俺は子供の頃から何か始めても最後までやり遂げたことがなかったし、自分のことを飽きっぽい性格だと思っていた。でも、今日も母の処に40分歩いていくのに、まるで癖のようにポルトガル語の教科書を録音したレコーダーをイヤホーンで聞きながら声を出して反復練習している自分に気づいて、何度も何度も挫折しながらよくもまぁショボショボとポルトガル語の勉強を続けているもんだと我ながら感心してしまった。俺は年をとってけっこう粘り強い性格になったのかも知れない。そういえば母の処へ料理を作りにいくことも「癖」になりつつある。ホボ二日に一度の割合で老老ランチをすることになって一年半になるけど飽きない。今日は何を作ってみようかと何故かチャレンジ気味になったりする。因みに今日はインスタントラーメンのスープを使った「麺なしラーメン」。炭水化物をそんなに多くはとれない母の為に麺の代わりにもやしを使い、後は店の残りのゆで卵と鶏のから揚げに海苔とシナチクとネギをトッピングしてバターまで添えた札幌ラーメン風だ。それにかぶと塩昆布の胡麻油ドレッシングサラダ、頂き物の粒貝の甘露煮を使った混ぜご飯。食後いつもの様に甘いモノ(今日は羊羹)でお茶しながらお喋り。突然話しは変わるけど、今日その後マスコミ試写に出かけた「さよなら渓谷」(真木よう子主演)と云う映画の大森立嗣監督についても何故か粘り強く諦めずに作品を追っている。と云うのは、彼の処女作「ゲルマニウムの夜」から最近作の「ぼっちゃん」まで四作とも全部見ているのに一本も俺の感性にひっかからない処か拒絶反応に近いものを抱いていたのだ。それなのに何故見続けたのか?最初は駄目でも次はいいだろ。二本駄目でも三本目はひっかかるかも知れない。そうやって見続けたのに四本目の「ぼっちゃん」は今までの中で俺にとって最悪で、彼と俺の感性は全く接点を持たないみたいだし、もう五本目は見るのをやめようと決意していたのだ。それなのに親しいプロデューサーのMさんからどうしても見てくれと言われたもんだから気を重くしながら試写を見始めたのだけど、見終わった時の偽らざる感想は大森立嗣監督を諦めなくてよかった‥‥そう、今年見た中で最高の映画だった。五本目で遂に俺の感性のど真ん中に彼の直球が放り込まれてきたのだ。最初から今まで描かれたことのない男女関係に緊張強いられ、最後まて息を抜く時がなかった。今までの作品は全部男主人公だけど、今回の作品は女主人公。監督が何故今まで女を避けてきたのかわからないけど、この映画に限っていえば、女を撮らせた方が絶対うまい監督だと思うし、この「さよなら渓谷」は「ヴァイブレータ」以来久々に日本映画に生れた女性映画だ‥‥そう、諦めてはいけない。諦めては損だ‥‥今日も店はお客さんがイベントの観客以外は三人だけだったし、今月もまた赤字が50万円以上行きそうだし、もうギブアップ寸前なんだけど、諦めてはいけない、諦めたくないと足搔く。