平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「坂の上の雲」の再放送が始まる!~日清戦争、日露戦争、近代文学、あらためて明治という時代を考えてみよう

2024年09月07日 | 大河ドラマ・時代劇
 明治時代描いた「坂の上の雲」(原作/司馬遼太郎)が9月8日(日)より再放送される。
 NHK総合・毎週日曜 午後11時~11時44分(全26回)。

・日清戦争~黄海海戦
・日露戦争~奉天会戦、旅順・二百三高地攻略、日本海海戦

 日本が戦争に勝っていた時代の話だ。
 だから司馬遼太郎は
「戦争賛美と誤解される、作品のスケールを描ききれない」
 と語って、なかなか映像化を許諾しなかった。
 まあ、日露戦争は薄氷の勝利だったんですけどね。

 主人公は伊予松山に生まれた三人。
・秋山真之(本木雅弘)~連合艦隊参謀「本日、天気晴朗ナレドモ波高シ」
・秋山好古(阿部寛 ) ~騎兵第一旅団長。最強と言われたロシア・コサック部隊を撃ち破った。
・正岡子規(香川照之)~俳人・歌人。漱石らと共に文学で新しい時代を作った。
            ベースボールを「野球」と翻訳した人物でもある。

 司馬遼太郎は明治時代を「無邪気で明るい時代」と捉えていた。
 それは誰もが努力すれば、大臣、軍人、学者、企業家になれる希望という意味で、
 実際はそれから排除された人がいたし、漱石のように息苦しさを感じた人がいたし、
 政治家の腐敗はあったし、「富国強兵」による重税など、マイナスな面もたくさんあった。

 とはいえ、司馬遼太郎史観に拠る「明治時代」をもう一度見てみたい。
 原作も手もとにあるので、放映エピソードと同時進行で読み返してみようと思う。
 日曜日は「光る君へ」もあるし、忙しいな。
 ………………………………………………………

 主人公以外の登場人物・キャストも豪華だ。

・明治天皇(尾上菊之助)
・井上馨 (大和田伸也)
・山県有朋(江守徹)
・伊藤博文(加藤剛)
・松方正義(大林丈史)
・陸奥宗光(大杉漣)
・高橋是清(西田敏行)
      英国のユダヤ資本から日露戦争の戦費を調達した。2・26事件で暗殺。
・小村寿太郎(竹中直人)
      外務大臣・ポーツマス会議でロシアから十分な賠償を得られなかったので
      日比谷焼打ち事件が起こった。
・桂太郎 (綾田俊樹)
・鈴木貫太郎(赤井秀和)
      2・26事件を生き延び、太平洋戦争終了時の総理大臣。
      明治・大正・昭和で日本の政治の中枢にいた。

・夏目漱石(小澤征悦)
・高浜虚子(森脇史登)
・森鴎外 (榎木孝明)
・陸羯南 (佐野史郎)
      雑誌「日本人」創刊。

・乃木希典(柄本明)
・児玉源太郎(高橋英樹)
・大山巌 (米倉斉加年)
・長岡外史(的場浩司)
・明石元二郎(塚本晋也)
      ロシア革命の端緒をつけた諜報員。
      「動乱はわが掌中にあり」
      明石元二郎のロシア民衆工作で内乱が起こらなければ、
      日露戦争は負けていたと言われている。
・東郷平八郎(渡哲也)
・山本権兵衛(石坂浩二)
・広瀬武夫(藤本隆宏)
      軍神・広瀬。皇居前にあった銅像はGHQによって撤去された。

・李鴻章(任大恵)
・袁世凱(薜勇)
・ニコライ二世(ティモフィー・ヒョードロフ)
      ロマノフ王朝最後の皇帝。
      日本訪問時に斬りつけられた(大津事件)。
      ロシア革命が勃発して殺害された。
・アレクセーエフ(ゲンナジー・ヴェンゲロフ)
・クロパトキン(セルゲイ・ハールシン)
・メッケル(ノーベルト・ゴート)


※関連動画
 坂の上の雲・人物キャスト紹介(YouTube)

 本放送は2009年(第1部)、2010年(第2部)、2011年(第3部)に分けて年末に放送された。
 結果、この時の大河ドラマ「天地人」「龍馬伝」「江」は11月で終了した。
 今回の再放送は一週間の間を置くが、一気に見られるのは有り難い。


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9 コメント

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政治的なカラー (2020-08-15 21:49)
2024-09-08 19:17:14
坂の上の雲からはちょっと離れます。

個人的に、司馬遼太郎作品はほとんど読んでません。若い頃は敬遠してましたし、社会人になってからは、歴史の勉強には、ちゃんとした学者さんが書いた入門的な本の方が、ためになると気がついたせいもありました。
なぜ若い頃に敬遠していたかというと、昭和時代に司馬遼太郎のファンだった人って、保守系の政財界人やいわゆる愛国的な人も多くて、わたしはそういった「司馬を取り巻く状況」が好きになれなかったということもありました。
おそらく司馬本人も、そういった「妙に政治的な色のついたファン」は好きではなかったと想像しています。その文脈で、ドラマ化を承諾しなかったということもあったのではないかと勝手に思っています。

昭和戦後にもこういった「愛国さん」がいましたが、今の脊髄反射的なネット愛国的な人たちと比べれば、まだ何かしら勉強してやろうという感じでしたよね。
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司馬遼太郎作品は人生論・リーダー論 (コウジ)
2024-09-09 08:34:43
2020-08-15 21:49さん

いつもありがとうございます。

司馬遼太郎作品は、人生論・生き方論・リーダー論であると僕は考えています。
だから司馬遼太郎作品は財界人やサラリーマンに読まれました。
僕もかつては会社員だったのでメチャクチャ読みました。

一方、司馬遼太郎は太平洋戦争に負けた時、軍隊が一般人を見捨てて中国大陸から真っ先に逃げたことを体験していて、昭和の戦争に関しては否定的。
権力不信もあったかもしれません。

後半は「日本人とは何か?」を追及した作家さんでした。
そこで到達した境地「日本は東アジアの片隅にポツンとあるのがいい」というのは名言ですね。
返信する
観察 (2020-08-15 21:49)
2024-09-10 06:28:38
1980年代ごろ、読売新聞あたりに連載されていた紀行文で、司馬さんは面白いことを言ってます。あのとき読売はかなりはしゃいでいて、天下の司馬遼太郎に受けてもらえたと言うことで、相当舞い上がってましたっけ。
そして、わたしが非常に感銘を受けた言葉がこれでした。
「アメリカは人工国家である」
というものです。若かったわたしは非常に驚き、そして合点がいきました。
それ以前にそういう言い方をした人はほとんどいなかったと記憶しています。似たようなことを感じている人はいたと思いますが、これほど短く鋭く本質をズバッと言えた人はほとんどいなかったと思います。そして、その言葉からいろいろな思考が派生していく余地がたくさんあるわけです。
司馬さんの本質は、メチャクチャ鋭い観察と、その観察を的確に表す鋭い言葉の能力と思っています。

わたしが読んだ数少ない司馬作品は項羽と劉邦でしたが、その中でも司馬はこういった趣旨のことを書いています。
「劉邦の邦の字は、兄貴といった程度の意味である。そして、字(あざな。本名のほかにつけられる愛称)は季で、これも末っ子という程度である。つまり、劉邦の生家は、子どもの名前に凝るような家庭ではなく、どこにでもあるような田舎家だった」
といった調子で、これも観察眼でしょう。
わたしの中では、人生論とかリーダー論とかいった印象は薄く、司馬遼太郎というひとは、とにかく観察の人なんです。


>「日本は東アジアの片隅にポツンとあるのがいい」

これも観察ですね。
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本質を捉えるのが上手い作家 (コウジ)
2024-09-10 09:06:28
020-08-15 21:49さん

>「アメリカは人工国家である」
僕も、読売新聞で直接読んだわけではありませんが、司馬遼太郎名言集みたいな本があって目にしたことがあります。
・さまざまな国の人々がやって来てつくられた実験国家。
・何もなかったアメリカ大陸にいきなり造られた近代的な建造物。
みたいな意味合いだったと思います。

司馬さんは「物事の本質を捉えるのが上手い」んですよね。
これを「観察」と言ってもいいかもしれません。

物事の本質を捉えるのが上手い司馬遼太郎は、坂本竜馬や信長や秀吉や家康を明確な輪郭で描きました。
「坂の上の雲」では人物ではなく、「明治という時代」の本質を描きました。
………………………………………………

生き方論に関しては、僕は「竜馬がいく」を読んで、竜馬のように生きたいと思いました。
「世に棲む日々」の高杉晋作の生き方(「面白きこともなき世を面白く」)にも惹かれました。

リーダ論に関しては、ビジネスの世界で未だに話題にされる「信長型経営者」「秀吉型経営者」「家康型経営者」は司馬遼太郎から来ていると思います。
司馬さん自身は「自分の上司にするなら秀吉がいい」みたいな発言をされていました。
………………………………………………
引用されている劉邦の紹介は、いかにも司馬話法ですね。
凡庸な作家なら「劉邦、字は季。田舎のごく普通の家に生まれた」で終わる所、司馬遼太郎はともかくウンチクをたれる。
ウンチクを垂れすぎて、時々脱線する。笑
でもそのウンチク部分が面白い。
半藤一利さんだったと思いますが、司馬遼太郎のことを「ウンチクおじさん」と呼んでいました。

「項羽と劉邦」
僕も読みましたが、イマイチでした。
僕のとって、中国ものは陳舜臣さん。
北方謙三さんの中国ものも活劇として好きです。
「水滸伝」は一気に読みました。
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万能ではない? (2020-08-15 21:49)
2024-09-11 07:42:37
坂の上の雲は「明治はよかった、昭和は劣化した」という解釈ですが、大正時代が抜け落ちていることについて、手落ちではないかという指摘もあります。
また、坂本龍馬については過大評価ではないかとする人もいますね。
それに、司馬ファンは司馬の言葉を何でも真に受ける傾向もあり、批判的に読まないという問題点もあります。
まあ、このあたりの「司馬界隈」の感じって、嫌う人は本当に嫌うんですよね。
わたしが「観察」と呼ぶ司馬の力ですが、万能ともいえないようです。

また、吉川英治も柴田錬三郎も、今は生前ほどの評価ではないと感じます。司馬遼太郎も時間をかけて、徐々に評価が下がるのかもしれません。

何というか、こういった移り変わりも残酷ですよね。
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そんなに怖れる必要はありません (コウジ)
2024-09-11 09:48:51
2020-08-15 21:49さん

大正時代は面白い時代ですよね。
・第一次世界大戦の好景気
・大正デモクラシー
・関東大震災
・暗い昭和へ
実は僕は大正時代関連の本を積極的に読んでいます。
司馬さんが生きていたら書いていたかもしれませんし、読んでみたいですね。

>司馬ファンは司馬の言葉を何でも真に受ける傾向もあり、批判的に読まないという問題点もあります。
人は大人になるにつれて変わります。
僕もそうですが、現実を知っていく過程で、いずれは「坂本竜馬」からも卒業します。
司馬遼太郎はイデオロギーの作家ではないので、そんなに怖れる必要はありません。

>こういった移り変わりも残酷ですよね。
どんな有名な人も、時が経つにつれ、いずれ忘れられていきます。
僕は若い頃、メチャクチャ有名になりかったのですが、30年も経てば忘れ去られるんだな、と気づいた時、その荷を下ろせました。
すべては諸行無常。
ほとんどの作品は読み捨てられるパルプフィクション・ペーパーバック。

司馬遼太郎作品で50年後も読まれる作品は何でしょうね。
痛快小説としては「竜馬がいく」
歴史小説としては「国盗り物語」「新史太閤記」
歴史資料小説としては「坂の上の雲」
あたりでしょうか。
返信する
追記 (コウジ)
2024-09-11 10:03:42
追記

吉川英治の「三国志」→横山光輝の「三国志」→小説・ゲーム・コミック映像を含めた多様な「三国志」

ひとつの作品から派生する多様な作品群。
司馬遼太郎作品もそうで、一概に「諸行無常」とは言えませんね。
返信する
論語と司馬 (2020-08-15 21:49)
2024-09-13 05:54:42
>司馬遼太郎はイデオロギーの作家ではないので、そんなに怖れる必要はありません。

わたしも司馬はイデオロギーの作家ではないと思います。
ただ、取り巻く状況です。
たとえば論語ですが、江戸時代のお殿様や儒学者がしもじもに説いて聞かせるような、封建的な匂いのする論語を「人生の指針はコレだ」などと言って、スゴくありがたがる人たちが未だにいますよね。
アカデミックな世界では日本でも中国でもとっくに否定されているようなそういった封建的論語が、政財界的な偉い人たちからはありがたがられているわけで、そういった論語は、田舎で先祖代々ワンマン経営をしているような会社が、従業員に「忠義」を求めるにあたっても都合がいいわけです。一定の需要があってこれからも生き残るのかなと思います。
司馬ですが、このまま忘れられるのならばいいのですが、崇め奉る人が中途半端に古典化して、そういった封建的な位置づけになる可能性は、かなりあると思います。
司馬さんが、坂の上の雲の映像化を拒んだのは、その辺をよく分かっていたからだと思います。
返信する
見て確かめましょう! (コウジ)
2024-09-13 09:30:41
2020-08-15 21:49さん

う~ん、ちょっと考え過ぎな感じが……。
司馬遼太郎は大衆作家で、あくまでエンタテインメント。
生きる力や知恵を与えてくれる作品群です。

問題なのは「坂の上の雲」ですが、記者として従軍した正岡子規が日本軍の横暴に疑問を持ったり、秋山真之がノイローゼになったり、日比谷焼討ち事件で日本人の熱狂のヤバさを描いたりと、マイナス面も描いています。
秋山好古はウォッカの飲み合いをして、ロシア兵と友情を育みますし、乃木希典は美化されていません。

2020さんが言う「取巻く環境」への影響力で言えば、「男たちの大和」や「二百三高地」レベル。
というか、「坂の上の雲」は複雑な作品なので、「大和」や「二百三高地」のようにストレートに愛国心を喚起することはありません。

というわけで、原作を読むのが難しければ、日曜日の放送を見て確かめましょう!
見たり読んだりしていないのに決めつけるのは2020さんの悪い癖。

ちなみに50年後の読まれる作品として大切な作品を忘れていました。
土方歳三を描いた「燃えよ剣」
これは名作です!
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