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エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

貝を漁る生き方・・・縄文に生きるという事

2010年12月23日 | ポエム
貝塚は、縄文海進によって関東の内陸に無数に残された。
貝塚は、縄文人のエネルギーを今もなお内包しているといえる。

まさにパワースポットであると言っても過言ではないのである。





        貝を漁る
         (貝塚からの啓示)


      貝は
      塩を含んだ水の中で
      漁られた
      浜の
      脆く掌から
      こぼれ落ちる
      そのサラサラしたものは
      貝を隠し
      小さな生き物を
      隠したけれど
      誰もが
      躊躇う事もなく
      貝を漁った
      貝は
      生で食べても
      煮ても
      焼いても
      旨かった
      集落の誰にとっても
      貝は
      生きる糧であって
      貝の量こそが
      集落の力であった
      貝の殻は
      住居の中に山積みされた
      やがて住居は
      貝殻に埋もれ
      放置され
      見捨てられた
      そうして
      貝殻の捨て場所は
      円形に連なり
      集落の巨大さを誇示した
      時として
      貝殻の中には
      壊れた生活用具も捨てられ
      寿命の尽きた巫女も
      埋葬されたのだった
      巫女はそうされることで
      未来永劫
      集落の生活の糧を
      希求する祈りの対象になり得た
      巫女は死してなお
      集落を守るのだ
      巫女の社会的地位は
      このように
      貝殻とともに
      担保された
      貝を隠す
      そのサラサラとこぼれ落ちるものは
      掌で掬われ
      小さな凸部となって
      集落の入り口の両端に置かれた
      その盛られた凸部の間から
      誰も侵す事はできず
      集落は
      守られた
      貝は
      やがて
      神聖な尊崇を受けた
      巫女も尊崇を一身に浴び続け
      集落を
      束ねた
      貝殻の山の中から
      巫女はいつだって蘇り
      輪廻を繰り返しつつ
      集落に君臨する存在となった
      巫女は
      クンリンすることを
      欲しなかったが
      集落の掟が
      クンリンすることを求めた
      巫女には
      小さな貝が
      山のように積まれ
      捧げられた
      だがしかし
      その連続する貝を捧げる行為は
      貝が漁れなくなると
      途絶える運命にあった
      連綿として築いた
      貝殻の山は
      見捨てられ
      集落は
      新たに
      別の場所に形作られる運命にあった
      見捨てられた集落跡は
      単なる貝殻の捨て場に堕落した
      そのとき
      巫女は
      間違いなく陳腐化していた
      新たな系統の巫女が誕生するのだ
      数千年にわたる
      貝殻とのつき合いは
      集落に
      脱皮を求めたが
      貝への依存は
      絶えることはなかった
      そのとき
      巫女もまた
      新たな血脈から産まれた
      ヒトの
      心がそうさせたのだ
      貝から抜け出せない多数のヒト
      死してなお
      貝を希求した
      やがて見捨てられる集落の運命は
      いま
      というときに
      一顧だにされないのだ
      そうあるべき
      などという概念は
      生きている内に醸成された
      怠惰の象徴でしかない
      陳腐であり
      堕落である

      まぎれもない
      生き物の
      記録である





この森で生き、交わった。
縄文人の血は、今もぼくたちの中に脈打ち生き続けている。



この場所で貝を食べ、子どもを作ったのであった。

貝塚に葬られた人もいた。
貝塚に葬られた獣もいた。
貝塚に葬られた命もあったのである。







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