Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「少年と犬」

2020年08月21日 | 

歌舞伎町の中国人マフィア社会を描いた「不夜城」の著者、馳星周は実は大変な愛犬家で、愛犬のためにかつて東京から軽井沢に引越し、その生活を綴ったブログを書いています。
その著者が犬を描いた小説が今回直木賞を取ったというので、楽しみにしていました。


第一章「男と犬」窃盗団の運び屋になった男は、痩せこけた犬を見過ごすことができなかった。
第二章「泥棒と犬」窃盗団を裏切り故国を目指す男は、犬を守り神にしようとした。
第三章「夫婦と犬」冷え切った関係を修復するべくもない夫婦は、犬をそれぞれ別の名で呼んだ。
第四章「娼婦と犬」風俗で男に貢いでいるのにその男に裏切られた女は、負傷した犬を獣医に連れて行った。
第五章「老人と犬」自分の死期を知っていた孤独な老猟師に、犬は寄り添った。
第六章「少年と犬」震災のショックで言葉を失くし引きこもりになった少年は、犬を見て微笑んだ。


シェパードと和犬のミックスという犬「多問」はそれぞれの章で、幸薄く、人生に疲れた孤独な人々に束の間の癒しと愛を与えます。
しかし、多聞は決してそこに安住することはなかった。
どんなに可愛がってもらっても、いつも何処か遠くを見つめている。
多聞が何を追い求めているのか、読者も探しながら章を追うことになります。


予定調和ではありますが、最終章では落涙。
釜石から熊本まで、飼い主ですらなかった少年を探し求めて犬が旅するなんて、そんなことある訳ないだろうとか、そんな賢い犬がいる訳がないだろうとか言いたくもなりますが、これは、生涯の多くの部分を犬たちと過ごしてきたという著者の、犬へのラブレター、或いは感謝状ではないかと思えてきます。
我家のタロウのような、何の役にも立たない駄犬であっても、そこにいるというだけで感謝したくなる、犬とはそういう存在なのですから。
さらっと読める、愛犬家にはたまらない一冊です。


「少年と犬」 

コメント (4)
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