1994年のリレハンメルオリンピックで、エース原田雅彦のジャンプ失敗で金メダルを逃した日本団体。
口惜しさをバネに長野五輪での金メダルを目指して頑張っていた西方仁也(田中圭)は、腰を痛めて代表選手から漏れてしまう。
裏方のテストジャンパーとして飛ぶことになるが、それは西方にとって屈辱的なものでしかなかった。
25人のテストジャンパーたちは、高校生、障害者を含む寄せ集め集団だった。
誰も見てくれず、拍手もなく、記録も残らない、彼らのジャンプ。
しかし彼らのテストジャンプがなければ、本番ジャンプは実地できない。
そして決勝当日、途中から猛吹雪となって競技の中止が進言され、そのままでは一回目を失敗した日本勢はまたメダルを逃してしまう。
25人のテストジャンパーが全員ジャンプを成功させたら試合続行ということになり、彼らは吹雪の中を踏み出した。
テストジャンパーの存在すら、私は知りませんでした。
影の立役者となった彼らの活躍だけでなく、西方の葛藤も正直な気持ちも映画は描いている。
リレハンメルでは俺が最長距離を飛んだのに…
原田が失敗しなければ、俺は金メダリストだったのに…
原田、落ちろ!また失敗しろ!とまで彼は念じるのです。
本当にこんな風に思ったの?ここまで描いちゃっていいの?と思うくらいですが、映画完成後の西方氏のインタビューを読んだら、「心の奥にしまっていた感情がそのまま映像になった」と。
聴覚障害がありながら参加した高橋選手も、唯一の女性テストジャンパーとして参加した女子高生も、実際に存在したのだそうです。
私は女だから絶対オリンピックには出られない、せめてテストジャンパーとして参加したいという彼女。
24年前はまだ女子スキージャンプの競技はなかったのですね。
この映画、本当は去年の6月に公開予定だったのにコロナで延期、今年の5月の予定が緊急事態宣言でまた延期。
ようやく先週末から公開となり、記者会見で感涙していた田中氏の姿には胸打たれるものがありました。
五輪開催に否定的な意見が多い中、このような作品を公開するのはあざといと言われても仕方ないとも思いますが、それでもビル35階の高さというスタート地点から黙々と飛び出していく彼らの姿、文句なしに泣けました。
しかし…吹雪の中、ギッシリ集まって歓声を上げる大勢の観衆たち。
いいなあああ…
公式HP 西方仁也さんインタビュー