緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

医者の奥底(6)私の踏み絵

2018年05月20日 | 医療

「何か問題がありましたか?」
ゆっくりと落ち着いた声で尋ねてくださいました。

「死の時を私達が決めてしまった
 そんな気持ちになったのですね」



これが、私の踏み絵でした。

こんな厳しい現実があるけれど
本当に医師になる心構えがあなたにはあるのか・・

問いかけられていました。

このことが、死の周辺医療に携わろうと考え始めた
きっかけでもありました。






数年前
この時、お世話になった救急部の教授と
ある終末期医療に関する研究班で
ご一緒することがありました。

テーマがさまざまな現場の終末期のあり方でしたから
改めてこの5年生のころのことが思い出されました。

もちろん、教授は、何十年も前の出来事は
記憶には留まっていなかったことでしょう。

先生の教え子ですとだけご挨拶をしました。

ただ
同じ議論のテーブルに着かせていただいたことに
言葉にできない感動が私の中にありました。




******************

母校では、卒業生のオムニバス講義というコース
が組まれています。
TVなどのマスコミ、金融、エンジニア、スポーツ・・
様々な分野で活躍されている方が、
全1年生の希望者に将来のキャリアパスを示すことを
目的に開設されていました。

光栄なことに、医療分野で数年前にお声をかけていただきました。
医学以外の学生さんもいらっしゃることから、
仕事の枠にとどまらず、、広く、生きることに焦点を当てたいと思い、
「今一度、”生きる”を考える」というタイトルで
先月、話をさせていただきました。

この5年生の時の強烈な出来事、
移植外科の患者さん、
育児をしながら悩んだ中の留学、
緩和に方向転換した後の患者さんとの対話、
そして、今。

沢山の事の中、
本当に、医師になる覚悟はあるのか・・と問われたこの出来事を、
差し出された踏絵を乗り越えたころの原点として辿っていました。

コーディネーターの先生のオフィスは、
広大なキャンパスの新しい建物の中にあり
綺麗な夕焼けと池と紅葉が見え、
海外留学生が沢山集っていました。
大学院の講義は、すべて英語と聞き、
感嘆しつつ、さすがわが母校・・と思うあたり、
踏絵を乗り越えたころの学び舎は
やっぱり、心の故郷だと思いました。


2018年今年の夏、日本緩和医療学会で
第6回 医学生・若手医師のための緩和ケア夏季セミナー
が、8月18、19日の1泊2日、淡路島で開催されます。

最初のレクチャーで
「人を大切にした医療に携わることに焦がれて」
というタイトルでお話をさせて頂くことになりました。

医学生、研修医の若手の方が対象です。
ご興味がある方、いらっしゃいましたら、
是非、お目にかかれると嬉しいです。


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2 コメント

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ありがとうございました (まる)
2008-03-17 08:33:07
昨日の大阪会場の700人の薬剤師のうちの一人です。先生のお話をお聞きするのは二回目ですが、いつもわかりやすいな~と思ってます。 できればもう少し小規模で質疑応答の時間もあればもっとよかったのですが…(^-^; (これは厚労省に言うことですね…(笑)
なかなか関西では先生のお話をお聞きする機会はないのですが、いつかお会いできる日を楽しみにしてます(*^^*)
さあ、学んだことを今日から実践!(できればいいなぁという希望もこめて)
返信する
こちらこそ・・ (aruga)
2008-03-17 23:06:41
コメントありがとうございます。

>さあ、学んだことを今日から実践!

嬉しいですね~。行った甲斐があります!!
返信する

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