永井荷風は本当にフランスを愛していたのですね。前半はフランスにいる日本人達と娼婦達の交わりとかを中心にした短編が書かれているのですが、後半は荷風自身がフランスを離れるときの心情をそのままに書き出しているような短編が続きます。フランスを離れロンドン発日本行きの汽船に乗ったときの情景を綴っている所などは特にそう思わせます。また、付録のように荷風のクラシック談義がついているのですが、明治末期の日本にオペラを中心とした西洋音楽を紹介する使命見たいのを感じていたかもしれません。それにしては日本に戻ってからの荷風にはクラシック音楽との接点はあまり伝わってきませんね。でもドビュッシーやRシュトラウスという作曲家達を直に見てきたわけですが、そんな日本人は非常に数少ないわけで貴重な体験をしてきたといえます。
「ふらんす物語」永井荷風 岩波文庫
「ふらんす物語」永井荷風 岩波文庫