平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

鎌倉殿の13人 第39回「穏やかな一日」~実朝の無力と孤独と不安……

2022年10月17日 | 大河ドラマ・時代劇
 大海の磯もとどろに 寄する波
 破(め)れて砕けて 裂けて散るかも
               源実朝

 この歌を見るかぎり、実朝(柿澤勇人)は自分の破滅を予感していたようだ。
 権力闘争の中で殺されるかもしれない予感。

 実朝は自らの無力も感じていた。
 お飾りとしての鎌倉殿。
 和田義盛(横田栄司)の上総介就任の否定。
 反対したのに平盛綱(きづき)が御家人に昇格。
「わしはいてもいなくても同じではないか?」

 そして孤独。
 泰時(坂口健太郎)への思い。
「春霞たつたの山の桜花 なおぼつかなきを知る人のなき」
 妻・知世(加藤小夏)への申し訳なさ。

 実朝は無力で孤独だ。不安でもある。
 そんな実朝の救いは「歌」であったようだ。
 歌だけが自分の生きている証だった。

 今回は実朝の物語であった。
 その心の中に思いを馳せると哀しい。
 内面はすごく豊かな人だったと思う。
 それが「歌」として結晶した。
 …………………………

 義時(小栗旬)は完全に闇落ちか?
 僕は義時は主人公なので、自分の理想を実現するために悪者を引き受けていると考えていた。
 でも平盛綱の御家人昇格は完全に権力の濫用だ。
 力を維持するために北条家の者を積極的に国司にしているし……。
 頼朝(大泉洋)亡き後、『鎌倉殿の13人』を置いた昔のバランス感覚はどこに行ってしまったのか?
 13人の合議制ではうまくいかないことを目の当たりにして、自分が実権を握ろうと思ったのか?
 義時は「板東武者の頂に北条が立つ」ために行動していると言っていたが。

 今回で義時の心の中がよくわからなくなって来た。
 さて、三谷幸喜さん、どう決着をつける?

※追記
 冒頭の和歌。
「大海の磯もとどろに 寄する波 破(め)れて砕けて 裂けて散るかも」
 この歌を実朝は間違っていたと言って泰時に渡したが、
 泰時との恋が「砕けて散った」と解釈している人がいた。
 なるほど。
 これは深い。
 この解釈の方が物語に深みが出る。


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「純愛」の人実朝 (TEPO)
2022-10-17 16:01:20
>今回は実朝の物語であった。

印象的だったのは「私には世継ぎをつくることができないのだ」という実朝の知世へのカミングアウト。
「世継ぎをつくることができない」理由には様々な可能性があり、また露骨な表現はされていませんが暗示されているところから見て、実朝は同性愛者だったようです。
同じ「三代将軍」徳川家光も同性愛で知られていますが、彼は世継ぎ(家綱、綱吉)を得ることができました。
実朝は、女性に全く性愛を感じないタイプだったのでしょう。
だからこそ、カミングアウト後、千世の抱擁に実朝が抱擁で応える「ラブシーン」は何とも悲しい。
「私には応えてやることができない」
千世の優しさに感動して優しさで応答した、ある意味では「真実の愛情」でありながら、そこに性愛の要素はない。
もっとも、「性愛を離れた優しさ」を女性に示すことのできる実朝の「資質」は、側室候補として送り込まれた女性にも向けられ、彼女の「身の上相談」に応じることで泰時の弟(比奈の子)朝時の不品行を知ることになります。

実朝の恋愛感情は、恋の歌を与えたことから見ても泰時に向けられていたようです。
弓の試合でチームの勝利を抱き合って喜んでいた泰時と平盛綱の主従に、実朝は複雑な眼差しを向けていましたが、おそらくは嫉妬でしょう。
そのことによる盛綱に対する反感があったからこそ、実朝は盛綱を御家人に取り立てることに抵抗したのでしょう。
そうした事情をまったく知らない義時にとって、「白紙」で「ぽっと出」の筈の盛綱を実朝が拒否することは予想外のことだったと思います。

ところで、以前から鶴丸の将来が気になっていましたが、「平盛綱」と聞いて内管領家の祖であることが分かりました。
内管領とは得宗家(義時直系の北条本家)の執事であり、後代になると主筋である執権をしのぐほどの権勢をもつことになります。
有力御家人であった安達泰盛一族を滅ぼし(「霜月騒動」)、さすがに脅威を覚えた時の執権北条貞時に滅ぼされた平頼綱の名前は覚えていました。
名前に共通な字が多いので祖先だとピンときました―頼綱は盛綱の孫だそうです。
鎌倉幕府の実権が将軍から執権へと移っていったことは比較的よく知られていますが、さらにその実権が執権から内管領へと移っていったことはあまり知られていません。
鎌倉幕府末期の内管領長崎円喜―この頃は長崎氏を称していた―も盛綱の曾孫だそうです。
大河ドラマ「太平記」を視聴していたころ、有力御家人であった高氏ら足利家が、北条家ならいざ知らず、北条の家臣(つまり陪臣)に過ぎない長崎円喜に対してなぜペコペコしなければならなかったのか、不思議でした。
八重さんが命に替えて助けた人物、それなりに「大物」だったわけです。
無論、盛綱の代では普通に泰時の「忠臣」だったでしょうが。
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そうそう! (コウジ)
2022-10-17 18:06:31
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>弓の試合でチームの勝利を抱き合って喜んでいた泰時と平盛綱の主従に、実朝は複雑な眼差しを向けていましたが、おそらくは嫉妬でしょう。
そうそう!
このシーンがありましたね。
これに加えて
「春霞」の和歌が恋の歌であることが示され、知世への告白になり、泰時に「大海」の和歌を渡し、実朝の思い人が泰時であることが視聴者にわかる。
まさにミステリードラマを見ているような構成でした。

知世さんは素敵な女性ですよね。
同性愛者である実朝をしっかり受け入れています。
人との繋がりは性愛だけではないので、ぜひ信頼し合える関係でいてほしいものです。

盛綱に関して教えていただき、ありがとうございます。
「太平記」はほとんど見ていないので、そのことが悔やまれます。
鶴丸に関しては、北条家の家人・尾藤景綱になるのではないかと考察されている方もいました。

実朝の解釈といい、このあたりは作家の想像力がいくらでも発揮できる所ですよね。
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