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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

LOST 第22話

2007年04月03日 | テレビドラマ(海外)
 第22話「タイムカプセル」。
 毎回思うことだが、「LOST」のシナリオは実によくできている。
 決して大きな事件が起きるわけではないが、人物たちの微妙な心情が鮮やかに描き出される。

 今回はケイト。
 逃亡犯として逃げていたケイトは危篤の母に会うため、故郷にやって来る。
 しかし逃亡犯である彼女は大手を振って母に会いにいけない。
 頼りにするのは、かつての恋人で病院の医師をしているトム。
 彼に手引きしてもらって母に面会するが……。

 そこにはケイトの愛を得られないほろ苦い思いが描き出される。
 まずはトム。
 つき合っていた頃のタイムカプセルを開けて幸せだった頃の昔を思い出す。いっしょに吹き込んだテープには「このタイムカプセルを再び開けた時、ふたりは結婚していて、子供は9人いる」とトムが語っている声が入っている。しかし、今はケイトは逃亡犯、トムには家族がいる。
 そしてさらに事件が。
 ケイトは母親に面会したのだが、母親が興奮して騒ぎに。
 警官が駆けつけ、トムは巻き込まれて撃たれ死んでしまう。
 ケイトは思う。
 自分に関わった人はすべて死んでいく。自分は罪を背負っている。
 この罪の意識が彼女をさいなみ、ケイトは永遠に幸せになることが出来ない。
 島での生活はケイトに自分が逃亡犯であることを忘れさせてくれたが、事実は知られる。飲料水に仕込んだ毒のことで嫌疑をかけられたソーヤのことがきっかけでケイトは過去を話す。
 今まで心を許していた人が急に心を閉ざす。ケイトはそれが自分の罪の報いであり受け入れようとするが、やはり哀しい。孤独はつらい。
 ラストはサンの言葉にうなずくケイト。
 サンは言う。
「昔は愛する人といっしょにいることで幸せになれると思っていた。でも実際は違う」
 愛し愛されていてもどこかで歯車が狂い、心のすれ違いが起こる。
 愛することは哀しいこと。
 「愛することは素晴らしい」というドラマが多い中、こんなふうに愛を描いてしまう「LOST」は大人のドラマだ。

 この話数で起きた「飲料水毒盛り事件」についても明確に描かず、視聴者に結論を委ねている。
 飲料水に毒を盛ったのは、夫を島を脱出するイカダに行かせたくないと思ったサンだったが、そのアイデアをサンに話したのはケイト。
 ここまでは事実だが、次は曖昧。
 ケイトはサンのためを思ってそのアイデアを話したのか?
 それとも自分が代わりにイカダに乗るためにそのアイデアを話したのか?
 その答えをケイトに語らせずに、視聴者に委ねている。
 考えてみれば、人の心の中など完全に読めるものではないのだから、ドラマの描き方としてはこれでいいのかもしれない。この曖昧さが見事な余韻を放っている。

 最後はディティル。
 作品中ではマイケルがジンの水を間違えて飲むシーン、ケイトがサンにアイデアを話しているシーン、ケイトがパスポート偽造のため写真を焼いているシーンがさりげなく描かれている。これらは日常シーンの中で描かれているため1回見ただけではわからない。2回目に見るとわかるという仕掛けだ。
 この辺、実に心憎い。


コメント
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