平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

重版出来! 最終話~世界と和解した中田伯と、新作宣言の三蔵山先生に感動!

2016年06月15日 | 職業ドラマ
 中田伯(永山絢斗)の『ピーヴ遷移』が大反響!
 読者は熱狂し、高畑一寸(滝藤賢一)ら漫画家たちはライバル視、読み逃した読者用のWeb版にはアクセスが殺到し、書店からはいつ単行本が出るのかと問い合わせ。
 しかし、天才・中田伯はいまだにひとりの世界をさまよっている。
 作品世界に入り込み、現実世界とつながっていない。
 自分の傷をえぐってペンを走らせている。
 彼は自分の世界をひたすら描く作家なんですね。
 作品とは多かれ少なかれそういうものですが、彼の場合は自分が強すぎる。他人が入って薄まることがない。
 これが天才が天才たるゆえん。
 それがとんでもない毒や個性となり、読む者を引きつける。

 一方、このタイプの作家は他人と協調できない。
 辞めていくアシスタント。
 黒沢心(黒木華)がコミックスの装丁の相談に行くと、
「そんなこと何でもいい! 僕は面白いマンガを描ければいいんだ!」
 睡眠も食事もとらず描き続ける生活を改めるように言うと、幼少期のトラウマがよみがえって、
「俺を支配しようとするな!」

 しかし、ひとりの世界をさまよっている中田伯にも転機が……。
 まずは三蔵山先生(小日向文世)のアドバイス。
 ひとつのおにぎりが作られるのにたくさんの人の手がかかっていること。
 おにぎりの米粒にもたくさんの水が使われていること。
 目に見えないものを想像した方が世界は豊かになる。
 これは『重版出来!』が一貫して言ってきたことですよね。
 ひとつの作品が読者に届けられるまでには、作家、編集、営業、書店員が関わり、彼らの作品に対する愛情や思いがなければヒット作は生まれない。
 そして、次に中田伯を変えたのは、黒沢心。
 重版出来が心の夢だと知った中田伯は「黒沢さんの夢ならかなえてあげたい」と思う。
 結果、書店のサイン会に行った中田は、自分の作品のために書店員さんが一生懸命、サイン会場やコミックスの棚をつくり、自分のサインを待っている読者がいることを知る。
 そして、今まで「絵が下手だからサインしかしない」言っていた中田は言う。
「絵描きます。下手でも来てくれた人に描きます」

 おおーーーっ!
 涙!
 感動!
 中田伯が、拒んでいた世界と和解し、調和した瞬間だ。
 世界はそんなに悪くない。
 むしろ優しさと善意にあふれている。

 そして近代芸術文化賞を受賞した三蔵山先生のスピーチ。
 三蔵山先生は受賞した『ドラゴン急流』がたくさんの人に支えられて作りられてきたことを語った後、『ドラゴン急流』を終わらせることを宣言する。
 同時に漫画家生活を終えるニュアンスの発言も。
 しかし、違っていた。
 三蔵山先生はスタンドからマイクを外して高らかに語る。

「諸君! これより私は新しいマンガを描く!
 構想はもう出来ています。これまでのどの漫画家も描けない見たこともない漫画です。
 私の受賞に対し、ベテランじじいの功労賞に過ぎないと高をくくっている君たちに勝負を挑む!
 天才も凡人も年齢も性別も人種も国境も関係ない。必要なのは面白い漫画を描くという一念だ。
 私はあきらめない。
 今日この日、この場所は私の新たなる漫画人生のスタートです!」

 おおーーーーーーーっ!
 三蔵山先生、かっけーーーっ!

 『重版出来!』は、漫画家、編集者、営業、書店員を描いた見事な職業ドラマだった。
 同時に、創作とは何か? 仕事とは何か? 成長とは何か? 生きるとは何か? も教えてくれた。
 第1話で、心が出版社の社長を柔道で投げ飛ばした時、ああ、そういうよくあるドラマね、と思ってしまったが、実は骨太なドラマだった。
 見続けてよかったと思います。

※追記
 『ピーヴ遷移』の連載verはこちら。
 ピーヴをマスミが止めた!
 『ピーヴ遷移』の連載ver

コメント
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