推理小説の視点について松本清張の「地方紙を買う女」を使って考えてみる。
物語は交互にふたりの人物の視点で描かれる。
ひとりは地方紙を買う女、潮田芳子、
もうひとりは、その地方紙で小説を連載している小説家・杉本隆治だ。
1.芳子の視点
地方紙「甲信新聞」を購読するため、現金書留を送る芳子。
芳子は東京に住んでいて、甲信新聞をこの様な形でしか購読できない。
甲信新聞を読みたいと思った理由は、偶然旅先の食堂で甲信新聞を読み、そこで連載されている小説の続きを読みたいから。
芳子はその理由も一文添えて、現金書留を送った。
そして送られてくる甲信新聞。
芳子は新聞を読み続けるが、ある記事が出ると読むのをやめてしまう。
そして「もう小説がつまらなくなったから」と言って、購読のお金を送るのをやめてしまう。
2.隆治の視点
小説がつまらなくなったからと言って、購読をやめられるのは心外の隆治。
小説はむしろ面白くなっている。
いろいろ考えて、隆治は思いにとらわれる。
芳子が甲信新聞を購読したのは小説を読みたかったからでなく、別の記事を読みたかったからではないのか?
隆治は甲信新聞が扱っている事件で芳子が住んでいる東京と関連している事件を洗い出す。
そしてある東京のカップルが、この土地で心中事件を起こした記事に気づく。
隆治は芳子のことを興信所に調べさせ、心中した男の方と関わりのあったことを確認し、自分の推理が正しかったことを確認する。
恐らく芳子はこの心中事件に関わっているのだろう。
芳子は薬でふたりを殺害した。
だが、本当に死んだかどうかが分からなかったので、地方紙の記事で確認しようとした。
3.芳子の視点
芳子が勤めているクラブへやって来る隆治。
芳子が読んでくれた小説の作家であることを告げ、心中事件のことを語る。
クラブでの客とホステスとしての会話だが、隆治が自分のしたことに気づいたのではと不安になる。
再度、クラブへ来る隆治。
彼は心中したふたりと知り合いだった。心中する当日、写真も撮ったと偽装した写真を芳子に見せる。
芳子を揺さぶろうとしていることに芳子は完全に気づく。
芳子は隆治の女友達と3人で伊豆に遊びに行こうと持ちかける。
4.隆治の視点
知り合いの編集者の女性、芳子と伊豆に行く隆治。
芳子が自分の作ってきた寿司を食べさせようとした時、やめろと言う。
寿司には毒が入っていて、編集者と自分に食べさせ、また心中に見せかけようとしているのだと芳子に告げる。
笑う芳子、芳子は寿司を食べるが平気だった。
5.芳子からの遺書
遺書で語られる事件の真相と動機。
そして伊豆で自分が平気だった理由が語られる。
この様に、この作品は芳子と隆治、ふたりの視点で描かれることで、どんどん面白くなっている。
1と2で、甲信新聞を購入した芳子の表向きと理由と裏の本当に理由が明らかにされ、3と4で芳子と隆治が駆け引きをする。
そして5の真相開示(遺書・手紙という形で)。
視点が変わることで物語を推理とサスペンスのあるものにした見事な作品だ。
モノローグ(単一視点)で書かれる物語にも恐怖とサスペンスがあるが、視点を変えることでも駆け引きなど、ワクワクする物語が作れる。
物語は交互にふたりの人物の視点で描かれる。
ひとりは地方紙を買う女、潮田芳子、
もうひとりは、その地方紙で小説を連載している小説家・杉本隆治だ。
1.芳子の視点
地方紙「甲信新聞」を購読するため、現金書留を送る芳子。
芳子は東京に住んでいて、甲信新聞をこの様な形でしか購読できない。
甲信新聞を読みたいと思った理由は、偶然旅先の食堂で甲信新聞を読み、そこで連載されている小説の続きを読みたいから。
芳子はその理由も一文添えて、現金書留を送った。
そして送られてくる甲信新聞。
芳子は新聞を読み続けるが、ある記事が出ると読むのをやめてしまう。
そして「もう小説がつまらなくなったから」と言って、購読のお金を送るのをやめてしまう。
2.隆治の視点
小説がつまらなくなったからと言って、購読をやめられるのは心外の隆治。
小説はむしろ面白くなっている。
いろいろ考えて、隆治は思いにとらわれる。
芳子が甲信新聞を購読したのは小説を読みたかったからでなく、別の記事を読みたかったからではないのか?
隆治は甲信新聞が扱っている事件で芳子が住んでいる東京と関連している事件を洗い出す。
そしてある東京のカップルが、この土地で心中事件を起こした記事に気づく。
隆治は芳子のことを興信所に調べさせ、心中した男の方と関わりのあったことを確認し、自分の推理が正しかったことを確認する。
恐らく芳子はこの心中事件に関わっているのだろう。
芳子は薬でふたりを殺害した。
だが、本当に死んだかどうかが分からなかったので、地方紙の記事で確認しようとした。
3.芳子の視点
芳子が勤めているクラブへやって来る隆治。
芳子が読んでくれた小説の作家であることを告げ、心中事件のことを語る。
クラブでの客とホステスとしての会話だが、隆治が自分のしたことに気づいたのではと不安になる。
再度、クラブへ来る隆治。
彼は心中したふたりと知り合いだった。心中する当日、写真も撮ったと偽装した写真を芳子に見せる。
芳子を揺さぶろうとしていることに芳子は完全に気づく。
芳子は隆治の女友達と3人で伊豆に遊びに行こうと持ちかける。
4.隆治の視点
知り合いの編集者の女性、芳子と伊豆に行く隆治。
芳子が自分の作ってきた寿司を食べさせようとした時、やめろと言う。
寿司には毒が入っていて、編集者と自分に食べさせ、また心中に見せかけようとしているのだと芳子に告げる。
笑う芳子、芳子は寿司を食べるが平気だった。
5.芳子からの遺書
遺書で語られる事件の真相と動機。
そして伊豆で自分が平気だった理由が語られる。
この様に、この作品は芳子と隆治、ふたりの視点で描かれることで、どんどん面白くなっている。
1と2で、甲信新聞を購入した芳子の表向きと理由と裏の本当に理由が明らかにされ、3と4で芳子と隆治が駆け引きをする。
そして5の真相開示(遺書・手紙という形で)。
視点が変わることで物語を推理とサスペンスのあるものにした見事な作品だ。
モノローグ(単一視点)で書かれる物語にも恐怖とサスペンスがあるが、視点を変えることでも駆け引きなど、ワクワクする物語が作れる。
コメントありがとうございます。
僕はその映像を見ていないのですが、名作だそうですね。
松本清張さんの作品は今でも映像化されていますが、色褪せませんね。
きっと人間をしっかりと描いているからなんでしょうね。
コメントありがとうございます。
僕は安奈さんの「地方紙」を見ていないのですが、小学生の時、ご覧になって印象に残っていらっしゃるとはすごい作品なんですね。
原作にはない温室の花々という脚色もすごい。
ぜひ見てみたいです。
松本清張作品は社会性もそうですけど、骨組みがしっかりしているので映像にアレンジしやすいんでしょうね。
小学生のときテレビで見て印象に残っています。
最後、ヒロインが温室(?)の花々に囲まれながら
毒をあおって死ぬんですが、そのときの、どこか
ほっとしているように安らかな死に顔をしていた
安奈淳さんがとても美しくはかなげで、
本当に悲しくかわいそうに思えて、子供心に
忘れられないシーンでした。
清張作品は、社会的に恵まれない人の目線で描く事が多く、映像化しても格段のリアリティがありますよね。
電話をするのに小銭が何もなくて盗んだ万札を駅で両替しようとするのですが、ニュースを見ていた駅員に
気付かれてしまうという話でした。
もう何年も前だと思います。最近は今やっているドラマをすぐ再放送するので過去の名作をやってくれたらいいのになぁと思います。
コメントありがとうございます。
清張作品は社会の現実に根ざした作品が多いですね。書いていらっしゃった10円玉のことは詳細はわかりませんが、貧富の差を描いているのでしょうか?
今、清張さんが生きておられたら、どんな現代を描くのかも興味深いです。
また同じ社会派では「華麗なる一族」の山崎豊子さん。今は社会と人のドラマを描ける作家さんは少ないですね。だから清張作品、山崎作品がテレビドラマで作られるのでしょうか?
清張作品では確か十円玉という、盗んだ万札しかなくて公衆電話をかける為に駅で両替をしてしまうという話で。清張作品を人の心の一瞬の隙を突いてくるものが多い気がします。
清張作品ではないのですが、いしだあゆみさん出演で、地方に家を買った家族の夫が浮気をしていて家に帰らず、慣れない土地でノイローゼのようになってしまって子供と心中するお話も印象に残っています。
何年経っても心に残るドラマを最近見ていないような気がします。
コメントありがとうございます。
>今の土曜ワイド劇場は殺人が主流で昔の文芸作品のようなものがなくなって悲しいです。
そうですよね。
推理作品でもとおりいっぺんの人間像・犯人像でなくもっと突っ込んだ人間像を見てみたいですよね。
ますます昔の「地方紙」を見たくなりました。
今の土曜ワイド劇場は殺人が主流で昔の文芸作品のようなものがなくなって悲しいです、どんどん再放送してくれたらいいな~と思っています。
小説家役の方が殺される!?
なるほど2時間ドラマにするにはそんなエピソードを加えなくてはならないのですね。
見逃して悔しいです。
「わるいやつら」は原作と同時進行で見ているのですが。
>097さん
コメントありがとうございます。
原作と映像の比較は折に触れてやっていきたいです。松本清張さんの作品は「砂の器」などもそうですが、映像にしやすく、膨らませやすいのかなとも思いました。
昨夜テレビドラマを観て、原案になった小説が気になっていましたが、この記事でよく判りました。
ありがとうございます!!
この記事のヒット数がやたら多いので確認してみたら、昨日ドラマをやっていたのですね。
小説家は田村高広さん。
見てみたかったです。再放送やりますかね?
20年前の作品と見比べるというのも大変ぜいたくな作品の見方ですね。
うらやましいです。
地方紙に連載小説を細々と書いているしがない小説家を好演していました。うらぶれた小説家の役作りは秀逸でした。
私としては、脚本、構成は20年前の作品がサスペンス性があったと印象です。
個人の好みですが・・・
コメントありがとうございます。
今後ともいい短編を読んでいきたいと考えています。
また、ご指摘ありがとうございます。
早速、訂正させていただきます。
それと、芳ベエの持参したものは寿司ですよ。
コメントありがとうございます。
実写ドラマ化ですか。安奈淳さんですか。
ぜひ見てみたいですね。
小説と映像は違うメディアなので、この辺を映像のスタッフがどう描いたか、大変興味があります。