緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

中学生君(2)

2008年06月03日 | つれづれ

そして、Sさんは、6月まで鼻から管を入れながらも、生き抜いてくれました。

今、ほとんど衰弱して眠っているSさん。


その傍らで、中学生君、その従兄弟さんと夫が
まるで今までリビングでSさんを囲んで
こんな風だったんだろうなあ
というような自然な
会話をしています。

意識の無いSさんを死にいく人としてではなく
家族として囲む・・・

それまで頻脈だったのに
こうやって病室に ご家族が居てくれた時間は
心拍数は正常にもどっていたと
看護師から報告を貰いました。

中学生君は
従兄弟さんとじゃんけんをしていたらしい。
それにあわせて、眠っているSさんが
「じゃんけん・・」って言ってくれたとも聞きました。

意識がないように見えたSさん。
ちゃんと耳も、意識も働いているSさん。

中学生君に言いました。



これから、人生いろんなことがあると思う。
辛いとき、思い出してほしい。
お母さんは、死にたいほど辛かったけれど
生き抜いてくれたことを。

君の、ちょっとでもいいから生きていて・・
という言葉に後押しされて生きてくれたことも。

お母さんはいつまでも君を応援してくれるよ。




中学生君は、何度も何度も頷きながら
お母さんが死んでいくという現実を
私ともキャッチボールしてくれました。

本当にありがとう。
お母さんが君を思っているところまでは
とても届かないけれど
私も君をいっぱい応援しているよ。

(ここまでが、2年前の記事に校正したものです)






そして・・

2年経ったね。
中学生君がこのブログに立ち寄ってくれることは
多分ないかな・・
伝えていなかったものね。

あの頃、お母さんにご了解を頂いて
こうして書いています。
中学生君。
元気にしていますか?
こうして、ブログを書いていると
2年前の今頃のことを思い出します。

従兄弟のお兄ちゃんが
難しい状況を通訳してくれましたね。

お父さんも、支えてくれていたお兄ちゃんをみて
皆、きっと大丈夫だって
病棟の看護師さん達と話し合ってきました。

きっと大丈夫・・

今も、心の中で応援しています。


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして。 (こたろう)
2007-05-25 23:10:09
医師になって8年目、消化器内科出身で
3人の娘を持つ30代医師です。

総合病院での2年間の研修を終えて、5月から
ほぼ専任としてホスピスに戻ってきました。
ガバペンで検索して、偶然ここを見付けましたが、
緩和医療に携わる先生と情報交換出来ればと思い
早速コメントさせて頂きました。
子育てもきっちりされているなんてすごい!
私の娘はまだ5歳、3歳、8ヶ月です。なるべく育児
に参加していますが家内には苦労かけてるなぁ、
と思います。
返信する
きっと (hikari)
2007-05-25 23:14:26
今頃中学生の彼は元気にお母さんの分まで頑張って生きているんでしょうね。
私はまだ母が亡くなった現実を受け入れられずに、心療内科に通院しています。
母が入院している病院では患者自身である母と先生の会話のみで、身内である娘の私にはほとんど説明がなかったのが残念でした。先生のような方がいたらと今更思います。
でも最後まで一生懸命母に接してくださった先生への感謝の気持ちは変わりません。
いつか先生のような私も緩和ケア医になりたいなと思います。
返信する
きっと大丈夫。 (ぴょん)
2007-05-26 09:40:12
私が、昨年3月に主人を看取り、病院から、主人の遺体と一緒に病院を出る際、副師長さんが、私にかけて下さった言葉と同じであります。

「ご主人もよく頑張りました。でも、奥さんも凄く頑張りましたね。こんなに大変なことができたのだから、ぴょんさん、あなたもきっと大丈夫。しっかり生きてくれますね。」と声をかけて下さいました。

私にとっても、あれから1年が過ぎました。
私自身も、主人が入院していた病院へ、カウンセリングと精神科へ受診しながらも、何とか生きてこられました。

月日は、流れています。
私には、また、朝日が昇ってくる明日が来る幸せを噛みしめながら・・・。
返信する
コメントありがとうございました (aruga)
2007-05-27 00:21:43
こたろう先生
お立ち寄りくださりありがとうございます。先生のブログのSSRIが黄疸の痒みへの効果に再現性があったというのは興味深い記事でした。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。

hikariさん
20代の娘さんお一人をお持ちの患者さんのケアにあたらせていただいたことが何人かあります。母と娘の結びつきの強さは他のご家族とのつながりと異なった強さを感じます。いろいろなことがよい方向に進みますように

ぴょんさん
明日が来ることが幸せだと感じられる・・そう書かれていることにとても安堵を覚えました。きっと大丈夫・・から、もっと進んだ大丈夫感(?)なのではって思ったのですが・・いかがでしょうか。
返信する
そうであったら・・・。 (ぴょん)
2007-05-27 13:36:30
きっと大丈夫から、もっと進んだ大丈夫になっていれば、良いと思うのですが・・・。
3歩進んで、2歩下がっています。
返信する
息子の場合・・・ (ふじこ)
2007-05-29 00:35:38
夫ががんで亡くなって、もうすぐ5年になります。
息子は、中学1年生でした。

夫の詳しい病状は、子供にあまり話しておらず、
夫は、子供の前ではカッコいい父でいたかったので、
弱っている姿をあまり見られたくなく、息子が部活に熱中して、病院へあまり顔を見せなくても、楽しい学校生活を送っているのがいいと言っていました。

夫の容態が急変した時も、息子は試合中で、すぐ病院へ来るように連絡したものの、間に合いませんでした。
息子は、ワンワン泣きました。
こんなに早く死んでしまうなら、ちゃんと言ってほしかった、と言われました。
子供にどう話せばよかったのだろう、もっと家族で過ごす時間を作ればよかった、と私はずっと後悔していました。

夫の死後、いつまでもめそめそしていた私は、息子に
いつまで泣いているんだよ!お父さんが心配するだろう!と怒られました。

いま、高校3年になり、色々と反抗・反発されながらも、根っこの部分では、私をいたわってくれる気持ちを持っているのを感じます。

子供は、たくましいです。
きっとその中学生君も、立派に成長していくでしょう。
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Unknown (Hana)
2007-05-29 22:46:58
いつまでも心に残る患者さん、家族っていますよね。中学生君、お母さんの最後にしっかり関わった事が、これからの人生で必ず大きな力になることを信じています。
返信する
コメントありがとうございます。 (aruga)
2007-05-29 23:14:38
ぴょんさん
3歩進んで2歩下がる・・寄せたり返したりの波のようで、一歩一歩ゆっくり動いているのですね。

ふじこさん
5年間の旅路を分かち合ってくださり、本当にありがとうございます。私は最初のコミュニケーショントレーニングを“死別体験の子供たちを支援する場”で受けました。子供たちは、早く忘れるわけでもなく、また、大人よりあっけらかんとしているわけでもなく、本当に大きな大きな葛藤を何とか乗り越えながら成長することを知りました。息子さんにとって、とても悲しいことだったでしょうが、お父様やふじこさんのことを誰よりもよくみていらしたのでしょうね。ふじこさんあっての今の息子さんのような印象を受けました。中学生君もいただいたコメントを読むと嬉しいだろうなあと思います。

Hanaさん
ありがとうございます。本当にそう思います。きっと力に変えてくれると思っています。
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Unknown (えみり)
2008-06-04 13:03:00
数々の患者さんを看取る中
何人かの患者さんが意識がないと思っている状態で
なぜか一緒に会話をしているような心境になることがあります。
たいてい、その患者さんの一番近しい人と
その患者さんについてベッドサイドで話している時なんですが。
不思議な感覚を覚えたことがよくあり
コメントしてしまいました。

中学生君が、今も頑張っているように私も応援したいと思います。
返信する
えみりさん (aruga)
2008-06-04 21:15:20
同じような経験をお持ちなのですね。
人は最期まで支えあっていて、繋がっているのだなあと思います。
中学生君への応援、ありがとう。
このブログに、学校の先生や学生さんが時々立ち寄ってくれます。そうした方々を通して、お母さんやお父さんを亡くした多くの子供達にエールが届くといいなあと思っています。
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