桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2008・9・19

2008年09月20日 | Weblog
「息子」と「娘」が、それぞれ俺に報告があるからと来店した。「息子」は十年ほど前、俺も脚本を書いていた某有名刑事ドラマのスペシャルドラマで何代目かの新人刑事役で華々しくデビューしたものの、それっきりで後が続かず腐っていた頃に広尾の店で半年間バイトしていたことがある俳優のH君。彼はそれから映画や昼帯の主役をやったりして、今や地味ながらも堅実な俳優として大河ドラマなどにいい役で出演している。そして、その俳優としての自信が予てから交際していたA子さんとの結婚に踏み切らせたらしい。大して世話した訳ではないのにわざわざその報告にきてくれる気持ちが嬉しいし、正に息子から結婚の報告を受けている父親の心境。10月に行われる披露パーティには夫婦揃って参列すると約束する。「娘」の方はこれまた十年近く前、まだ中学生だったのに母親に連れられて広尾の店にきて、母親が友人とお酒を飲んでいた間、カウンターの隅でパスタを食べながら受験勉強をしていたS子ちゃん。この母親は変わっていて、友人と別の店に飲みにいくことになると、ロリコンの俺に「娘をヨロシクね」とS子ちゃんを預けて行ってしまうのだ。まぁ、そこまで信頼されると疚しい気持ちは起きないもので、店が終わった後、俺は何度かS子ちゃんを焼き肉に連れて行ったり、家まで送り届けたりしたことがある。ウチでの受験勉強が役立ったのか、S子ちゃんは難関のJ大学の法学部に入学し、どんな仕事をするんだろうと「父親」っぽく期待していたら、卒業を前にして60何歳のヤクザの幹部に恋をして一緒に住み始めてしまったのだ。今、39歳年下のMと結婚した俺が云う資格はないのだけど、「父親」としてはひどく心配したものだった。その彼女も二年前、すったもんだの末にその男と別れて、漸く同年配の男の恋人が出来たとの報告。「父親」としてホッと安堵させられたが、酔った末に俺たちの結婚のお祝いだと言って、シャンパンを空けたり、嵌めていた高そうな指輪をMにプレゼントしたりするサマをみていると、嬉しいけれど、まだヤクザのお偉いさんと付き合っていたモードが残っているみたいで、ちょっと不安になるのは「父親」としての余計な心配か。