80代のご主人を介護されている奥様が
とても辛そうでした。
急な体重減少、色々なものへの興味が薄れ、笑顔が消え、数か月過ぎていました。
涙の時間もあり、鬱々としたお気持ちを切なそうにお話しされました。
近くのクリニックから、ありがちな抗不安薬が処方されていました。
一度精神科専門医にも見てもらいましょうと
情報提供書も準備しましたが
がんのご主人を一人にできず
受診できず、困っていらっしゃいました。
私の方で、同時に診療を開始させて頂きました。
以前の病院のチーム精神科医は
内科的な見方をしながら
精神科薬を実に上手く選択されており
その時の判断の仕方を思い出しながら
テトラミド(10)1錠 1X 夕
の処方箋をお渡ししました。
そして、1週間・・・
外勤先から、お二人の訪問診療に伺いました。
玄関にお迎えくださった奥様は
とても、豊かな表情で、
食事が美味しく感じられていること
夜も寝られ、肩こりも楽になったこと、
在宅で最期まで過ごしたいというご主人を
できる限り看ていきたいし、看られそうだと
嬉しそうにお礼を言葉にしてくださいました。
ご主人は、一日の大半を眠って過ごされるようになりましたが
幸い、症状はほとんど感じられない状況まで緩和できていましたので、
見守れる心のゆとりがあれば
大丈夫な状況でもありました。
確かに、
四環系抗うつ薬のこの薬剤は、
よく効いていましたし、副作用もでていませんでした。
「よく食べられるようなったおかげでしょうね。
多分、私、ちょっと皺が少なくなったように思うのですけれど
眠っていた主人が目を覚ました時、
“最近、きれいになったね”
って言ってくれたんです」
驚きました!
最近、きれいになったね・・・!
80代のご夫婦の会話です!!
何て、素敵なのでしょう。
今まで、感謝の言葉や料理などを褒められる言葉は
沢山耳にしてきました。
80代の男性の方で、
症状こそなくても、衰弱が進み大半を寝ていらっしゃるような体調の方が
ふと目覚めた時に ”きれいになったね”と言われたという話は、
初めてでした。
大半の方なら、せん妄すら起こされる様な状態でした。
髪をバッサリ切っても気がつかない
さらには、妻の顔を認識することも難しい場合もあります。
お顔がふっくらされたというより、
大変表情が明るくなったことを
鋭敏な感性で読み取り
言語化されたのでしょう。
どんなに、奥さまのことを気遣っていらっしゃったか
感じることができました。
そして、そのようなご主人の言葉に
薬剤の効果だけではない
心の健康を取り戻させた力を感じました。
ささやかに寄り添いながら長年過ごされたご夫婦の絆に
感動を覚え、一日幸せな気持ちで過ごさせて頂きました。
何故か、その後のクリニックでの外来の患者さん・・
皆さん、がんをお持ちなのですが、
私、幸せ!とか、
病気忘れちゃいそうとか、
それは、それは、
疲れも吹っ飛ぶ嬉しい言葉が続いたのでした。
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ご夫妻の強い絆を感じました。ご主人からの「最近、きれいになったね」の言葉。奥様の表情からご主人自身も嬉しくなり、発した言葉だったのではと……思いました。
先生が、奥様の心身の状況を受け止め、話を聞き関わり、適切な処方もして下さったからの結果であった事を感じました。介護をしていく上での病状に対する不安、慢性疲労、睡眠不足等々おありになった中で、話を聞いて下さる方がいらっしゃる事で奥様の心は救われたのだと思います。そして薬剤を処方。
毎日の介護の中で奥様の心にゆとりが持てるようになった事が笑顔になられたりしたのではないかと感じました。
″緩和ケア″患者だけでなく、家族も含むケアですね。奥様の心身のケアを行った事でご主人の心にもそのケアが行き渡る事になったのだと思います。
ご夫妻が、先生の訪問診療をお受けになられた事に私自身も嬉しくなりました。
ご夫妻がこの会話で強い絆を確認でき、お二人の今後の時間が違ったものになっていく事と思います。
心身のサポートをしていく緩和ケアの素晴らさを感じます。
読んでいる人も温かな気持ちになり笑顔になるような、そんなご夫妻の素敵な場面をありがとうございました。
(コメントは上記までです。
でも、なかなかご家族の精神的なフォローまで、一緒にしていただける先生は少ないと思います。
この奥さまは、数少ない素敵な先生に診ていただけて、本当に良かったなと思います。
笑顔で、素敵な言葉を聞いた時、支えようとする私たちが支えられるのだと思います。
今週初回訪問した患者さんはまだ若く、最後の化学療法に望みをかけています。
けれど、支えるお母さんがひどい鬱状態となっていて、娘さんに普通に接することができません。普通に接しようとすればするほど、表情は硬くこわばっていくといいます。
そしてそれを、娘さんはとても悲しんでいます。
明日には、在宅の先生が訪問されるので、なんとか心が楽になれることを願っていますが・・・
娘さんが少しでも穏やかに、お母さんとの時間を過ごせるようになるといいのですが。
ステキなご夫婦ですね。
言葉の力は大きい、言霊ですね。
改めて感じました。
その言葉だけで
お2人の様子が目に浮かび心が豊かで穏やかに
なりました。
人生そのものを表してますね。
その患者さん家族の人生に寄り添う先生もステキです♪
ありがとうございました。
今日のブログは、読んでいて涙がでました
こんな宝石のような言葉や場面に出会えると、この仕事に就けたことをとても幸せに感じます。
先生の文章も素敵ですが、コメントされる皆さんの言葉にも同じような優しく温かい風が吹いていて、このblogが大好きです
さらに支えてくださるコメント、ありがとうございます。とても、励まされます。
本当に素敵なご夫妻でしょう!
80年という年月は、益々の成長なのかもしれません。
こぶた部屋の住人さん
頂いたコメントに、他者の痛みに共感できる優しい感性を感じます。そんなこぶた部屋の住人さんに、数少ない素敵な先生とお書き頂き、照れてしまいます。ありがとうございました。
うえちゃんさん
素敵なご夫婦でしょう?
80年の絆の前では、まだまだ到達できそうにありません。でも、ステキと言って頂き、また、張りきれそうです。
junさん
一つ一つの記事の心をキャッチしてくださり、ありがとうございます。まさに、我が意を得たりです。
のこさん
そうなんです!
ここにお立ち寄りくださり、コメントを残して下さる方々の素敵なこと・・ 本当に、誇りです。
そして、何重にも幸福感が増すのです。
おはようございます。
お久し振りですね。
まだ生きています。それも元気で社会生活を営んでいます。
仕事や私生活が忙しくてブログを見る暇がありませんでした。
緩和ケア外来がある病院へ移ったので最初にがん宣告を受けた先生とはながらく会っていなかったのですが、母が散歩中に転倒して股関節を複雑骨折したおりその病院に入院しました。
そこで5ヶ月ぶりにお会いしたのですが、あまりにも私が元気でぴんぴんしているので驚いていました。
確かに癌だと診断された時は、肌のつやもなくシワもおおく髪も薄くなっていたのですが、
今はその正反対になり若々しくなったと自他共にに認めています。
今は、寝たきりになった母を介護しながら仕事や遊びを楽しんでいます。
他人は78歳の母の介護が大変でしょうと言いますが、私は逆に楽しんでいるくらいです。
生きているうちに親孝行ができることにも感謝しています。
癌になって人に優しくなれたし、生きることの楽しさや素晴らしさがさらに実感できるようになりました。
50歳まで生きてきた私ですが、今まで常に成長しようと努力してきました。
それが、癌になってさらに加速されたように思います。
癌は確かに私の中で成長しています。
私も癌と共に成長を続けていくつもりです。
安心してください。後数ヶ月は生きられそうです。
素敵な時間を刻んでいらっしゃることに、安堵を力を頂きました。