey)
2013-12-09 22:03:48
ええ、本当に素晴らしい人のようです。
大体そうでなくちゃ、あの修羅場を乗りきることは
できなかったでしょうねえ。

ソマリア沖では、日本船も被害に遭っているんですよね。
2011年の商船三井タンカー襲撃事件は
私も覚えていました。
決して無関係の話ではないんですよね。
返信する
素晴らしい人間 (ノルウェーまだ~む)
2013-12-11 00:49:26
こんばんは☆
トム・ハンクスの演技が素晴らしい~と思っていたら、なんと実際の船長さんも素晴らしい方だったのですね。
割とすぐに船長として復帰していることにビックリしたのですが、インタビューで恨んでいないと発言する、やはりこれこそが船長の器なのかもしれないですね。
年末にいい映画に出会えました。
返信する
まだ~むさま (zooey)
2013-12-11 21:36:22
そう、私は新聞のこの対談記事を先月読んで
どうしても観たくなったのです。
ここまで言い切る人って
どういう人だろう!?って。
こんな目に遭ったら私だったら
もう一生船には近寄りませんわ~!
返信する
報告とお礼に参上しました。 (ヤマ)
2014-03-02 11:46:57
zooeyさん、こんにちは。

昨日付けの拙サイトの更新で、
こちらの頁をいつもの直リンクに拝借しております。

実際のフィリップス船長の弁と行動、凄いですよね。
それだけの人物をして、あれだけパニくらせる状況、
確かにとても耐えられそうにありません。

こういう事態に対して
力で臨む“積極的平和主義”ではなく、
こういう事態が起こらないよう
貧困や差別、格差をなくそうとする“積極的平和主義”
というものが世界基準になるといいのですが、
市場主義という名の競争至上の強欲資本主義が
どんどん幅を利かせるようになると、
ますます遠ざかっていくようで、遣り切れませんね。

どうもありがとうございました。
返信する
ヤマさま (zooey)
2014-03-09 22:04:34
引っ越でバタバタしていて
お返事が遅れました。

こちらこそリンクありがとうございます。
鑑賞して半年近く経った今、
緊張して疲れたということ位しかはっきり覚えていないのですが…
あれほど緊張させられたにもかかわらず、
見終わった後の印象は悪いものではありませんでした。
それって結構凄いことですよね?
返信する
お疲れ様です。 (ヤマ)
2014-03-09 23:49:12
本作を観る以上にお疲れであったでしょうに、恐れ入ります。
自身の引っ越しは、もう三十年来、経験していないので、段ボール箱に詰めるのも解くのも想像するだにゾッとします(笑)。ご苦労様です。
あ、子供三人が小学生になった時分に、住まいを隣家と入れ替えて部屋数の多いほうに移ったのだった。でも、所詮、隣家だからのんびりやればよかったのですが、それでも面倒だったような記憶が…(たは)。

ところで、本作が“遣り切れなさ”のみを残していないのは、確かに「結構凄い」ことなのだと僕も思います。
返信する
ヤマさま (zooey)
2014-03-10 14:33:43
いえいえ。
確かに引越って大変ですねえ。
私も18年ぶりなので、どんなに大変なんだかもう忘れておりましたw

>本作が“遣り切れなさ”のみを残していないのは、確かに「結構凄い」ことなのだと僕も思います

この作品の評価は
その一言に尽きると思います。
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