Zooey's Diary

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「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」

2020年08月27日 | 映画

自分の無知を棚に上げて言えば、「ホロドモール」(Holodomor)という言葉をどれだけの人が知っているのだろうと思います。
1932~33年にウクライナでスターリンによって起こされた、人工的な大飢饉のことです。
スターリンは工業化を優先し、外貨獲得のために農業収穫物を強制的に撤収したのですね。
数字については諸説あるようですが、1400万人以上が亡くなったといいます。
Wikiによれば、アルメニア人虐殺、ホロコースト、ポル・ポト派による虐殺、ルワンダ虐殺等と並んで20世紀の最大の悲劇の一つなのだそうです。


1933年イギリス人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、世界恐慌の中なぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのかと疑問を抱きます。
ロシア語ができる彼は、直接スターリンにインタビューをしようとモスクワに赴きます。
しかし彼が頼りにしていたアメリカ人記者は、直前に不審な死を遂げていた。
「ウクライナ」というヒントの言葉を得た彼は、当局の目をかいくぐって必死にウクライナの地へと向かう。
そこで彼が目にしたものは…



凍てつくウクライナの大地のあちこちに、死体が転がっている。
男たちが荷車に死体を集めて運んで行くが、ある女性の死体には幼児がしがみついて泣き叫んでいた。
と、その幼児も、ひょいと死体の山の上に積み上げられたのには驚きました。
いずれ放っておいたら死んでしまうからということなのでしょう。
穀物の収穫はスターリンに奪われ、人々は木の皮や根っこを食べていた。
ガレスが雪の森の中で休んだボロ小屋の中で、表情を失くした子供たちが食べていたものは…


男たちはパン一個を奪い合って、死に物狂いで殴り合う。
往来でボロボロの服をまとった痩せた子供たちが歌う歌に、胸をつかれます。
”飢えと寒さが家の中を満たし、隣人は正気を失い、自分の子を食べた”
ガレスをよそ者と見た子供たちは彼の前でこれを歌い、ガレスが言葉を失っている隙に、彼の荷物を奪って逃走するのです。



この映画のテーマはホロドモールだけでなく、ジャーナリスト魂についてでもあります。
あれだけの危険を顧みず、ウクライナの真実をレポートしたガレスが非業の最期を遂げ、ソ連の五カ年計画に関する報道でピューリツァー賞を受賞するも、ソ連の大飢饉を否定したNYタイムズ紙モスクワ支局長のウォルター・デュランティは豪奢な生活を送っていた。
ジョージ・オーウエルがこの映画の狂言回しをし、「動物農場」の中の一節が効果的に使われていました。
ポーランドの女性監督アグニェシュカ・ホランドの「ソハの地下水道」はホロコーストの犠牲者たちを描いた、やはり観るのに非常につらい作品でしたが、これもいい勝負というところです。
コメント (2)
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