凍を読み終えました。山野井夫妻の奇跡の生還の記録でしたが、日本に帰ってきたのは北朝鮮拉致日本人5人が帰国した3日後だったそうです。日本中が大騒ぎしていて、山野井夫妻のことが新聞に載ったかどうかは記憶外ですね。そのあと凍傷の手術を繰り返し、激痛に耐え4か月の入院生活を送った後は、奥多摩の自宅でリハビリを開始するという凄さです。妙子夫人は両手の10本指を全て切断。泰史氏も両手で残った指は5本。両足の指もありません。脚そのものの切断が無かっただけ良かったと言えますが、その後は1000mを超えるフリークライミングをやれるまでになりました。この本はそいういう本人たちそのものの凄さもさることながら、それをまさにその場にいたかのように描く著者の筆力にも圧倒されます。どれくらい取材を重ねたのでしょう。記憶の断片を蘇らせる、掘り返す著者の力の凄さもにも感嘆します。2年後日本人知人男性を運転手にした3人でベースキャンプを訪れます。残してきたゴミを集めるため(そこが山野井夫妻の信条)だったのですが、氷河上のキャンプ周辺はすっかりと変わっていて、缶から一つしか拾えなかったそうです。その日本人知人男性が著者だとか。
「凍」沢木耕太郎 新潮文庫