平成エンタメ研究所

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蒙求(もうぎゅう)~「光る君へ」のまひろが娘・賢子に教えていた中国の故事集

2024年08月03日 | 大河ドラマ・時代劇
「光る君へ」第29回を見ていたら、まひろが娘・賢子にこんな読み聞かせをしていた。

「王戎簡要。裴楷清通。孔明臥龍。呂望非熊……」

 これを『蒙求(もうぎゅう)』と言うらしい。

 ウィキペディアに拠れば、
『蒙求は、伝統的な中国の初学者向け教科書である。
 古人の逸話を集めて韻文で並べた故事集。
 日本でも平安時代以来長きにわたり読まれた。
 現在でも広く知られる「蛍雪の功」や「漱石枕流」などの故事は
 蒙求によって学ばれることが多い』

 なるほど、こうやって歴史と人物を学んでいくのか。

「王戎簡要」→王戎は物事の本質をよくつかむ人。
「裴楷清通」→裴楷は清々しく物事に精通している人。
 これでワンセットになっている。
 王戎も裴楷も「部下にするのにふさわしい人物像」というわけだ。

「孔明臥龍」「呂望非熊」
 これらは日本人にも馴染みのある人物だ。
 孔明は「三国志」の諸葛孔明。
 呂望は太公望。

 これの意味する所は──
「孔明臥龍」→孔明は雌伏している龍である。
「呂望非熊」→あなたがこれから会う人物(呂望)は熊ではないが、優れた人物である。

「蒙求」ではこのような形で、百人以上の人物が紹介されている。
 ………………………………………………

 やっぱり漢文はいいな。
 音読して実に心地いい。
 硬質で完結で背筋がピンと伸びる。
 ひらがなの和文だと、やわらかくてヘナヘナする←個人的感想。

『声に出して読みたい日本語』などの著者・明治大学の齋藤孝さんは、
 日本の教育から「朗読」「暗記」がなくなったことのマイナスを主張しているが、確かに。

「音読して暗記して言葉を体の中に叩き込む」
 これって大切なことだと思う。
 叩き込まれた言葉は自分の芯になる。
 折にふれて漢詩や詩をそらんじるのは風趣である。
 

※追記
「蒙求」の四文字は人物紹介の入口だ。
 この後に詳細な人物紹介が続く仕掛けになっている。

 たとえば「呂望非熊」の太公望の場合は──
『六韜曰。
 文王将㆑田。
 史編布㆑卜曰。
 田㆓於渭陽㆒。將㆓大得㆒焉。
 非㆑龍非㆑彲。非㆑虎非㆑羆。兆得㆓公侯㆒。
 天遺㆓汝師㆒。以㆑之佐㆑昌。施及㆓三王㆒』

 まだ紹介文は続くが、ここでカットして和訳すると── 

『六韜にいう。
 文王が狩猟に出かけようとした。
 史編が占って言った。
 渭陽(いよう)の地に狩をすれば、大いに得るものがありましょう。
 それは龍でも彲(みずち)でもなく、虎でも羆でもなく、占いには公侯たるに相応しい人物を得るとあります。
 天があなたに師たる人物をおくり、これを以てあなたを補佐し、その恩恵は三代に及ぶでしょう、と』

 まず四文字で覚えさせて、後に詳細な人物像を紹介する。
 すぐれた教育システムだと思う。


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