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緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

緩和ケア病棟に期待されることはそれぞれの立場では少しづつ異なるようです

2021年09月26日 | 医療
がん患者さんなどの緩和ケアを専門的、集中的に受けるための病棟を緩和ケア病棟と言います。患者さん一人あたりの病床面積や病棟面積、家族へ配慮された施設基準などが決められており、スタッフの基準などを満たして許可されたものが緩和ケア病棟として認められています。


大分県 済生会日田病院


神戸市 甲南医療センター


群馬県立がんセンター

この活用にあたり、それぞれの立場で思いがやや異なるようです。




在宅で訪問診療を行っている医師の立場では・・

緩和ケア病棟は
 最期の時を自宅で過ごすことに
 不安や疲弊感がある
 ご家族、ご本人に
 安心した最後の時間を
 過ごしていただけるとありがたい
  とか、
 取り切れない症状を
 集中的な症状緩和で
 短期間でコントロールして
 また在宅に戻ってきてほしい

症状管理が上手な医師ほど前者となることが多いものです。
 前者は看取り時期(End-of lofe)
 後者は症状管理




急性期病院でがん診療にあっている医師の立場では・・

緩和ケア病棟は
 症状管理の専門病棟として
 主治医として関わってほしい

 症状管理と看取り、
 両方へのアプローチ




緩和ケア病棟のスタッフの立場では・・

緩和ケア病棟では
 医療・ケアさらに療養といった
 広い意味で時間を過ごすためにも
 スタッフとの関係性が構築できる
 1か月位は前に紹介を受けたい。

 単なる症状管理だけが
 役務ではないので。

 意識が低下したり
 うつらうつらしている状態で
 入院された時は、
 緩和ケア病棟ならではの
 良い所を感じて頂く時間を
 提供するのが難しくなってしまう。




患者さんの立場では・・

 症状が落ち着いているなら
 できるだけ自宅で過ごしたい。
 家族が負担でない形で過ごしたい。




ご家族の立場では・・

 苦しい思いだけはしてほしくない。
 自分達ではケアしきれないので。
 少しでも楽な時間が過ごせるなら、
 自宅でも緩和ケア病棟でもよい。




色々な期待がそれぞれの立場ではあるものです。

私がかかわっていた緩和ケア病棟は、紹介を受けて外来に予約が入るのが、亡くなる前の1か月前位のことが多く、そこからベッド空き待ちの待機リストに入り、入院できるのが亡くなる前の2週間前位になっていたことが多い傾向にありました。

よく、もう少し前に紹介頂けたら、もっと、何かして差し上げられたのかもしれない・・とスタッフと話をしたことを思い出します。

この1年半。
コロナ禍となって、緩和ケア病棟が閉鎖となり、発熱等の患者さんのコロナ診断を待つ間の待機病棟となったところもあると聞いています。

そのような影響もなく、今まで通りの緩和ケア病棟であっても、緩和ケア病棟の良さである家族キッチンや家族控室があり24時間面会が可能だったのに、コロナ禍により、面会すらできない状況に置かれています。

そうすると、緩和ケア病棟のハード面での良さを体験できない状況となっており、強みは症状管理の専門病棟という点となってきます。
実際に面会ができないなら、できる限り在宅医療で・・という方が増えてきているのも事実です。

今は、急性期病院と週1回の在宅訪問診療の立場の私の目からは、どこまで、緩和ケア病棟での面会禁止を続けるのかなあ・・と見守っているところです。
居心地の良さを追求した病棟も多く、その良さをご家族と共に過ごせないのは、本当にもったいないなあと感じます。
ワクチン接種と陰性証明の抱き合わせのパスポート。
緩和ケア病棟の家族の付き添いなどでも導入を検討すべきなのかもしれません。

(Lori LoによるPixabayからの画像

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (makako12521726)
2021-09-26 19:08:15
先生のブログを読んで、色んなことを勉強させてもらい、考えるきっかけになっています。
上手く言い表せないですが、いつも、読んだあとに感謝の気持ちが湧いてきます。
ありがとうございます。
返信する
Unknown (e3693)
2021-09-26 21:12:16
@makako12521726 makakoさん

考えるきっかけになっているとお書きくださり、本当にありがとうございます。
頂くコメントが書き続ける力になっています。
こちらこそ、感謝で一杯です!

aruga
返信する
Unknown (散歩人)
2021-09-27 06:19:25
初めてコメントさせていただきます。
2年ほど前兄が肺がんで逝去しました。私と兄は10歳差で親に近いような感じでした。義姉から電話がきて、何もわからなくなってからでは遅いから、今話ができるうちに来て欲しいと。
東北の病院に駆けつけて、息子たちと2週間ほど泊まり込んで看取りを続けることが出来ました。そのときの医師は私たちに選択肢を提案してくれて、家族に任せてくれたことに感謝の気持ちで一杯になったのを憶えています。
コロナ禍の前でよかった、私が退職していて良かったと今も話しながら、三回忌の帰省もしにくい地方の事情ではあります。
先生のブログを読んでいて、病院から主治医と一緒に搬送車を見送った日を思い出しています。
返信する
Unknown (e3693)
2021-09-28 08:14:32
散歩人さん

お兄様の最期の思い出を分かち合ってくださり、感謝で一杯です。
とても暖かい気持ちになりました。
今別れの時間を過ごされている方にとっても、励まされている方も少なくないのではないかと思います。

本当に、ありがとうございました。

aruga
返信する

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