桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2009・4・17

2009年04月18日 | Weblog
映画監督の廣木隆一さんからマスコミ試写の案内状が届いたのは昨日だった。タイトルは『余命一ヶ月の花嫁』。ストーリーは知っていた。乳ガンに罹った24歳の女性が死ぬ直前に恋人と結婚式を挙げるという、普通なら絶対見たくない種の映画だ。でも、俺は絶対見たいと思っていた。それは『ヴァイブレータ』や『やわらかい生活』、そして去年俺が見たベストワン映画『きみの友だち』など感性豊かな映画を撮り続けて来た廣木隆一が、この通俗的お涙ちょうだい的素材をどう映画的に作り上げるのか怖いもの見たさで覗いてみたかったのだ。特に花嫁が死ぬシーン、インディな映画ならそんなシーンなんか撮らなくても構わないけど、テレビ局が製作している映画だ。テレビ放送用にも絶対欠かせない。ベッドの周りにみんなが集まって号泣するシーン。嫌だな。虫酸が走る。そんなシーンを廣木隆一はどう撮るのか?この映画がクランクインする時からずっと気になっていたのだ。でも、マスコミ試写の予定を見ると、行けるのは今日の1時の回しかない。その前に諸々用事を済ませるとなると9時起きだ。前日寝たのは4時過ぎだし、寝不足で果たして最後まで見ることが出来るかどうか自信がなかったけど、この映画をどうしても見ておきたいという欲望が勝って、Mと二人で東宝本社の試写室に出向いた。そして二時間半後。試写が終わって無言のまま近くの中華料理店に入った俺たち二人はお互いの顔を見て思わず笑っていた。Mの目の周りは涙で化粧が落ちてボロボロになっているし、俺は俺で涙が出すぎて眼が腫れていたのだ。そう、俺は泣いてしまっていた。寝不足で寝ている暇なんかない程俺は泣いてしまったのだ。映画的に廣木隆一がどんなテクニックを使うのか偉そうにチェックする余裕なんかない程に俺は泣いてしまったのだ。滂沱の涙って言葉はこんな時に使うのだろう。栄倉奈々のVサインに泣いた。瑛太の寝顔に泣いた。柄本明の無表情な全てのカットに泣いた。いや、俺だけじゃない。試写室にはいい大人が一杯いたけど、いつしかすすり泣きと鼻水をすする音の合奏会場になっていた。これほどまでにいい大人を泣かせてしまうなんて、廣木隆一は許せない。この映画はテレビなんかで見ちゃダメだ。絶対映画館で見る映画だ。
★4/27(月)~5/6(水)まで店内改装工事の為お休みします。