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Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

駄目母と健気な娘「Kiddo」

2025年05月02日 | 映画

オランダの児童養護施設で暮らす11歳の少女ルーのもとに、離ればなれになっていた母カリーナから突然の連絡が入る。自称ハリウッドスターだというカリーナは、再会を喜ぶルーを勝手に施設から連れ出し、ポーランドに住むおばあちゃんのところへ行くと告げる。カリーナにはルーとずっと一緒に過ごすための、ある計画があった。そんな母の型破りな言動に戸惑いながらも、一緒にいたい一心で母に着いていくルーだったが…(映画Comより)



来日中のオランダ人の友人と観た映画というのは、これでした。
カリーナのあまりの駄目母ぶりに呆れます。
そもそも一人娘を養護施設に預けっ放し、その間連絡もせず、突然現れて勝手に連れ出す。「ボニーとクライド」を気取り、無銭飲食など娘に犯罪の片棒を担がせる。
精神的に不安定な社会不適合者であり、ハリウッドスターというのもおそらく嘘八百で、今まで一体何処で何をしていたのか?
しかし、母親が恋しい11歳の娘ルーは、戸惑いながらもついて行く。
その娘の健気さに泣けてきます。
子どもは親を選べないものね。



「人生はゼロか100かよ、キドー!(お嬢ちゃん)」というのがカリーナの台詞。
タイトルでもある「Kiddo」は、「kid」の愛称形で「子供」という意味です。
シリアスな題材でありながら、所々に現れるアニメーションやポップな画像、そして60~70年代のアメリカンポップスが何とも明るい。
ラストは悲しいが、ルーの心には母親との思い出が刻みつけられたことでしょう。
完全でなくても、どんなに駄目母であっても、子どもを思う気持ち、そして子どもが母を慕う気持ちは、やはり美しい。



カリーナは何処で拾ってきたのだというようなおんぼろシボレーで現れて、しょっちゅうエンストしながらポーランドまで走るのですが、最後は綺麗なトヨタの軽車両に変わるのも面白い。
ルーが暮らしている養護施設が、日本のように大きなものではなく、数人の子どもたちと養母が暮らしている、ごく普通の家のようであることに驚きました。
オランダ人の友人に聞くと、色々なタイプの施設があるが、あれはよく見られるタイプなのだそうです。
目が行き届き、こじんまりした家族のようであるという点でいいのかもしれませんね。

「Kiddo」公式HP 

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「教皇選挙」

2025年04月09日 | 映画

エドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。
全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。票が割れる中、水面下でさまざまな陰謀、差別、スキャンダルがうごめいていく<映画.comより>



100人程の定員内での選挙で、規定の有効得票数(投票総数の2/3以上)を得る人物が出るまで延々と繰り返されるという、まさに「根競べ」と言われるコンクラーベ。
世界中の高位聖職者が集まる密室の中に、名誉欲、嫉妬心、猜疑心、そういったものが渦巻いて、選挙を執り仕切ることとなったローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は頭を抱える。



面白かった!
重厚な背景は宗教画を観ているようだし、真っ赤なガウンを着た聖職者の集団のシーンは、モダンアートを観ているようでもある。
そこに人間の欲望や宗教対立、戦争、ジェンダー問題まで絡んで見応えがあります。
カトリック最高峰の密室社会と言えども、そこはまさに現代社会の縮図でもある。
本年度のアカデミー賞脚色賞受賞。
あの下品なドタバタ「アノーラ」よりもこちらの方が、はるかに作品賞にふさわしいと思うのですが…


ネタバレする訳に行かないので言えませんが、最後にアッと驚くどんでん返しがあります。
画面に何度か出てくる亀がヒントか。
亀を噴水の池に帰すという辺り、チェスの八手先を読んだという前教皇が仕組んだように事は進んだということでしょうか。
そして亀は雌雄同体でもありますからね。



バチカンのサンピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂、昔行きました。
一つの国というにはあまりにも小さなその面積に聳え立つ大聖堂、そこに世界中からの信者と観光客が集まっていました。
一般人が入れないその奥(あれはイタリアのカゼルタ宮殿でのロケということですが)、そして窺いようのないコンクラーベの内情を知ることができて、大満足です。
☆4.5

「Conclave」公式HP 


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これがアカデミー賞?「アノーラ」

2025年03月21日 | 映画

この映画に関しては、映画館で予告編を何度も観ていましたが、正直、B級ドタバタラブコメだと思い、観る気もなかったのです。
ところがカンヌでパルムドールを受賞、そしてアカデミー賞で作品賞・監督賞・主演女優賞・脚本賞・編集賞の5部門を受賞。
ショーン・ベイカー監督の「フロリダ・プロジェクト真夏の魔法」には以前、感動したことだし、巷では称賛されているようだし、これは観ない訳にはいかないと観て来ましたが…


結論から言うと、やはり好きにはなれませんでした。
ニューヨークのストリップダンサーのアノーラは、ロシアの大富豪の御曹司イヴァンと職場で出会い、1万5000ドルの報酬で1週間の「契約彼女」となる。
親の豪華マンションでセックス、パーティ、ショッピングと贅沢三昧の生活を楽しみ、ラスベガスにまで豪遊し、その時のノリで結婚するまでが前半。
そのことがロシアの親の耳に入り、怒った親は結婚を阻止すべく、屈強な男たちを送り込み、自分たちもNYにやって来て戦闘状態になるのが後半。



まず、登場人物の誰をも好きになれない。
用心棒のイゴールを除いて。
職業に貴賤はないといいますが、売春は別の話だと私は思いますし、それ以前にアノーラには共感できない。
下品だし、計算高いし、男たちが来てからは、暴れる、叫ぶ、噛みつく、蹴とばすの狂乱状態。
イヴァンは親の金でゲームをして遊んでいるだけのボンクラ息子で、後半の始まりでアノーラを置いてとっとと逃げ出してしまう。
男たちは、(イゴール以外)イヴァンの親の機嫌を取ることしか考えない。
イヴァンの両親に至っては、アノーラのことなど虫けら以下にしか考えていない。
すったもんだの末、予想通りの終章を迎えるのですが…
これがアカデミー作品賞を取る程のものか?と思ってしまいました。



ベッドシーンが多すぎるこの映画の中で、ラストシーンだけが印象的でした。
降りしきる雪の中、イゴールの古いクルマのエンジン音と、ワイパーの音だけが聞こえる音楽なしの世界。
アノーラはやはり、ああすることでしか感謝の気持ちを表すことができなかったのだろうと。
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「名もなき者」ボブ・ディランの若き日々

2025年03月06日 | 映画

1961年の冬、ヒッチハイクでニューヨークへやって来た青年(ティモシー・シャラメ)。
先輩ミュージシャンのウディ・ガスリーやピート・シーガー(エドワード・ノートン)に才能を認められ、ジョーン・バエズ(モニカ・バルバロ)とパートナーを組んだりしながら、時代の寵児となっていく。
が、フォーク歌手としてだけでなく、彼は他にも自分の道を模索し始めていた…



ジェームズ・マンゴールド監督の描き方は正攻法で奇をてらうこともなく、安心して観ていられますが、やや退屈とも言えます。
晩年ノーベル文学賞まで取ったボブ・ディランという男の、若き頃の数年間を淡々と描いた作品。
そりゃ御本人は83歳でまだ御健在なのだから、そうそうぶっ飛んだことは描けないでしょうし。
なのにアメリカでこれだけ評判になった(アカデミー賞7部門ノミネート、結局取れなかったが)ということは、この作品が思い起こさせる特別なものがあの国ではあるのだろうかと思います。



ただ、「風に吹かれて」「ミスター・タンブリン・マン」など、結構な頻度で歌うシーンが出てくるのですが、ティモシー・シャラメがすべて歌ったというのは凄い。
この映画の企画が出てからコロナ禍とストライキなどで制作が5年停滞、その間にシャラメは歌とギターとハーモニカを猛特訓したのだそうです。
そしてジョーン・バエズ役のバルバロも、役が決まった時点では歌も演奏も未経験だったと。
プロは凄いなあ!


(御本人たち、そっくりで驚きました)

そしてタイトルの「A Complete Unknown」というのは、「ライク・ア・ローリング・ストーン」の曲の中の「Like a complete unknoun, like a rolling stone」から取ったということです。


公式HP 


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「ファイアーブランド」

2025年02月26日 | 映画

英国史上有名な暴君、ヘンリー8世。
離婚を正当化するために英国教会を作り、5人の妻を処刑、追放、出産による死亡などで切り捨てた残虐王。
その6番目の妻となった女性の目線から描く、生き残りをかけた宮廷サバイバル劇。



横暴な君主ヘンリー8世(ジュード・ロウ)と望まぬ結婚をした、理知的なキャサリン(アリシア・ビカンダー)。
国王と対立する立場であるプロテスタントに肩入れしていることを告発されてしまった彼女は、前妻たちのように首をはねられるのか、それとも病に蝕まれた王が先に死ぬのか?
豪華な調度品に囲まれた薄暗い宮廷の中に、息詰まるような緊張感が漂います。



カンヌ映画祭でこちらが上映された際、8分間のスタンディング・オベーションが巻き起こったと言いますが、しかしこれ、ヘンリー8世いいとこなしじゃないの?
これでもかと体重を増やしたジュード・ロウが、見事に演じていましたが。
太りすぎのせいか、痛風のせいか、糖尿病のせいか、激痛と足の壊死に苦しんで癇癪を起し、暴れる王。
そんな王に疑いをかけられ、キャサリンはロンドン塔に幽閉されるのですが…



「ファイアーブランド」(FIREBRAND)とは、火をつける人、扇動者、転じて悪意や情熱を燃やす人という意味があるらしい。
この映画に描かれたヘンリー8世に、ピッタリの言葉でありました。
前妻アン・ブーリンの娘エリザベスが冷めた声でナレーションを担っていましたが、この人が後のエリザベス一世となったようです。
王の権力が絶対だったこの時代に、女性目線から描いたという点で珍しい演出だとは思いますが、何しろ緊張感で疲れました。

公式HP 

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「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」

2025年02月20日 | 映画

スペインの名匠ペドロ・アルモドバルによる初の長編英語劇で、2024年ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したヒューマンドラマ。
元戦争ジャーナリストで今は末期癌の患者となったマーサ(ティルダ・スウィントン)と、その古い友人で小説家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)が共に過ごす数週間が描かれる。
苦しむことなく自分らしく死にたいと望むマーサは、自分の意思で最期を迎えることを決意し、イングリッドに隣の部屋で最期まで寄り添ってほしいと依頼する。



ここまでは、予告編などから知っていたこと。
このデリケートな問題を、アルモドバル監督がどう料理して見せてくれるのかと期待していました。
が、非常に淡白な、押さえた演出。
画面に広がる家具や小物、2人の衣装などは色彩豊かでとても鮮やかなのですが。



結局「死を恐れるのではなく、自ら受け入れること」というテーマをどう受け止めるかは視聴者次第であると、突き放された気分です。
安楽死についてはアメリカでは州によって違うようですが、ニューヨークでは違法であり、なのでその用意や後始末(発覚後、イングリッドには殺人の嫌疑がかけられた模様)は大変なようです。
安楽死を選びたい、しかし誰かに傍にいて欲しいという勝手な要求を、その危険を犯してまで叶えてくれる友人がいたという時点で、マーサは勝ち組だったと言えるでしょう。
しかしイングリッドも、純粋な友情は勿論あったにしろ、作家としてこの貴重なシーンを見逃がしたくないという好奇心があったことも否めない(貴女のことを書いてもいい?とマーサに確認していた)。



マーサとその娘ミシェルとの関係については、納得できませんでした。
マーサは世界を飛び回る戦争記者としてミシェルを早くから手放し(彼女がどう育ったかは言及がなかった)、父親について娘が満足する説明をしなかったことなどから、ミシェルから嫌われていた。
そして結局、死ぬまで会おうとも話そうともせず、ミシェルはマーサが亡くなってから初めて現れるのです。
娘を世に産み出した母親としてそれはないんじゃないの、と思わずにはいられない。
ミシェルがマーサにあまりにも似ていて驚きましたが、あれはティルダの二役だったようです。
☆4

公式HP 
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「リアル・ペイン〜心の旅〜」

2025年02月12日 | 映画

ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッドと、兄弟のように育った従兄弟ベンジー。現在は疎遠になっている2人は、亡くなった最愛の祖母の遺言によって数年ぶりに再会し、ポーランドのツアー旅行に参加することに。正反対な性格のデヴィッドとベンジーは時に騒動を起こしながらも、同じツアーに参加した個性的な人たちとの交流や、家族のルーツであるポーランドの地を巡るなかで、40代を迎えた自身の生きづらさに向きあう力を見いだしていく。(映画comより)

自由奔放で言いたい放題、気ままに動くベンジー(キーラン・カルキン)と、始終周りに気を遣い、良識的な行動を取るデヴィッド(ジェシー・アイゼンバーグ)。
しかし奔放なベンジーには、実は数ヶ月前にオーバードーズで死にかけたという過去があり、今は定職もない。
かたやデヴィッドは、立派な仕事も愛する妻も息子も持っている。
ベンジーみたいなワガママな人間といたら、どうしたってその尻ぬぐい役となることに腹を立てながらも、みんなに受け入れられるベンジーに嫉妬心さえ抱くデヴィッド。
子供の頃は兄弟のように育ったという二人の、対照的な性格、そしてその絡み方が面白い。



強制収容所でなんとか生き延びて米国に移住したという祖母の遺言で、2人はホロコーストを訪ねるツアーに参加するのです。
マイダネク強制収容所を訪ね、そのシャワー室、焼却炉なども見学するのですが、その描写は思ったよりもさらっとしたものでした。
かつて中学生の時、私はヴィクトール・フランクルの「夜と霧」を読んで衝撃を受け、一晩眠れなかったものです。
ところが近年その新版を手に取ったら、あの生々しい沢山の写真が綺麗になくなっていたことに驚きました。
この映画の強制収容所訪問のシーンは、その「夜と霧」の新版に近いような印象だったのです。



『ソーシャル・ネットワーク』でFaceBookの創始者マーク・ザッカーバーグを演じたジェシー・アイゼンバーグが、監督・脚本・制作・主演を務めています。
生きづらさを抱えた神経質そうなデヴィッドの役に、なんともピッタリ。
そしてベンジー役のキーラン・カルキンは、あの「ホーム・アローン」のマコーレ・カルキンの弟で、今回ゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞。
原題「A Real Pain」は「本当の痛み」の他に、「面倒なヤツ」といった意味も。
全編にショパンのピアノ曲が流れる、心温まる映画でした。

「リアル・ペイン」 公式HP 

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「アーサーズ・ウィスキー」、ダイアンのこと

2025年02月01日 | 映画

不思議なウイスキーを飲んだことで突然20代に若返った70代の女性たちが、ラスベガス旅行を通して本当の自分を見いだしていく姿を描いたイギリス映画。
気軽なコメディと思いきや、後半、思いがけない過去や重篤な病気が出て来て、意外な展開に。
ちょっと中途半端な感が無きにしもあらずですが、「無理をせず、今の自分のままで」というのがテーマなのかな。
にしても、ダイアン・キートン79歳、綺麗に歳を取りましたね。



ここ10年位をとっても、「また、あなたとブッククラブで」「チア・アップ!」「ロンドン、人生はじめます」「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」等々、彼女の活躍ぶりは素晴らしい。
どの映画でも、媚びずに自分のスタイルを貫く女性を演じています。
昔の「アニー・ホール」「Mr.グッドバーを探して」が懐かしいですが、あの頃からジャケットにパンツ、ネクタイといったマニッシュなファッションが印象的でした。



彼女の私生活については何も知らなかったのですが、今回チェックしてみたら、舞台女優として活躍した後、過食症に苦しんだ不安定な時期もあったのだそうです。
そしてアル・パチーノやウディ・アレン、ジャック・ニコルソンなど、大物たちと恋に落ちてきたのに意外にも1度も結婚はしておらず、50歳を過ぎて2人の養子を迎えたのだと。
ちょっと驚きました。

「アーサーズ・ウィスキー」公式HP 

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「オークション 盗まれたエゴン・シーレ」

2025年01月25日 | 映画

ナチスドイツに略奪されたエゴン・シーレの絵画「ひまわり」を巡って美術オークションの世界で繰り広げられる駆け引きの行方を、実話にインスパイアされて描いた映画。

パリのオークションハウスで働く競売人アンドレは、エゴン・シーレ作と思われる絵画の鑑定を依頼され、元妻で相棒のベルティナとともに地方都市の工場労働者マルタンの家を訪れる。本物であることを確信してオークションにかけようとするが、その絵を巡って様々な欲と陰謀と駆け引きが渦巻いて行く。



登場人物がみんな一癖あって、やたら感じ悪いのです。
アンドレは絵に関しては確かな審美眼を持っているようですが、成金男で上から目線。
そのアシスタント、オロールに至っては、息をするように嘘をつく。
アンドレとオロールの職場での会話は、神経の細かい人だったら心を病みそうなとげとげしいものです。
そのオロールの今の父親、実の父親が出てくるのですが、嘘をついたり陥れたりするばかりで、どういう関係なのか結局の所ハッキリとは明かされない。
あの癖のある人物像は、欲のない労働者階級の青年マルタンの清廉さを引き立てているのかとも思いますが。



その絵は実はナチスによる強奪品であり、しかもナチスはそれを退廃芸術として価値のないものとしていた。
それを労働者階級の家族が所持していた経緯とか、癖のある登場人物たちが棘のある会話を繰り返すところとか、そのくせ最後は愛し合う関係になるところとか、実にフランス映画らしいとも言えます。
感動する類の作品ではありませんが、オークションの裏側の嘘だらけの駆け引きなど面白く視聴しました。
原題は『Le tableau volé』で「盗まれた絵画」、英題『Auction』。

公式HP 

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「型破りな教室」

2025年01月14日 | 映画

アメリカとの国境近くにあるメキシコ・マタモロスの小学校。子どもたちは麻薬や殺人といった犯罪と隣りあわせの環境で育ち、教育設備は不足し、教員は意欲のない者ばかりで、学力は国内最底辺だった。6年生の半数以上が卒業を危ぶまれるなか、出産のため辞職した6年生の担任の代役として、マタモロス出身の教師フアレスが赴任してくる。子どもたちはフアレスのユニークで型破りな授業を通して探究する喜びを知り、それぞれの興味や才能を開花させていく。しかし、思わぬ悲劇が彼らを襲い…
(映画comより)



マタモロスの小学校で2011年に起きた実話を描いた本作は、本国で300万人を動員し、2023年No.1の大ヒットを記録したといいます。
メキシコがいかに危ない国であるかということは今までに観て来た映画や本などから、そして実際に少し旅行したことから多少は分かっていたつもりですが、しかしここはあまりにも酷い。
麻薬、殺人、犯罪、児童虐待が蔓延していて、何しろ本当に死体が転がっている。
悲惨な環境の中で教師も事なかれ主義、当然親は教育に無関心、教育委員会は業界と癒着していて、学校に届くはずのパソコンが届かなかったりする。
そんなところにやって来た熱血教師ファレスは、子供達の可能性を信じ、それを様々な手段で引き出そうとするのです。
「しかし、君たちは世界中のどんな子どもたちにも引けを取らないものを持っている。それは可能性だ」と。
“But you do have one thing that makes you the equal of any kid in the world, Potential.”



ゴミ山の麓の掘っ立て小屋に父親と住み、ゴミを拾って生活をしているが数学の天才である少女パロマ。
ギャングの下っ端である兄に続いて自分もそうなるつもりで、運び屋もどきのことをしている少年ニコ。
無計画に子供を産み、外で働いている母親の代わりに弟妹の面倒、家事すべてをこなしている少女ルぺ。
この中で、教師ファレスとパロマが実在の人物なのだそうです。
実際にパロマは数学で全国一位の成績を取り、雑誌「WIRED」に掲載されたフアレスとパロマを取り上げる記事がきっかけとなって、映画化の企画が立ち上がったのだと。
そしてパロマ本人が、この映画の大学図書館の司書役で出演しているのですって。


(パロマ本人)

ラスト近くで起きた悲劇にはもう、言葉もない。
これが現実ということか。
そしてこの大きな悲劇のみならず、この映画には他にも小さな悲劇が散りばめられている。
冒頭、やせ衰えたお婆さんをリヤカーのようなものに乗せていた緑のシャツの少年。
ラストではそのリヤカーにゴミを乗せて、小学校の門の外から覗いているのです。
どう見ても就学年齢であろうに、学校にさえ行けない子がいるということも現実なのかと胸が痛くなります。
原題は「Radical」です。☆4

「型破りな教室」 公式HP 

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