平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

相棒17 「倫敦からの刺客」~南井はホームズの仇敵・犯罪の天才モリアティ教授のような存在! 右京との本格的な対決が始まった!

2019年02月28日 | 推理・サスペンスドラマ
「連続殺人に見せかけて本当の目的は右京さん」
 今回のエピソードの元ネタは、クリスティーの『ABC殺人事件』ですよね。
 関係のない殺人をいくつもやって、本命の殺人を埋もれさせる。
『木を隠すには森』
『死体を隠すには戦場』
 というトリック。
 まあ、真相はちょっと違いましたが。
 犯人は杉下右京という人物に興味をもち、からかいたくなったので、右京(水谷豊)に電話してきた。

 犯人の意外性については、予想がつきました。
『相棒』なら、素直に彼を犯人にするわけがなく、ひとひねりしてくるはず。
 だとすると、真犯人はいっしょにいたもうひとりの人物。
『相棒』を長く見ていると、こういうふうに見てしまう。
 事件をひねくれて見てしまうのは、相棒マニアの悪い癖!
 最近、あっという驚きがなくなったなあ。

 ただ、花の里で右京さんたちと犯人が遭遇する仕掛けは面白かった。
 ドラマで関係者が偶然出会うというのは禁じ手だが、それをやっちまったか、と思っていたら、花の里で出会ったのは犯人の意図で偶然ではなかった。
 犯人は右京の電話番号を聞き出すために花の里にやって来た。

 南井(伊武雅刀)はシャーロック・ホームズの仇敵・犯罪の天才モリアティ教授のような存在ですね。
 彼は直接、犯行に手を染めない。
 殺人願望のある人間を見つけ出し、誘導して殺人をおこなわせる。
 失敗して警察に捕まれば自殺するので、南井には捜査の手が及ばない。
 つまり完全犯罪だ。

 ただし今回、南井の生い立ちが明らかになったので、ここが弱点になりそう。
 天才犯罪者といえども人間なのだ。
 弱点を突かれれば動揺するだろうし、ミスも犯す。
 右京さんとの本格的な対決が始まったようだ。
 …………

 最後に今回の犯人が死の際に口にした『善悪の彼岸』について調べてみた。
 ニーチェの本の名前であることは知っていたが、その意味は知らなかったので。
 精選版 日本国語大辞典では、
『キリスト教を中心としたヨーロッパの伝統道徳がさし示す善悪の基準は、飼いならされた家畜のもつような奴隷道徳であると批判し、こうした善悪を越えた強者の、超人の道徳を確立しなければならない』
 ブリタニカ国際百科事典では、
『奴隷道徳とみなされる伝統的道徳 (ことにキリスト教道徳) の善悪の規準を否定し,従来の一切の価値の価値転換を通して,古典的なギリシア人のうちにみられるような,善悪の観念をこえた無垢の人間像を追求し,力強い生の肯定と結びつく道徳を樹立しようとした』

 つまり、
・善と悪の基準なんてわからない。
・善と悪の基準である、道徳や法律は人を抑圧するものである。
・だから、これらを捨てて自由に力強く生きよう。
 ということか。
 今回の犯人はこれを拠り所にして殺人をおこなっていた。
 ちょっと曲解しているように思えるけど、殺人の遺伝子のようなものを持っていた彼としてはこれで自由になれたんだろうなあ。
 しかし、殺人が彼を完全に自由にしたわけではないようで、究極の自由になる方法は自らの手で自分を殺すことだった。
 
コメント
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