15歳の少女ララの夢はバレリーナになること。
難関のバレエ学校への入学を果たし、血のにじむような努力をするが、
トランスジェンダーである彼女にとって、それは平坦な道ではなかった。
清楚な美少女のララが、長いブロンドの髪を後ろに結ってレオタードを着ると
胸がまったく平らであることに、観る側は違和感を覚えます。
どうしても目立たせたくないという彼女の意向で、男性器をガムテープで堅く押さえつけ、
おかげで肌に炎症を起こし、トイレに行くのもままならない。
おまけに第二次性徴を迎えている彼女の身体は、精神的には女である彼女の意向に
逆らって、色々な問題を引き起こす。
外科的な性転換手術は18歳まで待たなければならず、彼女は次第に追い詰められていく…
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ララを演じているのはどういう人だろう?と、観ていて猛烈な興味を持ちました。
ベルギーのアントワープ・ロイヤルバレエスクールに通う現役トップダンサー、
ビクトール・ポルスター。
彼は普通の男性であり、500人を超える候補者の中から選ばれたのだそうです。
私はバレエを観るのは好きで、新国立劇場、Kバレエ・カンパニーなどで
毎年、様々な舞台を観ていますが、男性と女性の踊りは違います。
男性ダンサーは普通、ポワント(トゥシューズを履いてつま先立ちで踊ること)はしない。
ビクトールも当然、ポワントは未経験であったが、この役のために猛練習をして
代役なしで、あの踊りのシーンが多い撮影をこなしたのだそうです。
画面の中でララは何度もトゥシューズの中で血を流していましたが
それは実際、ビクトール・ポルスターにも重なるところがあったのでしょう。
意のままにならない身体。
周囲からの好奇の目やいじめ。
只でさえ難しい思春期の身体と心の揺れに、トランスジェンダーとしての苦悩が重なり、
激しく踊る彼女を写す画面は、彼女の心を表すように大きく揺れていく。
彼女を心配する父親が、実に理想的な慈愛に満ちた親なのですが
彼に「大丈夫か?」と聞かれるのが、ララは嫌でたまらない。
「お前はいつも大丈夫としか言わない」と嘆く父親。
「だって大丈夫じゃないから」とララ。
そして彼女は、衝撃的な結末を引き起こすのですが…
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/51/4bf88c84c8b41b04311cd7a164c5b7a4.jpg)
2009年にベルギーの新聞で、トランスジェンダーの少女がバレリーナになるための葛藤を
記した記事を読んで、当時18歳のルーカス・ドン監督は衝撃を受けたのだそうです。
それから9年の歳月をかけて完成したという本作。
第71回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)、ある視点部門の
最優秀演技賞、国際批評家連盟賞受賞。
映画「Girl/ガール」