平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

真田丸 第47回「反撃」~望みを捨てぬ者だけに道は開ける

2016年11月28日 | 大河ドラマ・時代劇
 真田丸を壊され、堀を埋められて無力化した大坂城。
 さすがの幸村も心が折れた。
「策はない。もはや、このいくさ勝ち目はなくなった。申し訳ない」
 幸村は最後の最後まで辛抱強く戦ったんですけどね。
 城を出ての壮大な作戦を否定されたにもかかわらず、真田丸を造って敵を撃退。
 しかし、大坂城の優柔不断、大蔵卿(峯村リエ)の浅慮、家康(内野聖陽)のしたたかさに負けた。
 幸村は戦術家、軍略家であったが、〝政治家〟ではなかった。
 浪人ゆえ大坂城での権力、発言力も弱かった。

 しかし……。
 そんな心の折れた幸村に後藤又兵衛(哀川翔)らが力を与える。
「行く場所がないやつらがここに集まったんじゃないのかよ!」
「何をのんびりしてんだ。早く策を建ててくれよ!」
「考えろ。どうしたら勝てるか考えるんだ!」
「徳川にひと泡吹かせましょう!」

 そして締めの言葉──
「望みを捨てぬ者だけに道は開ける」

 これが三谷幸喜さんのメッセージなんですね。
 『古畑任三郎』の「再会」では、妻に裏切られて自殺を考えた作家・安斎(津川雅彦)に古畑はこう言った。
「たとえ明日死ぬとしても、やり直してはいけないって誰が決めたんですか」
 映画『マジックアワー』では、
「マジックアワーをのがしたらどうすればいいか知ってるか?
 簡単なことさ、次の日まで待てばいいのさ。やめるのは早過ぎる。
 わたしだって待っているのさ、次のマジックアワーを。
 このままくたばってたまるか」

 どんなにどん底でも、最後の最後まで諦めずに抗う。
 この姿勢は三谷幸喜作品の中で、さまざまな形を取りながら一貫している。
〝どうしたら勝てるか考えよう〟
〝いくらでもやり直せる〟
〝このままくたばってたまるか〟
 何て素敵な言葉なのだろう!
 ………………

 ディティルについて書くと、大蔵卿は浅慮だよな~。
 完全に家康の手のひらの上で踊らされている。
 幸村は、「戦えぬわれらに家康が約定を守るとお思いか!」と叱ったが、よくぞ言ってくれたという感じ。
 もっとも人間の世の中って、他人を簡単に信じてしまう善良な人って、悪い奴にしてやられるんですよね。
 欲望で闘っている分、悪は善より強い。
 原発事故で福島の人はひどい目に遭っているのに東電幹部は関連会社に天下りして優雅な暮らしをしている。
 最近になって、検察審査会が機能して、やっと起訴になった。
 有罪になるかどうかはわからないけど。

 きり(長澤まさみ)は〝その場をかき回し、流れを変える〟役割(笑)
 それでやったのが、「足が吊りましたぁ!」(笑)

 昌幸(草刈正雄)は〝義の人〟だったのか……(笑)
 武田の領地を取り戻すために戦い、そのためにはどんな汚い手でも使う男。
 ものは言いよう。
〝汚い手〟という言葉も〝したたか〟〝戦術家〟という言葉に言い換えれば、カッコよく聞こえる。

 淀(竹内結子)は絶望の縁にいる。
 昔の茶々に戻って幸村の胸の中で、
「もう、この世はたくさんじゃ……」
 幸村は淀を絶望から引き戻し、もう一度、生きてみようと思わせるために戦っているのかもしれない。


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怖い女たちと愛すべき男たち (TEPO)
2016-11-28 11:31:49
今回は女性の「怖さ」が一つのテーマだったように思います。
まずは、今回「一人勝ち」した阿茶局。
これまでも家康の側にいるときは本多正信と双璧の形だった策士ならぬ「策女」だったので当然と言えば当然。対する
>大蔵卿は浅慮だよな~。
これまでも常に織田有楽斎と同調していましたが、内通者である有楽斎とは違って彼女については「愚か」としかいいようがない。
公式HPに演ずる峯村リエさんのインタビューがありましたが、監督に「見ない方が良い」と忠告されたSNSの反応を見てしまい、「へこみました」とのことでした。峯村さんによれば、大蔵卿の心は「よそ者」の牢人衆に対する恐怖と(淀の信頼をめぐっての)幸村に対する嫉妬ということのようです。

「怖い女」のもう一つの場面は、信之が小野お通に膝枕しているところに稲たちが乗り込んできたところ。
怖いと思ったのは妻二人ではなくお通の方。
「1時間いくら」で開業している現代の心理カウンセラーと同じ事を軽いお色気(膝枕)つきでやっていただけですが、営業であることを隠して、純情な信之を「色恋モード」で泳がせていたところが怖かったと思います。
演ずる八木亜希子さんの本職はアナウンサーだそうですが、三谷氏は彼女をよく女優として起用するようで、正月の「オリエント急行殺人事件」で演じていた「虫も殺せぬようなクリスチャンの女性」とは随分と趣の違う「したたかな女性」像でした。

>そんな心の折れた幸村に後藤又兵衛らが力を与える。
この場面の背景には「幸村は俺たちの命を預けるに足る男か」と問われた際の作兵衛の証言が効いていたと思います。
単純に幸村を賛美するのではなく、「知らん」からはじめて率直に語った作兵衛の語り口に又兵衛らは得心したのでしょう。
私好みの場面には違いありませんが、今ひとつのめり込みにくいのはこの先の歴史は誰もが知っているから。

>幸村は淀を絶望から引き戻し、もう一度、生きてみようと思わせるために戦っているのかもしれない。

私も、最終回は幸村と淀が主役となるような気がしています。
そしてきりは最後まで「男女の仲」とは無関係の「パートナー」なのでしょうか。
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女性たちの戦い (コウジ)
2016-11-29 09:08:08
TEPOさん

いつもありがとうございます。

<女性の怖さ>そして<たくましさ>
これが三谷幸喜さんの女性観であるような気がしました。
この作品、男性主体のドラマですが、実は女性たちも静かな戦いをしているんですよね。
牢人五人衆のように言葉に出して主張しないから逆に怖い。
この女たちの戦いの中で、淀やきりはどんなふうに関わるんでしょうね。

峯村リエさんはヘコんだんですか。
そして、
>大蔵卿の心は「よそ者」の牢人衆に対する恐怖と(淀の信頼をめぐっての)幸村に対する嫉妬
やはり彼女も戦っているんですね。
牢人衆に対する恐怖は具体的に描かれていましたが、幸村に対する嫉妬は隠された感情。
役者さんの役作りって深いですね。

作兵衛の証言。
おっしゃるとおり、あそこで作兵衛が幸村を絶賛したら逆に又兵衛たちは信用しなかったでしょうね。
結局は偽りのない言葉や行動が人の心に届く。
加藤清正や福島正則が豊臣家と秀頼を見捨てなかったのも、一緒に冷水を浴びた石田三成の気持ちを今になって理解したからなのかもしれません。
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