道長(柄本佑)は多くを語らない。
伊周(三浦翔平)、定子(高畑充希)の哀しい出来事に対しても弁明しようとせず、
自分が引き受けようとしている。
まひろ(吉高由里子)はそれを見抜く。
「お顔を見てわかりました。あなたはそういう人ではない」
こう言われて道長は堰を切ったように話し始める。
「俺の無力のせいで誰も彼もが不幸になった」
「おまえと交わした約束は何ひとつかなえておらぬ」
「どこに向かっていけばよいのか、それも見えぬ」
道長はずっと迷い、苦しんでいたんですね。
伊周や定子のことに対して、ただ流されるだけだった自分の無力を感じていた。
疫病の対応や減税など、民のためにいろいろやっているのに
「約束は何ひとつかなえておらぬ」と自分を厳しく客観視できる人物でもある。
自分を厳しく客観視できること──政治家に必須の能力だと思う。
これを忘れると、権力に飲み込まれ、傲慢になり万能感に囚われる。
「約束は何ひとつかなえておらぬ」と10年前の約束を覚えていたことにまひろは感激したことだろう。
自分の迷いや弱さを包み隠さず話してくれた道長に対して、まひろも本音を語った。
「この10年、あなたをあきらめたことを後悔しながら生きてきました」
「妾でいいと願っていたのに、おのれの心に従っていなかったことを悔やんでおりました」
自分の心の中を素直に語ることができるふたり。
しかし、ふたりは別々の道を歩まねばならない。
特にまひろは10年前に交わした約束を何もかなえていない。
「今度こそ越前の地で生まれ変わりたいと思っておりまする」
まひろは、自分を見つめるために越前に旅立っていった。
強い絆で結ばれたまひろと道長。
絆で結ばれた関係は他にも。
清少納言(ファーストサマーウィカ)と定子だ。
「命あるかぎり、わたしは中宮様のおそばを離れません!」
「なりませぬ! お腹の子のために中宮様は生きねばなりませぬ!」
「何をすればいい? 中宮様を元気にするには?」
清少納言は定子を慰めるために『枕草子』を書き始める。
それは楽しかった頃の中宮での記憶。
雅で優美な世界。
これで定子は慰められたことだろう。
「楽しかった過去」と「優美な世界」はしばし現実を忘れさせてくれる。
いずれは「昔はあんなことがありましたね」と定子と清少納言が語り合う日が来るかもしれない。
…………………………………………………………………
人間関係は他にも。
まひろと清少納言。
「史記が敷物だから枕詞を書いたらいかがですか」
「帝が司馬遷の史記だからききょう様は春夏秋冬の四季とか」
言葉遊びで心を通わせるふたり。
第三者にはこれのどこが面白いのかわからない……。笑
まひろと宣孝様(佐々木蔵之介)。
「下品に興味を持たぬ者などおらぬ」笑
「国司になれば懐を肥やせる」笑
俗な宣孝を叱り、ツッコミを入れるまひろ。
叱られて宣孝は嬉しそう。笑
宣孝みたいな「俗」な存在って必要ですよね。
これが人間。おそらく、まひろの文学を強くする。
伊周と母・貴子(板谷由夏)。
「亡き父に誓ったのだ。わたしはわが家を守ると」
こう自分を責める伊周に貴子は、そんなことは考えなくていいと諭す。
貴子と離された伊周は子供のように泣き叫ぶ。
伊周はまだ「子供」だったのかもしれない。
まだ成熟していない子供だったのに無理矢理地位を与えられ、家を守ることを強いられた。
ここに伊周の悲劇があったのかもしれない。
道長と実資(秋山竜次)。
めでたく左大臣と中納言に出世した。
私心のない道長。
法や前例や慣習を重視する実直な実資。
名コンビだ。
道長はいろいろ迷う政治家だから、実資のように「判断の物差し」を与えてくれる存在は
有り難いのだろう。
いろいろな人間関係が描かれている今作。
やはりドラマは「人間関係」なんだ、とつくづく思う。
それは大河ドラマなら尚更。
そして、まひろは宋人・周明(松下洸平)と新たな関係を築いていく。
※追記
前回、呪詛は詮子(吉田羊)の自作自演で、倫子(黒木華)がリークしたと推理したが、
倫子がリークした、は間違いだった。
倫子は内々に留めておこうとしたが、詮子がリークしていた。
すべては詮子の仕業。
※追記
オウムの声は『葬送のフリーレン』のフリーレン、『SPY×FAMILY』のアーニャ役の種崎敦美さん。
今回は「你好(ニーハオ)」のひとこと言だけ。
伊周(三浦翔平)、定子(高畑充希)の哀しい出来事に対しても弁明しようとせず、
自分が引き受けようとしている。
まひろ(吉高由里子)はそれを見抜く。
「お顔を見てわかりました。あなたはそういう人ではない」
こう言われて道長は堰を切ったように話し始める。
「俺の無力のせいで誰も彼もが不幸になった」
「おまえと交わした約束は何ひとつかなえておらぬ」
「どこに向かっていけばよいのか、それも見えぬ」
道長はずっと迷い、苦しんでいたんですね。
伊周や定子のことに対して、ただ流されるだけだった自分の無力を感じていた。
疫病の対応や減税など、民のためにいろいろやっているのに
「約束は何ひとつかなえておらぬ」と自分を厳しく客観視できる人物でもある。
自分を厳しく客観視できること──政治家に必須の能力だと思う。
これを忘れると、権力に飲み込まれ、傲慢になり万能感に囚われる。
「約束は何ひとつかなえておらぬ」と10年前の約束を覚えていたことにまひろは感激したことだろう。
自分の迷いや弱さを包み隠さず話してくれた道長に対して、まひろも本音を語った。
「この10年、あなたをあきらめたことを後悔しながら生きてきました」
「妾でいいと願っていたのに、おのれの心に従っていなかったことを悔やんでおりました」
自分の心の中を素直に語ることができるふたり。
しかし、ふたりは別々の道を歩まねばならない。
特にまひろは10年前に交わした約束を何もかなえていない。
「今度こそ越前の地で生まれ変わりたいと思っておりまする」
まひろは、自分を見つめるために越前に旅立っていった。
強い絆で結ばれたまひろと道長。
絆で結ばれた関係は他にも。
清少納言(ファーストサマーウィカ)と定子だ。
「命あるかぎり、わたしは中宮様のおそばを離れません!」
「なりませぬ! お腹の子のために中宮様は生きねばなりませぬ!」
「何をすればいい? 中宮様を元気にするには?」
清少納言は定子を慰めるために『枕草子』を書き始める。
それは楽しかった頃の中宮での記憶。
雅で優美な世界。
これで定子は慰められたことだろう。
「楽しかった過去」と「優美な世界」はしばし現実を忘れさせてくれる。
いずれは「昔はあんなことがありましたね」と定子と清少納言が語り合う日が来るかもしれない。
…………………………………………………………………
人間関係は他にも。
まひろと清少納言。
「史記が敷物だから枕詞を書いたらいかがですか」
「帝が司馬遷の史記だからききょう様は春夏秋冬の四季とか」
言葉遊びで心を通わせるふたり。
第三者にはこれのどこが面白いのかわからない……。笑
まひろと宣孝様(佐々木蔵之介)。
「下品に興味を持たぬ者などおらぬ」笑
「国司になれば懐を肥やせる」笑
俗な宣孝を叱り、ツッコミを入れるまひろ。
叱られて宣孝は嬉しそう。笑
宣孝みたいな「俗」な存在って必要ですよね。
これが人間。おそらく、まひろの文学を強くする。
伊周と母・貴子(板谷由夏)。
「亡き父に誓ったのだ。わたしはわが家を守ると」
こう自分を責める伊周に貴子は、そんなことは考えなくていいと諭す。
貴子と離された伊周は子供のように泣き叫ぶ。
伊周はまだ「子供」だったのかもしれない。
まだ成熟していない子供だったのに無理矢理地位を与えられ、家を守ることを強いられた。
ここに伊周の悲劇があったのかもしれない。
道長と実資(秋山竜次)。
めでたく左大臣と中納言に出世した。
私心のない道長。
法や前例や慣習を重視する実直な実資。
名コンビだ。
道長はいろいろ迷う政治家だから、実資のように「判断の物差し」を与えてくれる存在は
有り難いのだろう。
いろいろな人間関係が描かれている今作。
やはりドラマは「人間関係」なんだ、とつくづく思う。
それは大河ドラマなら尚更。
そして、まひろは宋人・周明(松下洸平)と新たな関係を築いていく。
※追記
前回、呪詛は詮子(吉田羊)の自作自演で、倫子(黒木華)がリークしたと推理したが、
倫子がリークした、は間違いだった。
倫子は内々に留めておこうとしたが、詮子がリークしていた。
すべては詮子の仕業。
※追記
オウムの声は『葬送のフリーレン』のフリーレン、『SPY×FAMILY』のアーニャ役の種崎敦美さん。
今回は「你好(ニーハオ)」のひとこと言だけ。
しかし本作では、道長がけっして伊周たちを「追い落とした」わけではない事情を終始描いていました。
道長は弁明することなく世人の評価を引き受けたところで
>「お顔を見てわかりました。あなたはそういう人ではない」
このくだり、良いですね。
道長とまひろとの絆の深さが際立っています。
他方、明確に伊周たちを「追い落とした」―権力闘争の主体となった―のは女院・詮子様。
「呪詛」事件の経緯については「X」(旧Twitter)上で多くの考察が交わされていることを家内―私自身はXをやらないので―に教えてもらいました。
突っ込んだ読み込みのためにはXあたりまで目配りしなければならないようですね。
倫子の立ち位置については若干多様な意見があるようですが、詮子の自作自演は動かないようです。
一条帝を幼少時から囲い込んでいた中関白家に対する詮子の反感は以前から描写されていましたし、周知のことだったのでしょう。
他方、倫子の方は世評も含めてのバランスのとれた道長の利益を考慮した上で、そうした詮子の動きに一部乗り、一部牽制してコントロールしていたようです。
政治の主体は女性たちであり、道長自身は無力で流されるだけだったというところでしょうか。
>清少納言は定子を慰めるために『枕草子』を書き始める。
こうしたエピソードを見ると、はるか昔学校で「香炉峰の雪」を読んだ時に覚えた「鼻持ちならなさ」に対する反感は和らいできます。
清少納言の定子への忠誠心、そして彼女に『枕草子』執筆のヒントを与えたまひろの友情、良いですね。
全体的に、私自身が歴史上の人物に対して抱いていたステレオタイプ的なイメージが少しずつ揺さぶられている感覚がしています。
道長さんから「宋人を追い返せ」という密命を受けて、アタマを抱えるまひろパパです。やはりラクはさせてもらえず、大仕事が待ち構えているわけですね。
もっとも、少しさかのぼれば、渤海の使節を受け入れていた前例はあるので、今回追い返すようにとした道長さんの判断がなぜなのか、そのあたりを掘り下げればもっと面白かったんですが。
宋人ゲストハウスに飛び込んだまひろパパです。
わたしは中国語はまるでダメですが、字幕があったので「我是新任越前的国守」とか何とか言ってらしいな、くらいは聞きとれました。越前が月前に聞こえたのはナイショです(笑)(現代中国語で、越と月は同じ発音です)。
それにしても、都では生の中国語に触れる機会もほとんどなかったでしょうに、まひろパパはどこで勉強したんでしょう。てっきり筆談と予想していたんですけど。
もしかして「若いころに密航未遂をやらかした」という設定は、このあたりにつなげるためでしょうか。そうだとしても、発音は難しいですよ…
まひろも言っていたように、宋王朝は科挙による官僚の登用を本格的にはじめました。恐らく世界最先端です。それまでとはうってかわって社会の風通しはよくなり、経済的にも非常に発展しました。
ただし経済発展の副作用として、貧富の格差が大きくなり、特に農村の貧困化と疲弊が著しく、社会問題化していました。
ちなみに、この時代の数十年後(紫式部が亡くなる頃)に、宋王朝の社会改革が始まります。中小の農民や商工業者の底上げをするための政策が矢継ぎ早に打ち出されますが、貴族の代わりに台頭してきた大地主や大商人といった「抵抗勢力」にあって潰されます。それ以降の歴代中国王朝では、こういった改革はほとんどなかったんですね(検索ワードは王安石です)。
まあ、このドラマでそこまで言及するかどうかは分かりませんが、悲田院も話に出てくるくらいなので、意外にあり得るかもしれません。
越前編、どう展開するんでしょう、意外に面白くなるかもです。
いつもありがとうございます。
>道長は弁明することなく世人の評価を引き受けた
今の政治家と対照的ですよね。
今の政治家は「誤解を招くような発言をしてしまって申し訳ない」ですからね。
その後のまひろのせりふも、おっしゃるとおり、よかったです。
xは放送終了後にチェックしているのですが、大変面白いです。
世の中には、とんでもなく歴史に造詣が深い人、ドラマを深読みする人、独自の切り口で楽しむ人など、たくさんいます。
「光る君絵」というイラストを投稿する方もいて、これも楽しいです。
『枕草子』が書かれた背景は、大石静さんの想像。創作なのでしょうが、こうして背景が語られると、『枕草子』を読む時の味わいが違って来ますよね。
学校の古典の授業もかくあってほしいです。
道長のイメージは大きく違いますよね。
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」
がどう解釈されるのか、楽しみです。
いつもありがとうございます。
宋人を追い返すことについては
「宋人との貿易は九州で一括しておこなうことになっている」
「彼らが都の近くにいたら何をするかわからない」
「彼らはいくさ人かもしれない」
みたいな説明していましたね。
平清盛は神戸の福原を都にして、日宋貿易の拠点にしようとしましたが、当時としては斬新だったんでしょうね。
発音についてはフィクションでしょうね。
あるいは次回、何らかの説明がなされるかもしれませんが。
為時パパ、これから大活躍しそうですね。
ただ基本は書物の人なので、いろいろ苦労しそうです。
予告に拠ると、まひろは周明から発音を習うようですね。
まひろの漢語は発音の伴わない書物からのものなので、一層バージョンアップしそうです。
これからは2020さんの中国の知識が活かされそうなので、いろいろ教えて下さい。
この記事とは関係ないのですが…
政治資金規正法開催法案成立については(“ついても”と言った方がよいですね)憤りを感じますよね」。
で、質問です。
追記で「倫子は内々に留めておこうとしたが、詮子がリークしていた」と修正されていますが、その根拠を教えてください。
この第21話「旅立ち」で、倫子が詮子に対して「詮子と義父は仮病が上手」とチクリ(グサリ?)と皮肉を言っていましたが、この件については、私は視聴者サービス(呪詛は狂言だったと明示)だったと解釈しました。
この皮肉の時、道長は目をむいて驚いていましたが、この表情の解釈も①「怖い姉・詮子に対して、そこまでの皮肉を言うのか?」、②詮子は呪詛を受けて苦しんでいたと思っていたが、仮病だったのか?」です。(もちろん①ですよね)
で、私も最初、実資が「伊周が呪詛をかけた」と報告した時に、《私に任せて》と道長に言った倫子の顔が浮かび、道長の意向に背いたのか?と思い、さらに、敢えて道長の政敵を頬むるために動いたと考えました。
でも、コウジさんの追記を読んで、皮肉を言ったのは、内々に収めようとした道長の意に反して、リークした詮子への報復とも考えられるなあと。実資らを動かす力や伝手は倫子にはなさそうだし。
でも、「倫子はいささか口が軽いのぉ」と倫子に忖度するように促した詮子の言葉を考えると、リークしたのは倫子という線も消せません。
悩んでいます。
おひさしぶりです。
政治資金改正法、結局、抜け穴だらけで何も変わっていませんよね……。
倫子のリークの件、言われてみると迷いますね。
要は倫子のキャラクターをどう捉えるか、なんですよね。
・道長の権力を盤石にするために動く女性なのか?
・道長の負担を軽くするために動く女性なのか?
道長は伊周たちを疎ましく思っていても、追い落とそうとは思っていない様子。
伊周のことで、これ以上一条天皇を怒らせると、苦労するのは間に入っている道長。
なので、道長の負担を増やしたくない倫子は内々で処理しようとしたのではないかと考え直しました。
あとは、詮子と倫子の政治力・発信力の違いでしょうか。
詮子の朝廷での人脈が広いので、別に倫子を利用しなくても、呪詛の話を広めてくれる人間はたくさんいそうです。
呪詛の話では、貴子の叔父が「大元帥の法」をおこなったという話も流れましたが、聡明な倫子でも「大元帥の法」まで思いつかない気もします。