ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争における「民族浄化」(ethnic cleansing)については
「サラエボの花」「あなたになら言える秘密のこと」など色々な映画を観てきました。
今回DVDで観た二作品についても、備忘録として書き留めておきたいと思います。
「最愛の大地」は2011年アメリカ映画。アンジェリーナ・ジョリーが監督。
主人公はセルビア軍将軍の息子ダニエルとボスニア人女性アイラ。
姉と平和な毎日を過ごしていた美大生アイラは、ある日突然、セルビア軍に連行される。
着の身着のままで集められた女性たちは、雪の野外でいきなりその一人がレイプされて言葉を失くす。
しかしそれは、恐怖の日々の幕開けに過ぎなかった。
兵士たちは毎日女性たちをレイプするのだが、アイラはかつて交際していた将校ダニエルのおかげで
難を逃れる。
しかし、セルビア人であるダニエルとボスニア人であるアイラは結局…
アンジェリーナは「国際社会が迅速かつ効果的に戦争に介入できなかったことにたいする失望を、
アーティスティックに表現する映画を作りたかったのです」と。
「最愛の大地」
http://saiainodaichi.ayapro.ne.jp/
「ある愛へと続く旅」は、2012年イタリア・スペイン映画。
セルジオ・カステリット監督。
1980年代の終り、サラエボで運命的な出会いをしたイタリア人のジェンマ(ペネロペ・クルス)と
アメリカ人の写真家ディエゴは結婚し、ローマで暮らし始める。
子どもを望むが妊娠できず、不妊治療にも踏み切るが、中々努力は実らず。
そんな時に紛争が勃発し、かつての友人たちを心配して二人はサラエボに行くのだが…
さらに16年後、一人息子ピエトロを伴って訪れたサラエボのシーンと
回想シーンとが交互に進められます。
ジェンマという女性の、恋愛もの?不妊もの?回顧話?と不思議な思いで観てゆくと
最後の20分で度肝を抜かれる展開が。
その時初めて、色々なエピソードが伏線であったことが分かります。
底抜けに明るいと思われたディエゴの、悲しい子ども時代の思い出。
代理母を引き受けた女性アスカの、あまりにも忌まわしい経験。
それをクローゼットに隠れて見るしかなかったディエゴの、哀れな結末。
一人息子ピエトロの出生の秘密と、それに絡んだ憎しみと絶望と、そして愛。
サラエボならではの、思い出を辿る旅の果てに、また新たな旅が始まるのです。
「ある愛へと続く旅」
http://www.youtube.com/watch?v=eCSD0HqNiOQ
戦争というものは、基本的に人を殺すという悪事が正当化されているものなのだから
通常それのみにとどまらず、略奪、暴行、レイプなどあらゆる悪いことも付随します。
しかし、普通はそれは個人的な蛮行が多いのではないのでしょうか。
しかしサラエボにおいては、「民族浄化」の名の元に、組織的にレイプが行われたのです。
その被害者は5万人以上とも。
しかも、84年に冬季五輪が華々しく開催された近代国家において。
我々はやっぱり、眼を背けるわけにはいかないのだろうなあ…