Zooey's Diary

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コロナ世代への応援歌「私たちの世代は」瀬尾まいこ著

2023年09月03日 | 


「今でもふと思う。あの数年はなんだったのだろうかと。
不自由で息苦しかった毎日。家で過ごすことが最善だとされていたあの期間。
多くの人から当たり前にあるはずのものを奪っていったであろう時代。
それでも、あの日々が連れてきてくれたもの、与えてくれたものが確かにあった――」(帯の言葉)

コロナ禍に子ども時代を過ごした二人の女性の、当時から十数年後の成長の様子を書いた作品。
コロナで引き籠もっているうちに不登校になってしまった心晴(こはる)と、水商売をしている母に育てられ、そのことでいじめられた冴(さえ)の会話。
「私はさ、感染症で青春が奪われた、やりたいことができなかったって怒っている人が羨ましいよ」
「そう?どうして?」
「そんな風に言える子ども時代を送りたかったなって。私なんか感染症のおかげで、不登校でも目立たなくてよかった、ネットで受験までできてよかった、感染症ってありがたいと思ってたくらいだから」
「私もだよ。最初は感染症で学校生活が不自由になってしんどいと思ってたはずなのに、中学に入ってからは行事の度に気が重くて、もう少し感染症が続いたらよかったのにって思ってしまうこともあったんだ。それでいて、そう思う自分が情けなくて嫌で仕方なかった」

心晴や冴が、その時代をどんな思いで乗り越え、どんな風に成長していったか。
施設で育ち、夫を早くに亡くして天涯孤独で水商売をしているが、あくまでも明るい冴の母親。
親に育児放棄され、まともに食事も与えられずゴミ溜めのような家で育ったけれど聡明な、冴の幼友達蒼葉(あおば)。
そんな環境であり得ないだろうというキャラが堂々と登場し、彼らの逞しさに圧倒されます。
平易な文章で緩く書かれていますが、読み終わった後の幸福感が瀬尾まいこらしい、コロナ禍を経験した我々への応援歌のような作品です。



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