エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

梅雨の山から

2015年07月08日 | ポエム
梅雨時の山は、雲を着ている。
雲は、纏わり付くように山肌を飾る。

その風情は、素晴らしく荘厳である。



昨日と一昨日、ぼくは故郷の山梨県に出かけた。
伯母が亡くなったのだ。

父の実兄の妻だった。
父の実兄は、もう40年前に逝去している。
この伯母は、再婚もせず二人の子どもを育て上げた。
着物姿の粋な美人で、花が大好きだった。
庭には、蛍袋や半夏生が咲き乱れ、桔梗の紫が鮮やかであった。

この伯母は、花の季節に伯父の下へ旅立った。
告別式の後、初七日の席で・・・献杯の音頭をとった。
「今日は、七夕です。伯母ちゃん伯父ちゃんと会って仲良くしろしね!献杯!」
ぼくは、山梨の方言でそう言って杯を捧げた。



この山肌を縫う雲は、中央高速道の景色である。
時折雨がパラついた。

伯母は泣いてはいない・・・。
残された、子ども二人が泣いているのだ。







「山の襞ことごとく雲木菟の声」







山の中から木葉木菟(このはずく)の声が届いた。
久しぶりの、木菟の声であった。



山の景色の反対側は、街である。
この電線の下は、葡萄の棚である。

とまれ・・・俳句を始めてから、はじめての木菟の声であった。
伯母が、聴かせてくれたのかもしれない。



      荒 野人


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