Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

40年ぶり「ポーの一族」

2016年05月30日 | 


少女漫画雑誌を買ったなんて何十年ぶりだろう?
萩尾望都「ポーの一族」40年ぶりに登場!
少女の頃、何度読み返したか分からない漫画。

これから長きに渡って連載される(であろう)「ポーの一族」新作第一話は
まだまだ始まったばかりの序章のようで正直、私には今一つでしたが
別冊付録の「訪問者」に泣きました。
これは1980年刊の作品のようなのですが、私はもう大人になっていて知らなかったのです。
「トーマの心臓」のオスカーが、ギムナジウムに行くまでの1年間を描いている。
この作品のフアンにはとっくに周知の事実のことですから書きますが
オスカーの父親グスタフには子種がなかった。
美しい妻ヘラは、学生時代の恋人ミュラーと一夜を共にし、オスカーを授かる。
グスタフは妻の前では息子をまったく無視し、妻のいない所で可愛がった。
そしてオスカーは9歳になり、グスタフは口論からヘラを殺してしまう。
グスタフはオスカーと愛犬シュミットを連れて、当てのない旅に出る…

旅ではグスタフは息子を可愛がるが、その途中にも、息子を残して度々失踪する。
その都度オスカーは、自分は捨てられたのではないかと不安になりながら待っている。
そのオスカーの気持ちが、なんとも切ない。
老犬シュミットが死んだところでは
「もしこんどパパが出て行ったら
 もう帰っては来ないかもしれない
 だってもう シュミットがいないんだもの…」

オスカーは、父親グスタフが母親を殺したことを薄々気がつきながら
グスタフの重荷を半分肩代わりしようとする。
「神さま パパを苦しめないで
 ママ パパを許して
 お願いです」

しかしグスタフは、自分はもう駄目だ、お前をこれ以上連れて行けないと
結局オスカーを、ミュラーが校長を務めるギムナジウムに置き去りにする。
「ぼくはいつも たいせつなものになりたかった
 彼の家の中に住む 許される子どもになりたかった
 ほんとうに 家の中の子どもになりたかったのだ」

親の愛を得られない、家に居場所を見つけられない子どもの悲しみを
作者はどうしてここまでみずみずしく描けるのか?
子どもは親を選べない。
親に無視されても、虐待されても、子どもは親を求める。
何十年ぶりに、オスカーの孤独に泣きました。
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「すれ違いのダイアリーズ」

2016年05月26日 | 映画


タイやベトナム、カンボジアなど東南アジアに旅行に行くと
無数の水上生活者の姿を見ます。
特にカンボジアのトレンサップ湖には、世界最多、100万人の水上生活者がいるのだそうです。
巨大な濁った湖の上に、夥しい数のボートが浮かび、その中には雑貨店や食料品店、
学校や教会、寺院までもが見受けられました。
あんな水の上の小さなボートで、人々は一体どんな生活をしているのだろうと思っていました。



この映画は、そんな水上の学校が舞台なのです。
タイの体育会系青年、新米教師のソーンがなんとか得た職は、僻地の水上学校の教師だった。
水道も電気も電波もない不便な生活で、初めての教師の仕事にも戸惑い、
たった4人の子どもたちの信頼も中々得られない。
行き詰まったソーンは、ある日前任者の女教師エーンの日記を見つける。
彼女も、孤独感に悩みながら、日々奮闘する様子を日記に詳細に書いていた。



同じ水上学校を舞台として、女教師エーンのシーンと、青年ソーンのシーンとが
交互に描き出されます。
孤独の中でエーンの日記を唯一の頼りとしたソーンは、いつか彼女に恋心を持つようになる。
しかし彼女には都会に恋人がいて…



水上学校の生活というのが凄い。
子供たちは遥か遠くの家(ボート)から来るので、月曜から金曜までは学校に泊まり込む。
教師は食事から着替えから就寝から、生活全ての面倒を見なければいけない。
親の中には、子供に漁師の仕事を手伝わせて、学校に来させたがらない者もいる。
子供も、(難しい算数をやるより)父ちゃんの手伝いをしたいと言う。
そんな親子に、教師はどう向き合ったらよいのか?

後半、ソーンとエーンの二人がお互いを意識しながら、すれ違いばかりで中々出逢えない所は
ややあざとい感もありますが、素直な良い作品です。
そして実際の水上学校がモデルであり、実話がベースだということに、驚くばかりです。

「すれ違いのダイアリーズ」 http://www.moviola.jp/diaries2016/
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「ルカンケ」と「アーヴィング・プレース」

2016年05月25日 | 社会


白金台の小さなフレンチ・レストラン「ルカンケ」。
REQUINQUERという名前は「元気にする」という意味なのですって。
最初に出て来たアミューズに、まずびっくり。
小さな石がゴロゴロ敷き詰められた中に、石とそっくりのパンが隠れている。
豚のリエットが添えられた、竹炭を練り込んだお団子のようなパン。
お次は、ミニミニソフトクリームの形をした、フォアグラのクリーム。
前菜の鮎の稚魚のフライは、丸いお皿に三匹の鮎が泳いでいるようなあしらい。
シェフの遊び心がふんだんに現れていて、楽しくなってしまう。
こんな小さなお店がミシュラン一つ星を取っているということにも驚きました。



食後、プラチナ通りをブラブラ歩いて、「Irving Place」でお茶を。
ビルの3階にあるこのカフェには、裏にツリーハウスがあるのです。
ウッド調の店内は天井高く温かみある雰囲気、緑と風が爽やかなテラス席も。
こちらではバナナネクターを頂き、その後、ツリーハウスにも登ってみました。
壊れそうな鉄の階段を3階まで登るのは、中々勇気が要ります。
にしてもIrvingって、私が好きな小説家ジョン・アーヴィングと関係あるのかしらん?



ブログ仲間のノルウェィーまだ~むさんとセレンディピティさんとの
久しぶりのランチ会でした。
折しも私は、新しいiPhoneに換えたばかりの日で、操作に戸惑うことばかり。
色々ご迷惑をおかけしましたが、楽しいひと時に感謝です。



ルカンケ  http://requinquer.jp/index.html
アーヴィング・プレース http://www.biotop.jp/irvingplace/
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フラワー・カーペット@六本木ヒルズ

2016年05月23日 | お出かけ


六本木ヒルズでこの週末、フラワーカーペット祭りが開催されていました。
ベルギーと日本の友好150周年を記念して催されたのだそうです。
菊や薔薇などの生花を3万本以上使ったというカーペットはお見事。
花模様の小便小僧の像もありました。



こんなのを見ると、本場ブリュッセルのフラワーカーペットが見たくなります。
有名なグランプラス広場で2年に一度の夏の4日間だけ開催されるというお祭り。
2014年のテーマはトルコ、100人以上の手で作られたのですって。
そして今年のテーマはなんと日本!
2016年8月12日から15日まで。
うわ、行きたい…
60万本以上という鮮やかな生花で、日本は一体どんな風に表現されるのだろう?



でも普段は静かなヨーロッパの都市、こういった催しがあると
世界中から観光客がこれでもかと詰めかけるのです。
そして今はテロの心配もある。
ブリュッセルの空港や地下鉄で、今年の3月に連続テロが起きたばかり。
でもそんなことを心配していたら何処にも行けないし…
悩ましいところです。


この写真は、下のサイトから。

Flower Carpet  http://www.flowercarpet.be/en
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切なく悲しいお伽噺「海の仙人」

2016年05月22日 | 


久しぶりに「感想を書きたい」と思う本に出会いました。
文庫本の帯のキャッチコピーは
「孤独に向き合う男女三人と役立たずの神様が奏でる不思議なハーモニー」。
宝くじで3億円が当たり、会社を辞めて海辺の町で釣りをしながらひっそり生きる河野勝男。
浜で出逢い、河野と惹かれ合うようになる、キャリアウーマンのかりん。
河野を遠くから思い続けながら、他の男とも付き合う片桐。
その三人に「ファンタジー」と名乗る奇妙な神さまが関わって来る。

そもそも「ファンタジー」って何者なのか?
突然、河野の前に現れて
「居候に来た、別に悪さはしない」とのたまう国籍不明の男。
”「神さん?」
河野が聞き返すと、ファンタジーは憮然とした面持ちで言った。
「親戚のようなものだ、中でも俺様は一番できが悪い」”
河野は訝りながらも、しかしファンタジーを自然に受け入れて行く。

この小説の登場人物はみな心優しく、適度な距離を保ちながら相手と関わっているのです。
お互いを尊重しながら、それでも結果的には傷つけ合うことになったりする。
過酷な運命に打ちのめされ、幸せになりたくてもなれない孤独な男と女たち。
片桐の台詞。
「孤独ってえのがそもそも、心の輪郭なんじゃないか? 
外との関係じゃなくて自分のあり方だよ。背負っていかなくちゃいけない最低限の荷物だよ。
例えばあたしだ。あたしは一人だ、それに気がついてるだけマシだ」

文庫本の解説の、福田和也氏の言。
”孤独は「心の輪郭」であり、「最低限の荷物」だとするところに、絲山氏の真骨頂が現れています。
孤独から逃げ出すために他者と連なるのではなく、自らの孤独を引き受けた者だけが他者を尊重できる、と。”

こんな説明じゃ何のことだか分からないでしょうが…
これほど相手のことを思っているのに、どうして結ばれることができないのか?
ここまで酷な運命を、どうして彼らは背負わなければならないのか?
そんな疑問が喉まで出かかっているのだけど、それを口にするのが恥ずかしくなるくらい、
登場人物たちは、静かに自分の運命を受け入れて行く。
大切な人や物を失った時の喪失感、そして失うまでの果てしない怖れ、
そういったものが淡々と、しかしキッパリと描かれているのです。
孤独な人間たちの人生の一断面を綴った、切なく悲しい御伽話。
心に深く傷を負った人への静かな応援歌、という気もします。

易しい文体はテンポよく、抑えたユーモアが効いていて
150ページ余りの短い本は、すぐに読み終わってしまう。
でも何度も読み返したくなります。
私は今日、結局三回読みました。
かりんが河野に出会った日に語った
「『よだかの星』の、おまえはこれから『市蔵』と名乗れと言われたところとか、悲しかったよね」
という言葉が、実は一番共感したところだったりします。

「海の仙人」絲山秋子 
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「オマールの壁」

2016年05月19日 | 映画


この映画は、監督をはじめスタッフは全てパレスチナ人、
撮影も全てパレスチナで行われ、100%パレスチナの資本によって製作されたのだそうです。

ヨルダン川西岸地区に住む真面目で思慮深いパン職人のオマール。
家族のために働き、家では愛猫を可愛がる心優しい青年。
聳え立つ分離壁に投げ縄をかけて乗り越えては、恋人ナディアや幼馴染の友人たちに会いに行く。
ある日、イスラエル軍兵士に手酷い侮辱を受け、
友人と共にイスラエル兵殺害を実行するが、秘密警察に捕まってしまう。
壮絶な拷問を受け、一生囚われの身になるか、仲間を裏切ってスパイになるかの選択を迫られる。



分離壁というものは、イスラエルとパレスチナの国境線に建っているのだと
私は思っていました。
ところがそれは、パレスチナ自治区の中にも縦横無尽に張り巡らされているのです。
その高さは8m、長さは今の時点で500㎞。
ベルリンの壁の2倍の高さ、1.5倍の厚さ、5倍の長さといいます。
今世紀に入ってすぐイスラエルが「テロリストの侵入を防ぐため」という名目で
アメリカの援助と保護の下に建設したのですと。
聳え立つ壁を乗り越えるには、銃殺も覚悟しなければならない。
パレスチナ自治区といっても自治とは名ばかりのようです。
「海からたった15キロなのに、生まれてから一度も見たことがない」と嘆く
パレスチナ人の言葉が重い。



そんな中でも作品の前半、オマールは愛と友情に包まれて
8mの巨大な壁も楽々と乗り越えるのです。
壁の向こうには、恋人と友人が待っているから。
ところが終盤では、オマールは自力では登れなくなってしまう。
あれだけ凄惨な拷問にも耐え抜いたオマールが、何故そうなってしまったのか?
民族抗争、占領下の抵抗に加えて、愛と友情と裏切りが複雑に絡まり合う。



オマールを巧みに騙し込む、イスラエル秘密警察の幹部ラニ。
電話で母親に子どもの幼稚園の迎えを頼むという良き父親の側面を見せつつ、
何人ものパレスチナ人の人生を決定する某略をさらりと語るラニは、
占領者イスラエルの象徴か。
そして最後のオマールの選択には、私は小さく叫んでしまいました。



なんとも重い映画です。
先週はナチの残党の裁判の話「アイヒマン・ショー」を見たばかり。
ホロコーストであれだけ酷い目に遭ったユダヤ人が今、パレスチナでしていることは…?
そして「アイヒマン・ショー」も小さな劇場、恵比寿ガーデンで観ましたが
こちらの上映劇場はもっと小さな渋谷のアップリンク、客席は50席ほどしかないのです。
平和な日本と無関心、これも現実。
原題は「Omar」。ハニ・アブ・アサド監督。

オマールの壁  http://www.uplink.co.jp/omar/
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見てくれじゃないよねえ?(涙)

2016年05月17日 | 家庭料理
金柑を大量に入手しました。
金柑って、子供の頃はちっとも好きじゃなかったのですが
今になって食べてみると、そのままでも美味しいですね。
ちょっとだけ苦くて、爽やかな甘味。
しかし生では長くは持たないので、甘煮を作ってみました。

ネットで「金柑の甘煮」を調べてみたら
出るわ出るわ…色々なレシピがありすぎる。
下茹でするレシピ、しないレシピ、
包丁で切り込みを入れるレシピ、竹串で刺すレシピ、
圧力鍋を使うレシピ、普通鍋を使うレシピ、
お酢を入れるレシピ、入れないレシピ、
砂糖は金柑の重量の半分以上とか三分の2とか、
初めて挑戦する者としては、どれを採用したらよいのか迷ってしまいます。

結局、私がやってみたのはこんな感じ。
約1㎏の金柑を水洗いし、竹串でつくつく穴を開ける。
3分間ほど下茹でし、水と400gの砂糖、酢100cc、レモン汁を加えて
圧力鍋で3分間圧力をかけた後、蓋を取って2時間ほど弱火で煮込む。

できましたが…
丁度、普通のお酢が切れていたのでバルサミコ酢、それに三温糖を使ったものだから
こんな色になってしまいました(←バカ)。
ブラックチェリーの甘煮のようです。
面倒がらずに、お酢とグラニュー糖を買いに行けばよかった。
甘すぎずとろりと柔らかく、味はよいのですが…
次回作に期待です。





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パッキングの凄いコツ

2016年05月15日 | 社会
ファッション雑誌ELLE誌で「スーツケースのパッキングの凄いコツ」というものが
特集されたのだそうです。
アメリカ在住の友人が、こんなの日本人だったら当然のことばかりと笑っていたのですが
確かに言われるまでもなく、日本人で靴をそのままスーツケースに入れる人なんていませんよねえ。
でも友人によると、汚い靴を包みもせず入れる人が身近にいるのだとか。
服は丸めてとか、重いものは底の方にとか、歯ブラシやアメニティグッズはビニール袋にとか、
あまりにも当たり前のことばかり。

7番目の「A few sheets of Bounce」を入れろというのはいいかもしれない。
バウンスのシートというのは、衣類乾燥機に入れるシートタイプの柔軟剤のことです。
これを入れれば、スーツケースは良い匂いに包まれること間違いなし。
でも我家では、お天気であれば洗濯ものは外に干すし、雨だったら浴室乾燥機を使うので
これを買う機会はないのですけど…

それにしても、アメリカ人って整理整頓がもっと上手というイメージを
私は持っていたのですけど。
こんな簡単なことが特集されたり、あの「人生がときめく片づけの魔法」のコンマリさんが
去年「もっとも影響を与えた100人」に選ばれたりするとは
決してそうとも言えないのかしらん。

そういえば昔、アメリカ西海岸在住の友人宅に、数日間泊めて貰ったことがあります。
広いお宅はスッキリと片付いていて羨ましかったものですが
その後、東京に帰って来た彼女のマンションを訪れて
普通に物が溢れていて、ちょっと安心したり。
やっぱり面積と収納があればモノは片付くのだと思ったのでした。


今日のオリーブ 中々蕾が開きません

13 Packing Hacks That Will Change Your Life
http://www.elledecor.com/life-culture/travel/a8066/packing-tips-tricks-travel/
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「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち」

2016年05月13日 | 映画


ナチス残党のアイヒマンの裁判を通して、世界中にホロコーストの実態を知らしめようとした
テレビマンたちの姿を描いた人間ドラマ。

1960年、ブエノスアイレスに隠れていたナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンが
イスラエル諜報機関によって逮捕され、翌年、イスラエルで裁かれることになる。
テレビプロデューサーのミルトン・フルックマンと、監督レオ・フルヴィッツは
この世紀の裁判をテレビ中継しようと意気込む。
「ナチスがユダヤ人になにをしたのか、世界に見せよう。
そのためにテレビを使おう。
これはテレビ史上、最も重要な事件となるだろう。
過去、現在、そして未来においても」
しかし、様々な妨害が入り…



その時代、ホロコーストの実態が欧米でもあまり知られてなかったという事実に
まず驚きます。
ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちも、その体験をあまり語ろうとはしなかった。
或いは、話しても誰にも信じて貰えなかった。
そうした100人以上のユダヤ人たちが強制収容所の実態を、裁判で次々に証言する。



映画は、アウシュビッツやダッハウでの実際の記録映像、そして
エルサレムでの裁判の記録映像が織り込まれながら進みます。
その収容所での実際の映像というのが凄い。
ヴィクトール・フランクルの「夜と霧」といった手記や
或いは沢山のホロコーストに関する映画を観て、多少は知っているつもりでいましたが…
骨と皮ばかりの裸の人間の死体の山が、ブルドーザーでかき寄せられる様子。
その夥しい死体の山が、ゴミのように巨大な穴に落とされる様子。
やはり実映像に敵うものはない。



そういった実映像が裁判で映し出され、法廷の証人たちは証言しながら
泣き出したり、気分が悪くなったり、或いは倒れてしまったり。
テレビ中継している男たち(皆ユダヤ人)も、辛い記憶が蘇って
正視することができなくなる。
そしてその裁判中、終始表情を変えない、ユダヤ人虐殺の指揮者アイヒマン。
有罪か無罪かと裁判官に問われて、あくまでも無罪だと繰り返す。
自分は命令に従っただけだと。
4ヶ月に渡る裁判の間に撮影された映像はすぐに編集され、
世界37カ国に向けて放映されたといいます。

これは、アウシュビッツ解放70周年を記念して作られた作品なのだそうです。
地味な小品ながら、訴えかけてくるものがあります。
「誰もがアイヒマンになりうる」
差別や偏見を少しでも持つ限り。
監督レオの言葉が、重く残ります。

「アイヒマンショー」 http://eichmann-show.jp/
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ピーターラビットと湖水地方

2016年05月12日 | 社会


ピーターラビット・ハッピーガーデンというものが
今月いっぱい、恵比寿ガーデンプレースで開催されています。
著者のビアトリクス・ポター生誕150年を記念しての催しらしい。



色とりどりのお花畑には、ピーターやジマイマやベンジャミンの姿が。
小さい頃自分が親しみ、幼い息子たちにも読み聞かせたピーターラビットの世界。



7年ほど前にイギリス湖水地方にロンドンから電車を乗り継いで行き、
山あいの小さな村ウインダミアのB&Bに二泊しました。
ビアトリクス・ポターがその半生を過ごしたというヒルトップにも行きました。
不便な所にあるその家は思ったよりもずっと小さく素朴で、その庭はこの写真のように
奇麗なものではなく、もっと質素で地味なものでした。
映画「ミス・ポター」、或いは湖水地方にあった「ビアトリクス・ポターズ・ワールド」という
博物館の解説などから伺い知ることができた、彼女の人生。
上流階級の娘は職を持ってはいけなかった20世紀初頭、32歳で独身のビアトリクス・ポターは、
二頭立ての自家馬車に乗って出版社を駆け廻り、なんとか絵本を出版することに成功します。
ロンドンの裕福な家に生まれた、ばあやつきのお嬢さんが、その後こんな田舎に家を買い取り、
執筆しながら農婦として過ごし、ナショナル・トラスト運動にその身を捧げたということは
考えてみればすごいことです。


湖水地方のヒルトップ

恵比寿ガーデンのハッピーガーデンは、絵本のイメージから作られたものであるらしい。
だからこんなに色鮮やかで綺麗なのですね。
「あるところに、4匹の小さなウサギが住んでいました。
 なまえは、フロプシー、モプシー、カトンテール、そしてピーターといいました。」
今もその書き出しを覚えています。

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