Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「ラブカは静かに弓を持つ」「椿ノ恋文」

2024年06月14日 | 

「ラブカは静かに弓を持つ」安壇美緒著 

2023年本屋大賞第2位、第25回大藪春彦賞受賞。
子供の頃の事件がトラウマとなって不眠と悪夢に苦しんでいた青年、橘は、勤めている著作権管理会社から企業スパイとして音楽教室に送り込まれる。
目的は、著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
縁を断っていたチェロの指導を再び受けることになり、最初は嫌々であったが、チェロを奏でることにどんどん夢中になっていく。
熱心に教えてくれる講師や教室の仲間たちと交流を持ってしまい、自分の裏切り行為に苦しむことになります。
裏切りをテーマにした小説はままあるが、こう来るかと思いました。
人生に絶望していた青年が、もがきながら苦しみながら再生していくさまが清々しい。
「嘶きのラブカ」をネットで検索して聴きましたとも。



「椿ノ恋文」小川糸著

「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」を経て、ツバキ文具店シリーズ第三弾。
家事と育児に奮闘中の鳩子が、先代に託された代筆屋を6年ぶりに再開します。
結婚する娘に言い残したい癌末期の母親、自分が同性愛者であることを両親にカミングアウトしたい若者など、様々な人生の悩みを抱えた人々が、今日も代筆を頼んでくる。

中でも、若年性認知症になった50代後半の女性が、この先どんどん記憶を失くしていくであろう自分に対して書いて欲しいと依頼してきた件に、心打たれました。
「自分がどういう人間で、どういう人生を歩んできたのか、同じ手紙で構わないので、定期的に自分に送られてくるシステムを、今のうちに確立しておこうと思いまして」

そして夫の連れ子、可愛かったQPちゃん。
反抗期になって口も聞いてくれなくなり悩む鳩子に、マダムカルピスが伝えた言葉。
「今から思えば、そういう嫌なことも全部含めて、すべてが自分の栄養になったって実感するの。何か起きてもまずはそれに逆らわずこの手で受け取って、そしてまたそっと水に流して。その繰り返し。ただただ時間が経つのを待つだけね。だって、時間が経つことで少しずつ見える景色が変わってくるから。毎日ちょっとずつ変わるから自分では気づかないけど、でもある日、あれ?随分目の前の風景が変わったなぁって気づくの。それがトキグスリ」

バーバラ夫人、男爵、マダムカルピス、関西弁を操る知的ヤクザなど、魅力的な人物が次々に登場します。
QPちゃんや小学生の子どもたちに振り回されながら成長していく鳩子に、第四弾でまた出会えるのを楽しみにしています。

コメント (4)
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