国内でも、がん診療連携拠点病院では、
がん患者さんの苦痛の症状スクリーニングの実施に
どうやって、時間と労力を配分するか、
試行錯誤が続いています。
今まで研究結果から、
症状スクリーニングは
臨床的な効果が乏しいと言われてきました。
2016年のJCOからの報告。
スローンケタリング単施設において
766名の化学療法中の固形がん患者さんに対し、
Web(スマホやPC)から
12の症状について
0-4の5ポイントについて
自分で評価し、送信してもらうことで、
通常外来受診の患者さんと比較して
症状の改善やER受診の減少等を
認めるかどうかを見た試験です。
PC経験者には、週1でリマインダーが送られます。
PC未経験者は、外来受診時に外来の端末から
送信するようサポートします。
最初の結果をベースとして、
それより2点悪化していたり、
3点以上悪い場合は、
自動的に看護師にアラートメールが
送信されるようになっています。
ただ、そのメールが届いたとしても、
どのように対処するかは、
現場の医療者に一任されており、
研究としての介入はありません。
その結果・・・
症状の改善(EuroQol EQ-5D Index)はもとより、
改善(介入34% v コントロール18%)
悪化 (38% v 53%; P < .001)
ER(救急外来)受診率の減少
(34% v 41%; P = .02)
入院の減少傾向
(45% v 49%; P = .08)
quality-adjusted survival(質調整生存期間:よりよい状態で生存している期間)の延長
(mean of 8.7 v. 8.0 months; P = .004)
これらの恩恵を最も受けたのは、
PC未経験者だったと考察されています。
例えば、ER受診では・・
Aがすべて、BはPC経験者、Cは未経験者で、
青線は通常外来者、黄線がWeb報告をした患者です。
Cがもっとも差が開いていますね。
高齢者でPC使えない方がこの群に入るようです。
Symptom Monitoring With Patient-Reported Outcomes During Routine Cancer Treatment: A Randomized Controlled Trial. Journal of Clinical Oncology 34, 557-565.
この研究には続きがあって、
去年のASCOの発表とほぼ同時期に
JAMAにレターが掲載されました。
Overall survival was assessed in June 2016 after 517 of 766 participants (67%) had died, at which time the median follow-up was 7 years (interquartile range, 6.5-7.8). Median overall survival was 31.2 months (95% CI, 24.5-39.6) in the PRO group and 26.0 months (95% CI, 22.1-30.9) in the usual care group (difference, 5 months; P = .03)
生存期間が5か月延長を認めています。
Overall Survival Results of a Trial Assessing Patient-Reported Outcomes for Symptom Monitoring During Routine Cancer Treatment.
新薬の抗がん開発でも、
5か月の生存期間の延長というのは、
中々難しい場合があります。
通常外来では、
患者さんが自発的に苦痛症状を言語化して頂くことになります。
このWeb報告では、
言語化ではなく、タッチパネルなどで表現することになります。
一方、これはスローンケタリング単施設です。
スローンの看護師さん達が
とても能力が高かったことに
この結果が依存している可能性もあります。
JCOには
Nurses frequently initiated clinical actions in response to e-mail alerts.
と、記載されている位ですから。
日本の現在のまるで人海戦術のような
症状スクリーニング。
とって精いっぱいです。
その後のアクションが
重要であることを
この論文は示してくれています。
ちょっと考えさせられた論文でした。