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エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

句集「あゆちの泉」を読んでVol,2

2012年11月23日 | ポエム
今日も星川さんの句集「あゆちの泉」鑑賞である。
俳句結社「秋」の同人である。



句集の函の裏である。
星川さんの自選10句が書き出されている。

1998年以降の俳句である。



   木の骨晒す
    ふらここを漕ぐ少年に夜が更ける
 ブランコのたゆたう揺れはどこかしら哀しみが付きまとっている。そのブランコに少年が乗って漕いでいる。それをじっと見つめ続けていたら、いつの間にか周囲は静寂に包まれている。
夜が更けてきた。それにしても、この少年は何故ブランコを漕いでいるのだろう。
こんな夜更けまで・・・。
そんな情景の中に、哀しみが沁みこんできます。



  一塊の意志
   山椒の芽ぽんと叩ける手の若さ
 山椒の若い葉は、ぽんと叩くとその香りが際立ってくる。
 料理に添えられたり、お吸い物に浮かんでいたりすると、それだけで嬉しい。ましてや・・・ぽんと叩いた料理人が若ければ余計勢いが伝わってくるものだ。山椒の芽は爽やかで香しい。若かった記憶が蘇えってくる和食は、やはり私に合っていると一人合点する。



  しずかな木
    今生の色か湖中に木々芽吹く
 新緑の季節が巡ってきた。
 だがしかし、母はもういないのだ。その代わりと言っては可笑しいけれど、家族は無事に成長している。
 母は、この湖の面に映る新緑となって季節を廻らせ、残した家族の成長を見守っているのだ。
 芽吹きの季節、それは母への追憶に繋がり、追悼の心を改めて芽生えさせてくれるのだ。



 そして、最後の一句・・・。
   溶暗の春灯すなはち母なりし
 自分を生み、育ててくれた母の愛こそ無償の愛でありアガペーである。
人を大切にする心、自分の原点をいつだって見つめなおしてこれからも俳句を詠むのだ。
 そんな堅い思いが伝わってきます。
 独りよがりになりがちな詠むという作業を、周りを大切にしながら続ける。そんな俳人としての決意が伝わってくる結句として受け止めさせて頂きました。

 これらの句は、私の琴線を揺らし、わたしはその余韻を楽しむ事が出来たのであります。
 どれをとっても合点のいく句であり、暗喩の妙も見事であります。



 映像と色彩。
 沈黙と音。
 哀しみの深さ。
 若々しい明日への希望。
 それら全てへの憧憬。

 こうした想いの深さが巧みに作句に生かされており、写生から人としての内面へと昇華する様が手に取るように見えて参ります。

 星川さんの句集を拝読しながら、あたかも草千里に遊ぶ心地よさを味わわせて頂いたのであります。
そう言えば、星川さんの師系を辿ると詩人、三好達治に至るとか。正に詩情豊かな俳句であります。
 今後とも豊かな感性と洞察力を以て詠み続けられますようご期待申し上げるものであります。


星川さんの句集「あゆちの泉」上梓に寄せて

  君詠める一筋の糸冬紡ぐ     野人

以上、星川さんへお出しした私信を敷衍しつつ皆さんに紹介致しました。
これからも「しなやかに」「たおやかに」俳句を詠まれますよう祈念しつつ筆をおきます。



星川さんに私信を投函する直前、からまつの由利主宰から一通のメールが届きました。
野人の手紙に着けて星川さんに送って欲しい、との事でした。

ぼくは、主宰のメール全文を別封筒に入れ、同封して送りました。
概略、佐怒賀主宰の句集を優先させて欲しい、事。
次いで、今後句の道の同行者として野人と親しくして頂ければ幸せです。ご活躍を期待してい
ます。
と添え書きされておりました。

有難いことです。
尚、主宰が星川さんの句集に寄せて送られた句は、以下の通りです。

  暁やがて栄光の道冬初め   雪二

でありました。



       荒 野人


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