平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」(伏見つかさ・著)~オタクの世界は楽しい。こっちに来なよ!

2016年11月26日 | 小説
 ひさしぶりに『俺妹』を読み返した。
 第1巻のオフ会で出会う桐乃と黒猫。
 そこで、ふたりは互いの大好きなアニメをめぐって、こんなケンカを始める。

「『maschera~堕天した獣の慟哭』──ストーリー・作画ともに今期最高峰のアクションアニメよ。毎週木曜日の夕方にやっているから、ぜひとも観て頂戴」
「あ、それって、あの──メルルの裏番組じゃない? 確かオサレ系邪眼厨二病アニメとか言われてるやつ」
「──聞き捨てならないことを言うのね、あなた、メルルって、まさか『星くず☆ういっちメルル』のことかしら? バトル系魔法少女なんて、いまさら流行らないのよ。あんなのは超低脳のお子様と、萌えさえあれば満足する大きなお友達くらいしか観ない駄作」
「その言い草だとメルル観てもいないでしょ。つーか一期のラストバトル観てたら、絶対そんなふざけた口きけるはずがないからね! あーかわいそ! アレを観てないなんて!」
「あなたこそ口を慎みなさい! 何が厨二病アニメよ。私はね、その漢字三文字で形成される単語が死ぬほど嫌いだわ。ちょっとそういう要素が入っているというだけで、作品の本質を観ようともせずにその単語を濫用しては批判する蒙昧どもね。あんたもそんな豚どもの一匹なのかしら?」

 一部、抜粋しての引用だが、何とも壮絶な口ゲンカ。
 オタクは好きなものをけなされると、こんなふうに反論するのである。
 それはアイドルオタクでも同じで、<AKBとハロプロ><AKBの支店どうし><48グループと坂道シリーズ>がそれぞれにdisり合っている……(泣)
 このふたりの口ゲンカに対して、一般人で桐乃の兄である主人公(語り手)は圧倒され、ツッコミを入れる。
 だが、やがて考えを改めて、こんな感想を持つ。

★桐乃と黒猫のよくわからん罵り合いを聞きながら、この数時間のことを反芻してみる。
 今日、俺は桐乃以外のオタク連中に初めて触れたわけだが……正直なところ、想像してたのとは大分違っていたんだよな。

★当たり前のことを言うが、それは『大好きな趣味を持っている』という、ただそれだけのことなんだよな。そう、それだけのことなのさ。R&Bが好き、バスケが好き、ミステリーが好き、書道が好き──そういうのと何にも変わらねえ〟

★いまも俺の脇で桐乃と黒猫が、ベラベラ喧嘩ごしで、たぶんアニメの話をしているけどさ、それってカラオケボックスで、夢中でカリスマアイドルの話をしてるのと、どう違う? 洒落たカフェの片隅で、セレブが恋愛小説の話をしてるのと、どう違うんだろうな?
 たぶんだけど……たいした違いはないと思うんだよ、俺は。違うかな?

 そして、こんな最終的な感想。

★今日の出来事をもう一回思い出してみれば、よーく分かる。
 オフ会やってた、さっきのメイド喫茶にしろ。祭りみてーだった、あの(秋葉原の)大通りにしろ。でもってこの二次会にしろだ。
 だって楽しそうなんだもんよ。
 同じモンを好きなやつらで集まって、騒いで、遊んで──
 混ざれないのが、悔しくなってくるくれえだよ。
 世間体が気になる? 偏見がおっかない? よーし、それじゃあオマエもこっちに来いよ。
 さあ俺らと一緒に、大騒ぎして遊ぼうぜ──そんなふうに手をさしのべられているような気がするんだな。

★こいつらは望んでここにいるんじゃねえかな?
 仲間を捜してここに来た、桐乃みてーに。
 だってちょっと見てみろよ、この桐乃と黒猫のギャーギャーうるせー言い争い。
 出会ったその日に、こんだけ本気で深い喧嘩ができるって、それはそれでスゲーと思わないか?
 で、それって……こいつら二人の間に、強く通じ合う『大切なもの』があるってことだと思うんだ。
 ………………

 ここまで読んで、涙を流さないオタクはいないだろう。
 見事にオタクの気持ちを代弁してくれた。
 僕がアニメオタクだった頃の世間の目は冷たかったからね~。
 もっとも現在は一億総オタク化で、アニメなんかはしっかり市民権を得たけれど。

 では最後にもう一度、主人公の言葉を繰り返しましょう。

〝世間体が気になる? 偏見がおっかない? よーし、それじゃあオマエもこっちに来いよ〟


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