平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

青天を衝け 第31回「栄一、最後の変身」~俺の道は官ではねえ。ひとりの民でいたい!

2021年10月18日 | 大河ドラマ・時代劇
 皆が前を向いて歩いている。

 牢から出た成一郎(高良健吾)は栄一(吉沢亮)と再会。
 道を違えた栄一に「いいご身分だのぉ」と皮肉。
 いくさで死んでいった仲間たちにこだわっている。
 しかし、土方歳三(町田啓太)と違って生きることを選んだのは成一郎だ。
 栄一が「死なねえでよかったな。生きていればこうして文句も言い合える」と言うと、「うるせえ」
 心の中のものを吐き出して前を向き始めた。
 大蔵省を経て、富岡製糸場を見て、イタリア行きを決める。
 ドラマとしては、2年半牢に入れられた成一郎の「浦島太郎ぶり」が面白い。
 2年半の間で社会は大きく変わったのだ。
 成一郎はこの新しい世の中で自分も何かをやってみたいと考えたに違いない。

 尾高惇忠(田辺誠一)は富岡製糸場を何とか軌道に乗せた。
 共に働くフランス人について、かつての攘夷の思想家・惇忠は成一郎に言う。
「腹を割って話せば人と人だった」
 思想やイデオロギーは他者を排除する。
 人と人、腹を割って話せばわかりあえるのに。
 そして、惇忠はワクワクしている。
「生き残った以上は前に進まぬわけにはいかねえ」
 惇忠の娘・勇(畑芽育)も富岡製糸工場で働き、女性の社会進出の先駆けとして歩み始めた。

 栄一は迷い始めた。
 大蔵省の仕事はやりがいがあるが、窮屈だ。
 大久保利通(石丸幹二)という重しがあって、詭弁を弄さなくては自分の政策をおこなえない。
 商人達にはお上の威光を使って、圧力・恫喝。
 三井組の番頭・三野村利左衛門(イッセー尾形)からはこんなことを言われる。
「あたしら商人はお上の顔色をうかがうのみ。徳川の世と何も変わりませんな」

 西郷(博多華丸)とは、新政府における違和感で共感し合う。
「高い所からの物言いだけのおのれは心地が悪い。おからしくねえ」
 栄一と西郷は下からの視点なんですね。
 西郷は廃藩置県で禄を失って放り出された武士の視点。
 栄一はお上の顔色をうかがって自由に商売できない商人の視点。
 自分たちが作りあげた維新の世だが、どこか違うと思っている。
 そこで西郷は武士たちを集めて──
 栄一は──
「俺の道は官ではねえ。ひとりの民でいたい」

 渋沢栄一という人は結構、寄り道している。
 攘夷思想に浮かれて攘夷に走り、
 慶喜(草彅剛)に出会って、一橋と徳川のために働き、
 フランスへ行き、西洋のシステムに魅せられ、学び、
 維新政府で働き、官僚として社会改革を行なった。

 節操がなくて、養蚕一筋だった父っさま・市郎右衛門(小林薫)と全然違う。
 でも、これが生きるということだろう。
 現に成一郎も惇忠も道に迷い、寄り道した。
 父っさまのような生き方は社会が固定した封建社会ならではのこと。
 まだ不十分ではあるが、維新の世は以前より、人が自由に生きられるようになった。
 富岡製糸工場のお勇しかり。
 逆におのれを貫く生き方は土方や長七郎(松島真之介)のように死に至る。

 生きるということは迷い、寄り道をすることなのである。


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